複数の線形代数の問題が出題されています。 * **問題1:** 3次正方行列 $A$ が任意の3次正方行列 $X$ に対して $AX = XA$ を満たすとき、$A = \alpha I$ ($\alpha$ はスカラー) であることを示せ。 * **問題2:** $m \times n$ 行列 $A$ が任意の $n$ 次元列ベクトル $x$ に対して $Ax = 0$ を満たすための必要十分条件は $A = 0$ であることを示せ。 * **問題3:** $A = [a_{ij}]$ は $m \times n$ 行列で、各成分 $a_{ij}$ は実数であるとする。このとき、$A^T A$ の対角成分がすべて0ならば $A = 0$ であることを示せ (やり方: $A^T A$ の $(i, i)$ 成分を $a_{ij}$ で表す)。 * **問題4:** * (1) $A = \begin{bmatrix} a_{11} & a_{12} \\ 0 & a_{22} \end{bmatrix}$ が正則行列であるための必要十分条件は $a_{11} a_{22} \neq 0$ であることを示せ。 * (2) $B = \begin{bmatrix} b_{11} & 0 & b_{13} \\ 0 & b_{22} & 0 \\ 0 & 0 & b_{33} \end{bmatrix}$ が正則行列であるための必要十分条件は $b_{11} b_{22} b_{33} \neq 0$ であることを示せ。 (やり方: $A, B$ に対して、正則行列の定義にある $X$ に相当する行列を試行錯誤で見つける。) * **問題5:** べき零行列 $A$ は正則ではないことを示せ。また、任意の実数 $c$ に対して $I + cA$ は正則であることを示せ。 * **問題6:** 正方行列 $A$ は単位行列 $I$ ではないべき等行列である ($A^2 = A$ を満たす) とする。このとき、$A$ は正則ではないことを示せ。 * **問題7:** * (1) $1 - ab \neq 0$ ならば2次正方行列 $\begin{bmatrix} 1 & a \\ b & 1 \end{bmatrix}$ は正則であることを示せ。 * (2) $n$ 次正方行列 $A, B$ に対して $I - AB$ が正則行列であるならば、2$n$ 次正方行列 $\begin{bmatrix} I & A \\ B & I \end{bmatrix}$ は正則であることを示せ。 * **問題8:** $A$ を $n$ 次正方行列とする。$P^{-1}AP = I + A$ となるような $n$ 次正則行列 $P$ は存在しないことを示せ (ヒント: 標準問題1.16 にあるトレースを用いる)。
2025/4/27
## 解答
1. 問題の内容
複数の線形代数の問題が出題されています。
* **問題1:** 3次正方行列 が任意の3次正方行列 に対して を満たすとき、 ( はスカラー) であることを示せ。
* **問題2:** 行列 が任意の 次元列ベクトル に対して を満たすための必要十分条件は であることを示せ。
* **問題3:** は 行列で、各成分 は実数であるとする。このとき、 の対角成分がすべて0ならば であることを示せ (やり方: の 成分を で表す)。
* **問題4:**
* (1) が正則行列であるための必要十分条件は であることを示せ。
* (2) が正則行列であるための必要十分条件は であることを示せ。
(やり方: に対して、正則行列の定義にある に相当する行列を試行錯誤で見つける。)
* **問題5:** べき零行列 は正則ではないことを示せ。また、任意の実数 に対して は正則であることを示せ。
* **問題6:** 正方行列 は単位行列 ではないべき等行列である ( を満たす) とする。このとき、 は正則ではないことを示せ。
* **問題7:**
* (1) ならば2次正方行列 は正則であることを示せ。
* (2) 次正方行列 に対して が正則行列であるならば、2 次正方行列 は正則であることを示せ。
* **問題8:** を 次正方行列とする。 となるような 次正則行列 は存在しないことを示せ (ヒント: 標準問題1.16 にあるトレースを用いる)。
2. 解き方の手順
* **問題1:**
スカラー倍の行列であることを示す問題です。
任意の行列との交換可能性から導きます。
特に、単位行列 を用いると計算しやすいです。
とおきます。 を満たすので、特に を 成分が1でその他が0の行列 とすれば、
となります。この式の 成分を考えると、 であれば であり、 であれば となります。したがって、 は対角行列である必要があります。さらに、 とすれば、 である必要があるため、対角成分は全て等しく、 であることがわかります。
* **問題2:**
とおきます。 ( は第 成分が1でその他が0のベクトル) とすると、 は の第 列がゼロベクトルであることを意味します。これがすべての について成り立つので、 です。
* **問題3:**
とおくと、 の 成分は で与えられます。これが0であるという条件は、すべての に対して であることを意味します。これがすべての について成り立つので、 です。
* **問題4:**
(1)
が正則であることと が同値であることを利用します。
なので、 が必要十分条件です。
(2)
同様に、 が正則であることと が同値であることを利用します。
なので、 が必要十分条件です。
* **問題5:**
がべき零行列であるとは、 となる正の整数 が存在することです。もし が正則であると仮定すると、 が存在し、 の両辺に をかけると、 となり矛盾します。したがって、 は正則ではありません。
次に、 が正則であることを示します。 となる最小の に対して、 とおくと、
となるので、 となり、 は正則です。
* **問題6:**
はべき等行列なので、 を満たします。もし が正則であると仮定すると、 が存在し、 の両辺に をかけると、 となり、 が単位行列ではないという仮定に反します。したがって、 は正則ではありません。
* **問題7:**
(1)
行列 の行列式は なので、 ならばこの行列は正則です。
(2)
問題文が不完全ですが、 が正則なら が正則であることを示します。
は正則なので、 が正則であることと、が正則であることは同値。の行列式は なので、が正則であれば良い。が正則であることと、が正則であることは同値なので、が正則であれば、は正則。
* **問題8:**
の両辺のトレースを取ると、
これは矛盾なので、 は存在しません。
3. 最終的な答え
各問題の答えは以下の通りです。
* **問題1:**
* **問題2:**
* **問題3:**
* **問題4:** (1) (2)
* **問題5:** べき零行列は正則ではない。任意の実数 に対して は正則。
* **問題6:** は正則ではない。
* **問題7:** (1) 正則である (2) 正則である
* **問題8:** は存在しない。