正則行列 $A$ の列ベクトルにゼロベクトルが存在しないことを証明し、行ベクトルについても同様かどうかを考察します。

代数学線形代数行列正則行列列ベクトル行ベクトル線形独立
2025/6/5

1. 問題の内容

正則行列 AA の列ベクトルにゼロベクトルが存在しないことを証明し、行ベクトルについても同様かどうかを考察します。

2. 解き方の手順

(1) 列ベクトルについて
AAn×nn \times n の正則行列とします。もし AA の列ベクトルの中にゼロベクトルが存在すると仮定すると、AA の列ベクトルは線形独立ではなくなります。なぜなら、ゼロベクトルは任意のベクトルの線形結合で表現できるからです。
例えば、A=[a1,a2,...,ai,...,an]A = [\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2, ..., \mathbf{a}_i, ..., \mathbf{a}_n] と表し、ii 番目の列ベクトル ai\mathbf{a}_i がゼロベクトル、つまり ai=0\mathbf{a}_i = \mathbf{0} であるとします。
このとき、AA の列ベクトル a1,a2,...,an\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2, ..., \mathbf{a}_n に対して、
c1a1+c2a2+...+ciai+...+cnan=0c_1\mathbf{a}_1 + c_2\mathbf{a}_2 + ... + c_i\mathbf{a}_i + ... + c_n\mathbf{a}_n = \mathbf{0}
という線形結合を考えます。ここで、cic_i は任意の定数とします。
ai=0\mathbf{a}_i = \mathbf{0} であるから、
c1a1+c2a2+...+ci0+...+cnan=0c_1\mathbf{a}_1 + c_2\mathbf{a}_2 + ... + c_i \mathbf{0} + ... + c_n\mathbf{a}_n = \mathbf{0}
c1a1+c2a2+...+0+...+cnan=0c_1\mathbf{a}_1 + c_2\mathbf{a}_2 + ... + \mathbf{0} + ... + c_n\mathbf{a}_n = \mathbf{0}
c1=c2=...=ci1=ci+1=...=cn=0c_1 = c_2 = ... = c_{i-1} = c_{i+1} = ... = c_n = 0 であっても、cic_i が 0 でない値、例えば ci=1c_i = 1 であっても、線形結合の結果はゼロベクトルになります。
これは、列ベクトル a1,a2,...,an\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2, ..., \mathbf{a}_n が線形独立でないことを意味します。
行列 AA が正則であるということは、AA の列ベクトルが線形独立であることと同値です。したがって、AA の列ベクトルにゼロベクトルが存在するという仮定は、 AA が正則であるという条件に矛盾します。
よって、AA の列ベクトルにゼロベクトルは存在しません。
(2) 行ベクトルについて
AA が正則行列であるとき、その転置行列 ATA^T も正則行列です。ATA^T の列ベクトルは、AA の行ベクトルに対応します。上記と同様の議論を ATA^T に適用することで、ATA^T の列ベクトル(つまり、AA の行ベクトル)にゼロベクトルは存在しないことがわかります。

3. 最終的な答え

正則行列 AA の列ベクトルおよび行ベクトルにゼロベクトルは存在しません。

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