(1) 正の実数 $a$ と自然数 $m$ に対し、不等式 $\frac{[ma]}{a} \leq m < \frac{[ma]+1}{a}$ を示す。 (2) 正の実数 $a$ と $b$ が $\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = 1$ を満たし、さらにある自然数 $m$ と $n$ に対し $[ma] = [nb]$ が成り立つならば、$a$ と $b$ はともに有理数であることを証明する。

1. 問題の内容

(1) 正の実数 $a$ と自然数 $m$ に対し、不等式 $\frac{[ma]}{a} \leq m < \frac{[ma]+1}{a}$ を示す。

(2) 正の実数 $a$ と $b$ が $\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = 1$ を満たし、さらにある自然数 $m$ と $n$ に対し $[ma] = [nb]$ が成り立つならば、$a$ と $b$ はともに有理数であることを証明する。

2. 解き方の手順

(1) $x$ を超えない最大の整数を $[x]$ で表すとき、定義より

$[ma] \leq ma < [ma] + 1$

が成り立つ。

この不等式を $a > 0$ で割ると、

$\frac{[ma]}{a} \leq m < \frac{[ma]+1}{a}$

が得られる。

(2) $\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = 1$ より、$b = \frac{a}{a-1}$ である。

$[ma] = [nb]$ が成り立つとき、これを $k$ とおく。$k$ は整数である。

$[ma] = k$ より、$k \leq ma < k+1$

$[nb] = k$ より、$k \leq nb < k+1$

$k \leq ma < k+1$ より、$\frac{k}{m} \leq a < \frac{k+1}{m}$

$k \leq nb < k+1$ より、$\frac{k}{n} \leq b < \frac{k+1}{n}$

$b = \frac{a}{a-1}$ を代入して、

$\frac{k}{n} \leq \frac{a}{a-1} < \frac{k+1}{n}$

$\frac{k}{n} \leq \frac{a}{a-1}$ より、$ka - k \leq na$ よって、 $a(n-k) \geq -k$

$\frac{a}{a-1} < \frac{k+1}{n}$ より、$na < (k+1)a - (k+1)$ よって、$a(k+1-n) > k+1$

$a \geq \frac{k}{m}$ と $a > \frac{k+1}{k+1-n}$ より、$a > \max \left(\frac{k}{m}, \frac{k+1}{k+1-n} \right)$

$a < \frac{k+1}{m}$ と $a \leq \frac{-k}{n-k}$ より、$a < \min \left(\frac{k+1}{m}, \frac{-k}{n-k} \right)$

$\frac{1}{a}+\frac{1}{b} = 1$ より $\frac{1}{a} + \frac{a-1}{a} = 1$.

$\frac{a}{a-1}$ を $a$ で微分すると、$\frac{(a-1)-a}{(a-1)^2} = -\frac{1}{(a-1)^2}$

$k \leq ma < k+1$, $k \leq nb < k+1$ なので

$ma = k+\alpha$, $nb = k+\beta$ ($0 \leq \alpha, \beta < 1$) とおく。

$\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = 1$ より、$na + mb = mab$.

$na + mb = n(\frac{k+\alpha}{m}) + m(\frac{k+\beta}{n}) = \frac{nk}{m} + \frac{n\alpha}{m} + \frac{mk}{n} + \frac{m\beta}{n} = mab = (\frac{k+\alpha}{m})(\frac{k+\beta}{n})mn = k^2 + k\beta + k\alpha + \alpha\beta$.

$nk^2 + n\alpha k + mk^2 + m\beta k = mk^2 + k\beta m + nk^2 + k\alpha n + m\alpha\beta n$

$(n+m)k + n\alpha/m+m\beta/n = (k + \alpha)(k+\beta)$

よって、$m, n, k$が整数だから、$\alpha = 0, \beta = 0$のときのみこの式は成立する。つまり、$ma = k$と$nb = k$

$a = k/m$, $b = k/n$ ゆえに、$a, b$は有理数である。

3. 最終的な答え

(1) $\frac{[ma]}{a} \leq m < \frac{[ma]+1}{a}$

(2) $a$ と $b$ はともに有理数である。