B国のマクロ経済において、フィリップス曲線 $\pi = \pi^e - 2(u-u^*)$ と損失関数 $l = 8\pi^2 + u$ が与えられています。ここで、$\pi$ はインフレ率、$\pi^e$ は期待インフレ率、$u$ は失業率、$u^*$ は自然失業率、$l$ は中央銀行の損失を表します。以下の4つの問いに答えます。 (1) 中央銀行が損失を最小にするように裁量的な金融政策を行うとき、インフレ率$\pi$ は何%になるか。 (2) (1)のとき、自然失業率 $u^* = 3\%$ のとき、中央銀行の損失 $l$ はいくらになるか。 (3) 中央銀行が2%のインフレターゲット政策を実施しているとき、自然失業率 $u^* = 3\%$ のとき、中央銀行の損失 $l$ はいくらになるか。 (4) (3)のとき、中央銀行が突然金融緩和をしてインフレ率4%を誘導する政策を行ったとき、自然失業率 $u^* = 3\%$ のとき、中央銀行の損失 $l$ はいくらになるか。

応用数学マクロ経済学フィリップス曲線損失関数最適化金融政策
2025/7/16

1. 問題の内容

B国のマクロ経済において、フィリップス曲線 π=πe2(uu)\pi = \pi^e - 2(u-u^*) と損失関数 l=8π2+ul = 8\pi^2 + u が与えられています。ここで、π\pi はインフレ率、πe\pi^e は期待インフレ率、uu は失業率、uu^* は自然失業率、ll は中央銀行の損失を表します。以下の4つの問いに答えます。
(1) 中央銀行が損失を最小にするように裁量的な金融政策を行うとき、インフレ率π\pi は何%になるか。
(2) (1)のとき、自然失業率 u=3%u^* = 3\% のとき、中央銀行の損失 ll はいくらになるか。
(3) 中央銀行が2%のインフレターゲット政策を実施しているとき、自然失業率 u=3%u^* = 3\% のとき、中央銀行の損失 ll はいくらになるか。
(4) (3)のとき、中央銀行が突然金融緩和をしてインフレ率4%を誘導する政策を行ったとき、自然失業率 u=3%u^* = 3\% のとき、中央銀行の損失 ll はいくらになるか。

2. 解き方の手順

(1) 損失を最小にするインフレ率を求める。
- 期待インフレ率が合理的期待で形成されるので、π=πe\pi = \pi^e となる。
- フィリップス曲線は π=π2(uu)\pi = \pi - 2(u - u^*) となり、u=uu = u^* となる。
- 損失関数 l=8π2+ul = 8\pi^2 + u^* を最小化するために、π\pi に関して微分する。
- dldπ=16π=0\frac{dl}{d\pi} = 16\pi = 0 より、π=0\pi = 0 となる。
- したがって、インフレ率は 0% となる。
(2) 自然失業率が3%のときの損失を求める。
- (1)より π=0\pi = 0 であり、u=3%=0.03u^* = 3\% = 0.03 である。
- 損失関数 l=8π2+ul = 8\pi^2 + u^* に代入すると、l=8(0)2+0.03=0.03l = 8(0)^2 + 0.03 = 0.03 となる。
(3) インフレターゲットが2%のときの損失を求める。
- インフレターゲットが2%なので、π=2%=0.02\pi = 2\% = 0.02 となる。
- 自然失業率が3%なので、u=3%=0.03u^* = 3\% = 0.03 となる。
- フィリップス曲線より、0.02=πe2(u0.03)0.02 = \pi^e - 2(u - 0.03) となる。合理的期待形成よりπe=0.02\pi^e = 0.02だから、0.02=0.022(u0.03)0.02 = 0.02 - 2(u - 0.03) となり、u=0.03u = 0.03
- 損失関数 l=8π2+ul = 8\pi^2 + u^* に代入すると、l=8(0.02)2+0.03=8(0.0004)+0.03=0.0032+0.03=0.0332l = 8(0.02)^2 + 0.03 = 8(0.0004) + 0.03 = 0.0032 + 0.03 = 0.0332 となる。
(4) インフレ率4%を誘導したときの損失を求める。
- インフレ率が4%なので、π=4%=0.04\pi = 4\% = 0.04 となる。
- 自然失業率が3%なので、u=3%=0.03u^* = 3\% = 0.03 となる。
- フィリップス曲線より、0.04=πe2(u0.03)0.04 = \pi^e - 2(u - 0.03)。合理的期待形成を仮定すると、πe=0.02\pi^e = 0.02は成立せず、πe\pi^eは不明。しかし、uuを損失関数に代入すれば良いので、直接計算する必要はない。
- 損失関数 l=8π2+ul = 8\pi^2 + u に代入すると、0.04=πe2(u0.03)    2(u0.03)=πe0.04    u=πe0.042+0.030.04 = \pi^e - 2(u - 0.03) \implies 2(u-0.03)=\pi^e-0.04 \implies u = \frac{\pi^e-0.04}{2}+0.03
- 損失関数 l=8(0.04)2+u=8(0.0016)+u=0.0128+u=0.0128+πe0.042+0.03=0.0428+πe0.042l = 8(0.04)^2+u = 8(0.0016)+u=0.0128+u=0.0128+\frac{\pi^e-0.04}{2}+0.03=0.0428+\frac{\pi^e-0.04}{2}.合理的期待が成立しているかどうかの情報がないため、この問題は解けません。ただし、仮にπe=π=0.04\pi^e=\pi=0.04とすれば、u=0.03u=0.03となり、l=8(0.04)2+0.03=8(0.0016)+0.03=0.0128+0.03=0.0428l = 8(0.04)^2 + 0.03 = 8(0.0016) + 0.03 = 0.0128 + 0.03 = 0.0428 となる。
- もし πe=0.02\pi^e=0.02のままなら、u=0.020.042+0.03=0.01+0.03=0.02u = \frac{0.02-0.04}{2} + 0.03 = -0.01+0.03=0.02. l=8π2+u=8(0.04)2+0.02=8(0.0016)+0.02=0.0128+0.02=0.0328l=8\pi^2+u = 8(0.04)^2+0.02=8(0.0016)+0.02=0.0128+0.02=0.0328

3. 最終的な答え

(1) 0.00 %
(2) 0.0300
(3) 0.0332
(4) πe\pi^eの値によって異なる。πe=π=0.04\pi^e=\pi=0.04とすると0.
0
4
2

8. $\pi^e=0.02$のままなら0.0328.合理的期待形成が崩れているため,$\pi^e$の値が与えられない限り唯一の答えを出すことができない。

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