与えられた線形代数の問題は全部で8つあります。それぞれの問題の内容は以下の通りです。 1. 3次正方行列 $A$ がすべての3次正方行列 $X$ に対して $AX=XA$ を満たすとき、$A = \alpha I$ (ここで $\alpha$ はスカラー、$I$ は単位行列) であることを示せ。
2025/5/2
1. 問題の内容
与えられた線形代数の問題は全部で8つあります。それぞれの問題の内容は以下の通りです。
1. 3次正方行列 $A$ がすべての3次正方行列 $X$ に対して $AX=XA$ を満たすとき、$A = \alpha I$ (ここで $\alpha$ はスカラー、$I$ は単位行列) であることを示せ。
2. $m \times n$ 行列 $A$ が任意の $n$ 次ベクトル $x$ に対して $Ax = 0$ を満たすための必要十分条件は $A = O$ (零行列) であることを示せ。
3. $A = [a_{ij}]$ は $m \times n$ 行列で、各成分 $a_{ij}$ は実数であるとする。このとき、$A^tA$ の対角成分がすべて 0 ならば $A = O$ であることを示せ。
4. (1) $A = \begin{bmatrix} a_{11} & a_{12} \\ 0 & a_{22} \end{bmatrix}$ が正則行列であるための必要十分条件は $a_{11} a_{22} \neq 0$ であることを示せ。
(2) が正則行列であるための必要十分条件は であることを示せ。
5. べき零行列 $A$ は正則ではないことを示せ。また、任意の実数 $c$ に対して $I + cA$ は正則であることを示せ。
6. 正方行列 $A$ は単位行列 $I$ ではないべき等行列 (つまり $A^2 = A$ を満たす) とする。このとき、$A$ は正則ではないことを示せ。
7. (1) $1 - ab \neq 0$ ならば2次正方行列 $\begin{bmatrix} 1 & a \\ b & 1 \end{bmatrix}$ は正則であることを示せ。
(2) 次正方行列 に対して が正則行列であるならば、2 次正方行列 は正則であることを示せ。
8. $A$ を $n$ 次正方行列とする。$P^{-1}AP = I + A$ となるような $n$ 次正則行列 $P$ は存在しないことを示せ。
2. 解き方の手順
各問題に対する解き方の方針を説明します。
1. **問題1:** $AX=XA$ が任意の $X$ で成り立つ場合、特に $X$ を単位行列 $I$ としたときに $AI = IA$ となり、これは常に成り立ちます。問題は、$A$ がスカラー倍の単位行列であることを示す必要があります。$X$ として適当な行列を選び、$A$ の成分に関する条件を導き出すことで、$A$ が $aI$ の形になることを示します。例えば、$X$ を $(i, j)$ 成分だけが 1 で他は 0 の行列とすると、$A$ の非対角成分が 0 であること、対角成分がすべて等しいことが示せます。
2. **問題2:** 必要性: $A = O$ ならば、$Ax = 0$ は任意の $x$ に対して成立します。十分性: 任意の $x$ に対して $Ax=0$ が成り立つとき、$x$ として標準基底ベクトル $e_i$ (第 $i$ 成分が1でそれ以外が0のベクトル) を選ぶと、$Ae_i$ は $A$ の第 $i$ 列に等しくなります。$Ae_i = 0$ がすべての $i$ に対して成り立つので、$A$ のすべての列が 0 ベクトルとなり、$A = O$ です。
3. **問題3:** $A^tA$ の $(i, i)$ 成分は $\sum_{k=1}^m (a_{ki})^2$ で表されます。$A^tA$ の対角成分がすべて0ということは、すべての $i$ に対して $\sum_{k=1}^m (a_{ki})^2 = 0$ が成り立つことを意味します。各 $a_{ki}$ は実数なので、それぞれの二乗が 0 であるということは、$a_{ki} = 0$ を意味します。したがって、すべての $i, k$ に対して $a_{ki} = 0$ なので、$A = O$ です。
4. **問題4:** (1) $A$ が正則であるとは、$A$ の逆行列が存在することです。$A = \begin{bmatrix} a_{11} & a_{12} \\ 0 & a_{22} \end{bmatrix}$ の逆行列を $\begin{bmatrix} x & y \\ z & w \end{bmatrix}$ とすると、$A \begin{bmatrix} x & y \\ z & w \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix}$ となる必要があります。これから、$x, y, z, w$ を $a_{11}, a_{12}, a_{22}$ で表すことができ、$A$ が正則であるためには、$a_{11} a_{22} \neq 0$ であることが必要十分条件となります。(2) $B$ が正則であるための必要十分条件も同様に、$B$ の行列式が 0 でないことから示されます。
5. **問題5:** べき零行列 $A$ とは、$A^k = O$ となる正の整数 $k$ が存在する行列です。もし $A$ が正則だと仮定すると、$A^{-1}$ が存在します。$A^k = O$ の両辺に $A^{-1}$ を $k$ 回かけると、$I = O$ となり矛盾が生じます。したがって、$A$ は正則ではありません。次に、$I + cA$ が正則であることを示します。$(I + cA)$ の逆行列を $I + c_1 A + ... + c_{k-1} A^{k-1}$ の形と仮定して、$(I + cA)(I + c_1 A + ... + c_{k-1} A^{k-1}) = I$ となるように $c_1, ..., c_{k-1}$ を求めます。
6. **問題6:** $A^2 = A$ を満たす行列をべき等行列といいます。$A$ が正則だと仮定すると、$A^{-1}$ が存在します。$A^2 = A$ の両辺に $A^{-1}$ をかけると、$A = I$ となり、問題の仮定に矛盾します。したがって、$A$ は正則ではありません。
7. **問題7:** (1) $\begin{bmatrix} 1 & a \\ b & 1 \end{bmatrix}$ の行列式は $1 - ab$ です。$1 - ab \neq 0$ ならば行列式は 0 でないので、この行列は正則です。(2) 問題文に誤りがある可能性があります。$\begin{bmatrix} I & A \\ B & I \end{bmatrix}$ の行列式を計算し、$I-AB$ が正則であればこの行列も正則になることを示す方針が考えられます。
8. **問題8:** $P^{-1}AP = I + A$ の両辺のトレースを計算すると、Tr($P^{-1}AP$) = Tr($I + A$) となります。トレースの性質 Tr($XY$) = Tr($YX$) を用いると、Tr($P^{-1}AP$) = Tr($A P P^{-1}$) = Tr($A$) となります。したがって、Tr($A$) = Tr($I + A$) = Tr($I$) + Tr($A$) となります。これから、Tr($I$) = 0 となりますが、これは矛盾です。なぜなら、$n$ 次単位行列のトレースは $n$ だからです。したがって、$P^{-1}AP = I + A$ となるような正則行列 $P$ は存在しません。
3. 最終的な答え
上記に、各問題の解き方の手順の方針を示しました。それぞれの問題に対し、上記の「解き方の手順」に従い、厳密な証明を行う必要があります。最終的な答えは、それぞれの問題に対する証明が完了したときに得られます。