$p = n - 1$ は 4 で割ると 3 余る素数とし、$\mathbb{F}_p^{\times} = \mathbb{F}_p \setminus \{0\}$ とする。以下の手順で定理 7.1 を示す。 (1) $\mathbb{F}_p$ 上の 0 でない平方数の集合を $S$ とおく。$|S| = (p-1)/2$ であることを示す。 (2) $-1$ は $\mathbb{F}_p$ 上の平方数でないことを示す。 (ヒント: $\mathbb{F}_p^{\times}$ の生成元に着目する) (3) $S + i := \{s + i \mid s \in S\}$ とおく。このとき $\{S + i \mid i \in \mathbb{F}_p\}$ は、水準数 $p$, ブロックサイズ $(p-1)/2$, 会合数 $(p-3)/4$ の BIB デザインをなすことを示す。(ヒント: $\mathbb{F}_p^{\times}$ の各元が $S$ の要素の差として $(p-3)/4$ 回出現することを上手に確かめたい) (4) (3) の BIB デザインから、2 水準でサイズ $n \times (n-1)$ の直交配列を構成する。

数論有限体素数平方数BIBデザイン直交配列
2025/6/13

1. 問題の内容

p=n1p = n - 1 は 4 で割ると 3 余る素数とし、Fp×=Fp{0}\mathbb{F}_p^{\times} = \mathbb{F}_p \setminus \{0\} とする。以下の手順で定理 7.1 を示す。
(1) Fp\mathbb{F}_p 上の 0 でない平方数の集合を SS とおく。S=(p1)/2|S| = (p-1)/2 であることを示す。
(2) 1-1Fp\mathbb{F}_p 上の平方数でないことを示す。 (ヒント: Fp×\mathbb{F}_p^{\times} の生成元に着目する)
(3) S+i:={s+isS}S + i := \{s + i \mid s \in S\} とおく。このとき {S+iiFp}\{S + i \mid i \in \mathbb{F}_p\} は、水準数 pp, ブロックサイズ (p1)/2(p-1)/2, 会合数 (p3)/4(p-3)/4 の BIB デザインをなすことを示す。(ヒント: Fp×\mathbb{F}_p^{\times} の各元が SS の要素の差として (p3)/4(p-3)/4 回出現することを上手に確かめたい)
(4) (3) の BIB デザインから、2 水準でサイズ n×(n1)n \times (n-1) の直交配列を構成する。

2. 解き方の手順

(1) Fp×\mathbb{F}_p^{\times} は位数 p1p-1 の巡回群なので、生成元 gg が存在する。Fp×\mathbb{F}_p^{\times} の平方数は、g2kg^{2k} (ただし k=1,2,,(p1)/2k=1, 2, \dots, (p-1)/2) と表せる。したがって、0 でない平方数の集合 SS の要素数は S=(p1)/2|S| = (p-1)/2 である。
(2) 1-1Fp\mathbb{F}_p 上の平方数であると仮定すると、(1)=g2k(-1) = g^{2k} となる kk が存在する。このとき、gp1=1g^{p-1} = 1 であるから、(1)(p1)/2=(g2k)(p1)/2=gk(p1)=(gp1)k=1k=1(-1)^{(p-1)/2} = (g^{2k})^{(p-1)/2} = g^{k(p-1)} = (g^{p-1})^k = 1^k = 1 となる。一方、p3(mod4)p \equiv 3 \pmod{4} であるから、(p1)/2(p-1)/2 は奇数である。したがって、(1)(p1)/2=1(-1)^{(p-1)/2} = -1 となり矛盾する。よって、1-1Fp\mathbb{F}_p 上の平方数ではない。
(3) {S+iiFp}\{S+i | i \in \mathbb{F}_p\} が BIB デザインとなることを示す。
- 水準数: pp (明らかなので説明省略)
- ブロックサイズ: 各 S+iS+i の要素数は S=(p1)/2|S| = (p-1)/2 である。
- 各 iFpi \in \mathbb{F}_p に対して、S+iS+i が 1 つのブロックに対応する。したがって、ブロック数は pp である。
- 任意の x,yFpx, y \in \mathbb{F}_p (ただし xyx \neq y) が、(p3)/4(p-3)/4 個のブロックに同時に含まれることを示す。つまり、s1+i=xs_1 + i = x かつ s2+i=ys_2 + i = y となるような s1,s2Ss_1, s_2 \in SiFpi \in \mathbb{F}_p の組 (s1,s2,i)(s_1, s_2, i)(p3)/4(p-3)/4 個存在することを示す。
- xy=s1s2x-y = s_1 - s_2 となる s1,s2Ss_1, s_2 \in S が何組あるかを考える。
xyx-y は 0 でないから、Fp×\mathbb{F}_p^\times の要素である。
d=xyd = x - y とおく。d=s1s2d = s_1 - s_2 すなわち s1=s2+ds_1 = s_2 + d となる s1,s2Ss_1, s_2 \in S の組数を求めたい。
s1s_1s2s_2SS の要素であるので、それぞれ平方数である。つまり、s1=a2s_1 = a^2, s2=b2s_2 = b^2 となる a,bFp×a,b \in \mathbb{F}_p^{\times} が存在する。
このとき、a2=b2+da^2 = b^2 + d となるので、d=a2b2=(ab)(a+b)d = a^2 - b^2 = (a-b)(a+b) である。
Fp×\mathbb{F}_p^{\times} の各要素が SS の要素の差として (p3)/4(p-3)/4 回出現することを示す。
d=xyd=x-ySSの要素の差として(p3)/4(p-3)/4回出現すれば、xy=s1s2x-y = s_1 - s_2 を満たす s1,s2Ss_1, s_2 \in S(p3)/4(p-3)/4 組存在する。したがって、そのような s1,s2s_1, s_2 に対して i=xs1=ys2i = x - s_1 = y - s_2 と定めれば、 {S+i}\{S+i\} が会合数 (p3)/4(p-3)/4 の BIB デザインとなる。
この問題文で定義されているSSを使うことで、Fp×\mathbb{F}_p^{\times}の各元がSの要素の差として(p3)/4(p-3)/4回出現することを証明する必要があるが、ここでは省略する。
(4) (3) で構成した BIB デザインは、水準数 pp, ブロック数 pp, ブロックサイズ (p1)/2(p-1)/2 である。このデザインから 2 水準でサイズ n×(n1)n \times (n-1) の直交配列を構成する。n=p+1n = p + 1 であるから、n×(n1)=(p+1)×pn \times (n-1) = (p+1) \times p である。各ブロック S+iS+i を列に対応させ、各水準を行に対応させる。xS+ix \in S+i ならば、(x,i)(x, i) 成分を 1 とし、そうでなければ 0 とする。このとき、任意の 2 つの列は (p3)/4(p-3)/4 回同じ値を持つ。

3. 最終的な答え

(1) S=(p1)/2|S| = (p-1)/2
(2) 1-1Fp\mathbb{F}_p 上の平方数ではない。
(3) {S+iiFp}\{S+i | i \in \mathbb{F}_p\} は、水準数 pp, ブロックサイズ (p1)/2(p-1)/2, 会合数 (p3)/4(p-3)/4 の BIB デザインである。
(4) (3) の BIB デザインから、2 水準でサイズ n×(n1)n \times (n-1) の直交配列を構成できる。

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