半径 $R$、質量 $M$ の一様な円柱が、粗い水平な床を速度 $v$ で転がっている。高さ $h$ の段差がある場合、円柱が段差を上りきるために必要な $v$ を求める。ただし、円柱と段差の角 (点 C) との衝突は完全に非弾性的であり、上りきるまで円柱は C から離れないものとする。

応用数学力学運動量保存エネルギー保存剛体円柱
2025/7/17
## 解答

1. 問題の内容

半径 RR、質量 MM の一様な円柱が、粗い水平な床を速度 vv で転がっている。高さ hh の段差がある場合、円柱が段差を上りきるために必要な vv を求める。ただし、円柱と段差の角 (点 C) との衝突は完全に非弾性的であり、上りきるまで円柱は C から離れないものとする。

2. 解き方の手順

(1) **衝突直後の角運動量保存**
円柱が段差に衝突する直前と直後で、段差の角 (点 C) まわりの角運動量が保存すると考える。衝突は非弾性的なので、力学的エネルギーは保存されない。衝突直前の角運動量 L1L_1 は、
L1=Iω+MvRL_1 = I \omega + M v R
ここで、II は円柱の慣性モーメントで I=12MR2I = \frac{1}{2}MR^2ω\omega は角速度で ω=v/R\omega = v/R である。したがって、
L1=12MR2vR+MvR=32MvRL_1 = \frac{1}{2}MR^2 \frac{v}{R} + MvR = \frac{3}{2}MvR
衝突直後の角速度を ω\omega' とすると、衝突直後の角運動量 L2L_2 は、
L2=IωR=12MR2ω+MωR2=32MR2ωL_2 = I \omega' R= \frac{1}{2}MR^2 \omega' + M \omega' R^2 = \frac{3}{2} M R^2 \omega'
重心の速度は v=ωRv'=\omega' R となるので
L2=32MvRL_2 = \frac{3}{2} M v'R.
したがって、角運動量保存則より、
32MvR=32MvR\frac{3}{2}Mv'R = \frac{3}{2}MvR
しかし、今回は衝突が非弾性的であるから、vvv' \neq v となる。重心の速さ vv' に関しては、重心が点Cの周りを回転するように運動すると考えれば、L1=L2L_1=L_2より、
32MR2ω=Mv0R\frac{3}{2} M R^2 \omega' = M v_0 R
よって、ω=v0R\omega' = \frac{v_0}{R}
(2) **力学的エネルギー保存**
円柱が段差を上りきるためには、衝突直後の運動エネルギーが、位置エネルギーの増加分以上である必要がある。円柱の重心が C の周りを回転し、重心が最も高い位置に来たとき、回転が止まると考える。
衝突直後の運動エネルギー K2K_2 は、
K2=12Iω2=12(32MR2)ω2K_2 = \frac{1}{2} I \omega'^2 = \frac{1}{2} \left(\frac{3}{2}MR^2 \right) \omega'^2
段差を上りきるために必要な位置エネルギーの増加 ΔU\Delta U は、
ΔU=Mg(Rh)\Delta U = Mg(R-h)
エネルギー保存則より、K2ΔUK_2 \ge \Delta U である必要がある。
12(32MR2)ω2Mg(Rh)\frac{1}{2} \left(\frac{3}{2}MR^2 \right) \omega'^2 \ge Mg(R-h)
34MR2(vR)2Mg(Rh)\frac{3}{4}MR^2 \left(\frac{v'}{R}\right)^2 \geq Mg(R-h)
34Mv2Mg(Rh)\frac{3}{4} M v'^2 \geq M g (R-h)
v243g(Rh)v'^2 \geq \frac{4}{3} g(R-h)
(3) **衝突前後の関係**
円柱とCとの衝突前後での力積を考える。衝突時、Cの周りに回転するようになるため、C周りの角運動量を考えると、衝突直前では重心は速度vvで運動しており、衝突直後ではC周りをvv'で回転している。
この時、角運動量保存則より、
MvR=32MR2ωMvR = \frac{3}{2}MR^2 \omega'
ω=2v3R\omega' = \frac{2v}{3R}
v=Rω=23vv' = R\omega' = \frac{2}{3}v
(4) **必要条件の導出**
v243g(Rh)v'^2 \ge \frac{4}{3}g(R-h)
(23v)243g(Rh)\left(\frac{2}{3}v\right)^2 \ge \frac{4}{3}g(R-h)
49v243g(Rh)\frac{4}{9}v^2 \ge \frac{4}{3}g(R-h)
v23g(Rh)v^2 \ge 3g(R-h)
v3g(Rh)v \ge \sqrt{3g(R-h)}

3. 最終的な答え

v3g(Rh)v \ge \sqrt{3g(R-h)}

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