以下の3つの主張について、正しければ証明を与え、正しくなければ反例を挙げます。 (1) $m \geq n$ とし、$A$ を $m \times n$ 行列とする。$A$ の階数が $n$ に等しいならば、1次方程式系 $Ax=0$ は自明な解のみを持つ。 (2) $x, y \in \mathbb{C}^n$ に対して $||x+y||^2 = ||x||^2 + ||y||^2$ が成り立つならば、$\langle x, y \rangle = 0$ である。 (3) $n$ 次正方行列 $P$ がエルミート行列ならば、任意の $x \in \mathbb{C}^n$ に対して $\langle x, Px \rangle$ は実数である。
2025/7/20
1. 問題の内容
以下の3つの主張について、正しければ証明を与え、正しくなければ反例を挙げます。
(1) とし、 を 行列とする。 の階数が に等しいならば、1次方程式系 は自明な解のみを持つ。
(2) に対して が成り立つならば、 である。
(3) 次正方行列 がエルミート行列ならば、任意の に対して は実数である。
2. 解き方の手順
(1) 主張は正しいです。
証明: の階数が であるということは、 の列ベクトルが線形独立であることを意味します。したがって、 を満たす は、 の各成分がすべて である場合に限られます。つまり、 (自明な解) のみです。
(2) 主張は正しいです。
証明: 内積を で定義します。ただし、 は の共役転置です。このとき、 です。
であるから、。
であるから、。
つまり、。したがって、。
ここで、 を に置き換えると、 であるから、同じ議論により 。
であるから、。
であるから、。
かつ であるから、。
(3) 主張は正しいです。
証明: がエルミート行列であるとは、 を満たすことです。
(スカラーに対する転置)
であるから、。
であるから、 は実数です。
3. 最終的な答え
(1) 正しい。 の階数が に等しいならば、1次方程式系 は自明な解のみを持つ。
(2) 正しい。 に対して が成り立つならば、 である。
(3) 正しい。 次正方行列 がエルミート行列ならば、任意の に対して は実数である。