母数 $\theta$ の任意の不偏推定量の分散 $V(\hat{\theta})$ は、クラメール・ラオの不等式を満たす。$\theta$を母平均$\mu$とし、$f_{\mu}(x) = \frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma^2}}e^{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}}$ とするとき、$\hat{\mu} = \bar{X}$ は $\mu$ の不偏最小分散推定量であることを以下の手順で証明する。 (1) $\log f_{\mu}(x)$ と $\frac{\partial \log f_{\mu}(x)}{\partial \mu}$ を求める。 (2) $E\left[\left(\frac{\partial \log f_{\mu}(X)}{\partial \mu}\right)^2\right]$ を求める。 (3) 不等式の右辺が $\bar{X}$ の分散 $\frac{\sigma^2}{n}$ に等しくなることを示す。

確率論・統計学統計的推定不偏推定量分散クラメール・ラオの不等式
2025/5/13
はい、承知いたしました。問題を解いていきます。

1. 問題の内容

母数 θ\theta の任意の不偏推定量の分散 V(θ^)V(\hat{\theta}) は、クラメール・ラオの不等式を満たす。θ\thetaを母平均μ\muとし、fμ(x)=12πσ2e(xμ)22σ2f_{\mu}(x) = \frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma^2}}e^{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}} とするとき、μ^=Xˉ\hat{\mu} = \bar{X}μ\mu の不偏最小分散推定量であることを以下の手順で証明する。
(1) logfμ(x)\log f_{\mu}(x)logfμ(x)μ\frac{\partial \log f_{\mu}(x)}{\partial \mu} を求める。
(2) E[(logfμ(X)μ)2]E\left[\left(\frac{\partial \log f_{\mu}(X)}{\partial \mu}\right)^2\right] を求める。
(3) 不等式の右辺が Xˉ\bar{X} の分散 σ2n\frac{\sigma^2}{n} に等しくなることを示す。

2. 解き方の手順

(1) logfμ(x)\log f_{\mu}(x) を求める。
\log f_{\mu}(x) = \log\left(\frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma^2}}e^{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}}\right) = -\frac{1}{2}\log(2\pi\sigma^2) - \frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}
次に、logfμ(x)μ\frac{\partial \log f_{\mu}(x)}{\partial \mu} を求める。
\frac{\partial \log f_{\mu}(x)}{\partial \mu} = \frac{\partial}{\partial \mu}\left(-\frac{1}{2}\log(2\pi\sigma^2) - \frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}\right) = -\frac{1}{2\sigma^2} \cdot 2(x-\mu)(-1) = \frac{x-\mu}{\sigma^2}
(2) E[(logfμ(X)μ)2]E\left[\left(\frac{\partial \log f_{\mu}(X)}{\partial \mu}\right)^2\right] を求める。
E\left[\left(\frac{\partial \log f_{\mu}(X)}{\partial \mu}\right)^2\right] = E\left[\left(\frac{X-\mu}{\sigma^2}\right)^2\right] = E\left[\frac{(X-\mu)^2}{\sigma^4}\right] = \frac{1}{\sigma^4}E\left[(X-\mu)^2\right]
ここで、E[(Xμ)2]=σ2E\left[(X-\mu)^2\right] = \sigma^2 であるから、
E\left[\left(\frac{\partial \log f_{\mu}(X)}{\partial \mu}\right)^2\right] = \frac{1}{\sigma^4}\sigma^2 = \frac{1}{\sigma^2}
(3) 不等式の右辺が Xˉ\bar{X} の分散 σ2n\frac{\sigma^2}{n} に等しくなることを示す。
クラメール・ラオの不等式の右辺は、
\frac{1}{nE\left[\left(\frac{\partial \log f_{\mu}(X)}{\partial \mu}\right)^2\right]} = \frac{1}{n\cdot \frac{1}{\sigma^2}} = \frac{\sigma^2}{n}
Xˉ\bar{X} の分散は σ2n\frac{\sigma^2}{n} であるから、クラメール・ラオの不等式の右辺と一致する。Xˉ\bar{X}μ\muの不偏推定量であることを示す必要も、不偏推定量の分散がクラメール・ラオの下限を達成していることを示す必要があります。不偏性は、E[Xˉ\bar{X}]=E[1ni=1nXi\frac{1}{n} \sum_{i=1}^n X_i] = 1ni=1nE[Xi]\frac{1}{n} \sum_{i=1}^n E[X_i] = 1nnμ\frac{1}{n} * n\mu = μ\muからわかります。

3. 最終的な答え

(1) logfμ(x)=12log(2πσ2)(xμ)22σ2\log f_{\mu}(x) = -\frac{1}{2}\log(2\pi\sigma^2) - \frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}, logfμ(x)μ=xμσ2\frac{\partial \log f_{\mu}(x)}{\partial \mu} = \frac{x-\mu}{\sigma^2}
(2) E[(logfμ(X)μ)2]=1σ2E\left[\left(\frac{\partial \log f_{\mu}(X)}{\partial \mu}\right)^2\right] = \frac{1}{\sigma^2}
(3) クラメール・ラオの不等式の右辺は σ2n\frac{\sigma^2}{n} であり、これは Xˉ\bar{X} の分散に等しい。したがって、μ^=Xˉ\hat{\mu} = \bar{X}μ\mu の不偏最小分散推定量である。

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