内積は、幾何学的には2つのベクトルのなす角とベクトルの大きさの関係を表すものです。内積の定義式から、なぜ成分ごとの積の和で計算できるのかを説明します。
2つのベクトルを a と b とし、それぞれの成分を a=(a1,a2,...,an)、b=(b1,b2,...,bn) とします。また、2つのベクトルのなす角を θ とし、それぞれのベクトルの大きさを ∣a∣、∣b∣ とします。 内積の定義は、以下の通りです。
a⋅b=∣a∣∣b∣cosθ 一方、余弦定理を考えると、ベクトル a、b が作る三角形において、a−b の大きさは、 ∣a−b∣2=∣a∣2+∣b∣2−2∣a∣∣b∣cosθ と表せます。ここで、内積の定義式を代入すると、
∣a−b∣2=∣a∣2+∣b∣2−2a⋅b となります。これを変形すると、
a⋅b=21(∣a∣2+∣b∣2−∣a−b∣2) となります。
ここで、ベクトルの大きさの2乗は、各成分の2乗の和で表せることを利用します。
∣a∣2=a12+a22+...+an2 ∣b∣2=b12+b22+...+bn2 ∣a−b∣2=(a1−b1)2+(a2−b2)2+...+(an−bn)2 =a12−2a1b1+b12+a22−2a2b2+b22+...+an2−2anbn+bn2 =(a12+a22+...+an2)+(b12+b22+...+bn2)−2(a1b1+a2b2+...+anbn) これらを内積の式に代入すると、
a⋅b=21[(a12+a22+...+an2)+(b12+b22+...+bn2)−((a12+a22+...+an2)+(b12+b22+...+bn2)−2(a1b1+a2b2+...+anbn))] =21[2(a1b1+a2b2+...+anbn)] =a1b1+a2b2+...+anbn つまり、
a⋅b=a1b1+a2b2+...+anbn となります。
したがって、内積は、各成分の積の和で計算できることが証明されました。
これは、内積の定義と、ベクトルの大きさ、余弦定理を用いることで導き出されます。