AとBが共にべき零行列であり、かつ可換であるとき、積ABもべき零行列であることを証明せよ。

代数学線形代数行列べき零行列可換証明
2025/5/28

1. 問題の内容

AとBが共にべき零行列であり、かつ可換であるとき、積ABもべき零行列であることを証明せよ。

2. 解き方の手順

べき零行列の定義から、ある正の整数 mmnn が存在し、
Am=0A^m = 0
Bn=0B^n = 0
が成り立つ。ここで、AABB は可換なので、AB=BAAB = BA が成り立つ。
ABAB がべき零行列であることを示すには、ある正の整数 kk が存在し、
(AB)k=0(AB)^k = 0
となることを示せば良い。
k=m+nk = m + n とすると、
(AB)m+n=(AB)m(AB)n=AmBmAnBn(AB)^{m+n} = (AB)^m (AB)^n = A^m B^m A^n B^n
可換性より、AABBの順番は自由に入れ替えられるので、
(AB)m+n=Am+nBm+n(AB)^{m+n} = A^{m+n} B^{m+n}
より一般的な
(AB)k=AkBk(AB)^k = A^k B^k
は成り立たないことに注意が必要である。
AABBが可換であることと二項定理を用いる。
(A+B)k=i=0kkCiAiBki(A+B)^k = \sum_{i=0}^{k} {}_k C_i A^i B^{k-i}
ここで、AABBの順番は重要ではない。
k=m+nk=m+nとおくと、
(AB)m+n=(AB)(AB)(AB)(AB)^{m+n} = (AB)(AB) \dots (AB) (m+nm+n個)
=A(BA)(BA)(BA)B= A(BA)(BA)\dots (BA)B (m+n2m+n-2個)
=A2(BA)(BA)(BA)B2= A^2(BA)(BA)\dots (BA)B^2 (m+n4m+n-4個)
=Am+nBm+n= A^{m+n} B^{m+n}
この変形は一般には成り立たない。
しかし、可換性により、(AB)k=(AB)(AB)(AB)(AB)^k = (AB)(AB)\dots(AB) から、AAを全て左に集めて、BBを全て右に集めることができる。
AB=BAAB = BAが成り立つので、(AB)n=AnBn (AB)^n = A^n B^n となる。
ここで、(AB)mn=AmnBmn=(Am)n(Bn)m=0n0m=00=0 (AB)^{mn} = A^{mn} B^{mn} = (A^{m})^n (B^{n})^m = 0^n 0^m = 0 \cdot 0 = 0
したがって、ABAB もべき零行列である。

3. 最終的な答え

ABもべき零行列である。