1. 問題の内容
正則行列 の列ベクトルにゼロベクトルが存在しないことを証明し、行ベクトルについても同様かどうかを考察します。
2. 解き方の手順
(1) 列ベクトルについて
を の正則行列とします。もし の列ベクトルの中にゼロベクトルが存在すると仮定すると、 の列ベクトルは線形独立ではなくなります。なぜなら、ゼロベクトルは任意のベクトルの線形結合で表現できるからです。
例えば、 と表し、 番目の列ベクトル がゼロベクトル、つまり であるとします。
このとき、 の列ベクトル に対して、
という線形結合を考えます。ここで、 は任意の定数とします。
であるから、
であっても、 が 0 でない値、例えば であっても、線形結合の結果はゼロベクトルになります。
これは、列ベクトル が線形独立でないことを意味します。
行列 が正則であるということは、 の列ベクトルが線形独立であることと同値です。したがって、 の列ベクトルにゼロベクトルが存在するという仮定は、 が正則であるという条件に矛盾します。
よって、 の列ベクトルにゼロベクトルは存在しません。
(2) 行ベクトルについて
が正則行列であるとき、その転置行列 も正則行列です。 の列ベクトルは、 の行ベクトルに対応します。上記と同様の議論を に適用することで、 の列ベクトル(つまり、 の行ベクトル)にゼロベクトルは存在しないことがわかります。
3. 最終的な答え
正則行列 の列ベクトルおよび行ベクトルにゼロベクトルは存在しません。