実数 $\theta$ が $0 < \theta < \frac{\pi}{2}$ を満たすとする。写像 $f: \mathbb{R}^2 \to \mathbb{R}^2$ を $xy$ 平面上の点を直線 $l: y = (\tan \theta) x$ に下ろした垂線の足に移す一次変換（直線 $l$ への正射影）とし、行列 $A$ を $f = f_A$ を満たす2次正方行列とする。ただし $f_A$ は行列 $A$ による一次変換である。以下の問いに答えよ。 (1) $xy$ 平面上の2点 $B(1,0)$, $C(0,1)$ を写像 $f$ で移した点をそれぞれ $B'$, $C'$ とする。このとき、点 $B'$, $C'$ の座標をそれぞれ求めよ。 (2) 行列 $A$ を求めよ。 (3) 行列 $A$ の固有値を求めよ。また、各固有値に属する固有ベクトルを1つ求めよ。 (4) 写像 $f$ は単射でないことを示せ。

1. 問題の内容

実数 $\theta$ が $0 < \theta < \frac{\pi}{2}$ を満たすとする。写像 $f: \mathbb{R}^2 \to \mathbb{R}^2$ を $xy$ 平面上の点を直線 $l: y = (\tan \theta) x$ に下ろした垂線の足に移す一次変換（直線 $l$ への正射影）とし、行列 $A$ を $f = f_A$ を満たす2次正方行列とする。ただし $f_A$ は行列 $A$ による一次変換である。以下の問いに答えよ。

(1) $xy$ 平面上の2点 $B(1,0)$, $C(0,1)$ を写像 $f$ で移した点をそれぞれ $B'$, $C'$ とする。このとき、点 $B'$, $C'$ の座標をそれぞれ求めよ。

(2) 行列 $A$ を求めよ。

(3) 行列 $A$ の固有値を求めよ。また、各固有値に属する固有ベクトルを1つ求めよ。

(4) 写像 $f$ は単射でないことを示せ。

2. 解き方の手順

(1) 点 $B(1,0)$ の直線 $y = (\tan \theta) x$ への正射影を $B'(x,y)$ とする。$B'$は直線 $y = (\tan \theta) x$ 上にあるので、

$y = (\tan \theta) x$

また、直線 $BB'$ は直線 $y = (\tan \theta) x$ と垂直なので、傾きの積は $-1$。よって、

$\frac{y-0}{x-1} = -\frac{1}{\tan \theta}$

$y = -\frac{1}{\tan \theta}(x-1)$

この2式から $x,y$ を求める。

$(\tan \theta) x = -\frac{1}{\tan \theta}(x-1)$

$(\tan^2 \theta) x = -x+1$

$(\tan^2 \theta + 1) x = 1$

$\frac{1}{\cos^2 \theta} x = 1$

$x = \cos^2 \theta$

$y = \tan \theta \cos^2 \theta = \sin \theta \cos \theta$

よって、$B'(\cos^2 \theta, \sin \theta \cos \theta)$

点 $C(0,1)$ の直線 $y = (\tan \theta) x$ への正射影を $C'(x,y)$ とする。$C'$ は直線 $y = (\tan \theta) x$ 上にあるので、

$y = (\tan \theta) x$

また、直線 $CC'$ は直線 $y = (\tan \theta) x$ と垂直なので、傾きの積は $-1$。よって、

$\frac{y-1}{x-0} = -\frac{1}{\tan \theta}$

$y-1 = -\frac{1}{\tan \theta}x$

$y = -\frac{1}{\tan \theta}x+1$

この2式から $x,y$ を求める。

$(\tan \theta) x = -\frac{1}{\tan \theta}x+1$

$(\tan^2 \theta) x = -x + \tan \theta$

$(\tan^2 \theta + 1) x = \tan \theta$

$\frac{1}{\cos^2 \theta} x = \tan \theta$

$x = \sin \theta \cos \theta$

$y = \tan \theta \sin \theta \cos \theta = \tan \theta \sin \theta \cos \theta = \frac{\sin^2 \theta}{\cos \theta}\cos \theta = \sin^2 \theta$

