正規母集団 $N(\mu, \sigma^2)$ からの大きさ $n$ の標本 $X_1, X_2, ..., X_n$ に基づく標本分散を $V$ とする。$U = \frac{(n-1)V}{\sigma^2}$ は自由度 $n-1$ のカイ二乗分布に従うことが知られている。 (1) $\sqrt{V}$ の期待値 $E[\sqrt{V}] = \int_0^\infty \sqrt{v} \frac{1}{2^{\frac{n-1}{2}} \Gamma(\frac{n-1}{2})} v^{\frac{n-1}{2} - 1} e^{-\frac{v}{2}} dv = \frac{\sqrt{2} \Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{n-1}{2})}$ を示す。 ただし、$\Gamma(s) = \int_0^\infty x^{s-1} e^{-x} dx$ とする。 (ヒント: $u/2 = x$ とおく) (2) (1) の結果を用いて、$\sqrt{V}$ は $\sigma$ の不偏推定量ではないことを示し、$\sigma$ の不偏推定量を作る。

確率論・統計学統計的推測不偏推定量標本分散カイ二乗分布ガンマ関数
2025/5/13

1. 問題の内容

正規母集団 N(μ,σ2)N(\mu, \sigma^2) からの大きさ nn の標本 X1,X2,...,XnX_1, X_2, ..., X_n に基づく標本分散を VV とする。U=(n1)Vσ2U = \frac{(n-1)V}{\sigma^2} は自由度 n1n-1 のカイ二乗分布に従うことが知られている。
(1) V\sqrt{V} の期待値 E[V]=0v12n12Γ(n12)vn121ev2dv=2Γ(n2)Γ(n12)E[\sqrt{V}] = \int_0^\infty \sqrt{v} \frac{1}{2^{\frac{n-1}{2}} \Gamma(\frac{n-1}{2})} v^{\frac{n-1}{2} - 1} e^{-\frac{v}{2}} dv = \frac{\sqrt{2} \Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{n-1}{2})} を示す。 ただし、Γ(s)=0xs1exdx\Gamma(s) = \int_0^\infty x^{s-1} e^{-x} dx とする。 (ヒント: u/2=xu/2 = x とおく)
(2) (1) の結果を用いて、V\sqrt{V}σ\sigma の不偏推定量ではないことを示し、σ\sigma の不偏推定量を作る。

2. 解き方の手順

(1) E[V]E[\sqrt{V}] の積分を計算する。
与えられた積分式:
E[V]=0v12n12Γ(n12)vn121ev2dvE[\sqrt{V}] = \int_0^\infty \sqrt{v} \frac{1}{2^{\frac{n-1}{2}} \Gamma(\frac{n-1}{2})} v^{\frac{n-1}{2} - 1} e^{-\frac{v}{2}} dv
E[V]=12n12Γ(n12)0vn21ev2dvE[\sqrt{V}] = \frac{1}{2^{\frac{n-1}{2}} \Gamma(\frac{n-1}{2})} \int_0^\infty v^{\frac{n}{2} - 1} e^{-\frac{v}{2}} dv
ここで、x=v2x = \frac{v}{2} とおく。v=2xv = 2x であり、dv=2dxdv = 2dx となる。
E[V]=12n12Γ(n12)0(2x)n21ex2dxE[\sqrt{V}] = \frac{1}{2^{\frac{n-1}{2}} \Gamma(\frac{n-1}{2})} \int_0^\infty (2x)^{\frac{n}{2} - 1} e^{-x} 2dx
E[V]=2n2122n12Γ(n12)0xn21exdxE[\sqrt{V}] = \frac{2^{\frac{n}{2} - 1} \cdot 2}{2^{\frac{n-1}{2}} \Gamma(\frac{n-1}{2})} \int_0^\infty x^{\frac{n}{2} - 1} e^{-x} dx
E[V]=2n22n12Γ(n12)Γ(n2)E[\sqrt{V}] = \frac{2^{\frac{n}{2}}}{2^{\frac{n-1}{2}} \Gamma(\frac{n-1}{2})} \Gamma(\frac{n}{2})
E[V]=2n2n12Γ(n2)Γ(n12)E[\sqrt{V}] = \frac{2^{\frac{n}{2} - \frac{n-1}{2}} \Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{n-1}{2})}
E[V]=2Γ(n2)Γ(n12)E[\sqrt{V}] = \frac{\sqrt{2} \Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{n-1}{2})}
(2) V\sqrt{V}σ\sigma の不偏推定量ではないことを示す。V=Uσ2n1V = \frac{U\sigma^2}{n-1}よりV=Uσn1\sqrt{V} = \frac{\sqrt{U}\sigma}{\sqrt{n-1}}. ここで、E[U]=n1E[U] = n-1E[V]=E[Uσ2n1]=σn1E[U]E[\sqrt{V}] = E[\sqrt{\frac{U\sigma^2}{n-1}}] = \frac{\sigma}{\sqrt{n-1}} E[\sqrt{U}]. UUは自由度n1n-1のカイ二乗分布に従うので、E[U]=2Γ(n2)Γ(n12)E[\sqrt{U}] = \frac{\sqrt{2} \Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{n-1}{2})}となる。
したがって、E[V]=σn12Γ(n2)Γ(n12)=σ2n1Γ(n2)Γ(n12)E[\sqrt{V}] = \frac{\sigma}{\sqrt{n-1}} \frac{\sqrt{2} \Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{n-1}{2})} = \sigma \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{n-1}} \frac{\Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{n-1}{2})}.
E[V]σE[\sqrt{V}] \neq \sigma なので、V\sqrt{V}σ\sigma の不偏推定量ではない。
c=2n1Γ(n2)Γ(n12)c = \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{n-1}} \frac{\Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{n-1}{2})} とおくと、E[V]=cσE[\sqrt{V}] = c \sigma. よって、σ\sigmaの不偏推定量は Vc=n1Γ(n12)2Γ(n2)V\frac{\sqrt{V}}{c} = \frac{\sqrt{n-1} \Gamma(\frac{n-1}{2})}{\sqrt{2} \Gamma(\frac{n}{2})} \sqrt{V} となる。

3. 最終的な答え

(1) E[V]=2Γ(n2)Γ(n12)E[\sqrt{V}] = \frac{\sqrt{2} \Gamma(\frac{n}{2})}{\Gamma(\frac{n-1}{2})}
(2) V\sqrt{V}σ\sigma の不偏推定量ではない。σ\sigma の不偏推定量は n1Γ(n12)2Γ(n2)V\frac{\sqrt{n-1} \Gamma(\frac{n-1}{2})}{\sqrt{2} \Gamma(\frac{n}{2})} \sqrt{V}.

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