よって、$C'(\sin \theta \cos \theta, \sin^2 \theta)$

(2) 行列 $A$ は $B(1,0)$ を $B'(\cos^2 \theta, \sin \theta \cos \theta)$ に、 $C(0,1)$ を $C'(\sin \theta \cos \theta, \sin^2 \theta)$ に移すので、

$A = \begin{pmatrix} \cos^2 \theta & \sin \theta \cos \theta \\ \sin \theta \cos \theta & \sin^2 \theta \end{pmatrix}$

(3) 行列 $A$ の固有値を $\lambda$ とすると、固有方程式は

$\det(A - \lambda I) = 0$

$\begin{vmatrix} \cos^2 \theta - \lambda & \sin \theta \cos \theta \\ \sin \theta \cos \theta & \sin^2 \theta - \lambda \end{vmatrix} = 0$

$(\cos^2 \theta - \lambda)(\sin^2 \theta - \lambda) - (\sin \theta \cos \theta)^2 = 0$

$\cos^2 \theta \sin^2 \theta - \lambda (\cos^2 \theta + \sin^2 \theta) + \lambda^2 - \sin^2 \theta \cos^2 \theta = 0$

$\lambda^2 - \lambda = 0$

$\lambda (\lambda - 1) = 0$

よって、固有値は $\lambda = 0, 1$

$\lambda = 0$ のとき、$(A - 0I)v = 0$

$\begin{pmatrix} \cos^2 \theta & \sin \theta \cos \theta \\ \sin \theta \cos \theta & \sin^2 \theta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix}$

$\cos^2 \theta x + \sin \theta \cos \theta y = 0$

$\cos \theta (\cos \theta x + \sin \theta y) = 0$

$\cos \theta x + \sin \theta y = 0$

$x = -\frac{\sin \theta}{\cos \theta} y = -(\tan \theta) y$

$y = 1$ とすると、$x = -\tan \theta$

固有ベクトルは $\begin{pmatrix} -\tan \theta \\ 1 \end{pmatrix}$

$\lambda = 1$ のとき、$(A - 1I)v = 0$

$\begin{pmatrix} \cos^2 \theta - 1 & \sin \theta \cos \theta \\ \sin \theta \cos \theta & \sin^2 \theta - 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix}$

$\begin{pmatrix} -\sin^2 \theta & \sin \theta \cos \theta \\ \sin \theta \cos \theta & -\cos^2 \theta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix}$

$-\sin^2 \theta x + \sin \theta \cos \theta y = 0$

$\sin \theta (-\sin \theta x + \cos \theta y) = 0$

$-\sin \theta x + \cos \theta y = 0$

$\sin \theta x = \cos \theta y$

$x = \frac{\cos \theta}{\sin \theta} y = \frac{1}{\tan \theta} y$

$y = 1$ とすると、$x = \frac{1}{\tan \theta}$

固有ベクトルは $\begin{pmatrix} \frac{1}{\tan \theta} \\ 1 \end{pmatrix}$

あるいは $x=1$, $y=\tan \theta$ なので、$\begin{pmatrix} 1 \\ \tan \theta \end{pmatrix}$も固有ベクトル。

(4) 写像 $f$ が単射でないことを示す。写像 $f$ の像は直線 $l: y = (\tan \theta) x$ 上にあるので、$\mathbb{R}^2$ 全体ではない。例えば $(1,0)$ は $f$ による像ではないので、単射ではない。また、固有値に0があるので写像 $f$ は単射でない。

3. 最終的な答え

(1) $B'(\cos^2 \theta, \sin \theta \cos \theta)$, $C'(\sin \theta \cos \theta, \sin^2 \theta)$

(2) $A = \begin{pmatrix} \cos^2 \theta & \sin \theta \cos \theta \\ \sin \theta \cos \theta & \sin^2 \theta \end{pmatrix}$

(3) 固有値: $\lambda = 0, 1$

$\lambda = 0$ のとき、固有ベクトル: $\begin{pmatrix} -\tan \theta \\ 1 \end{pmatrix}$

$\lambda = 1$ のとき、固有ベクトル: $\begin{pmatrix} 1 \\ \tan \theta \end{pmatrix}$

(4) 写像 $f$ は単射でない。