2つのベクトルの内積が、それぞれの成分を掛け合わせたものの和で計算されるのはなぜかという質問です。

幾何学ベクトル内積幾何学代数線形代数余弦定理成分表示
2025/5/21

1. 問題の内容

2つのベクトルの内積が、それぞれの成分を掛け合わせたものの和で計算されるのはなぜかという質問です。

2. 解き方の手順

ベクトル a\vec{a}b\vec{b} の内積 ab\vec{a} \cdot \vec{b} は、幾何学的には、a\vec{a} の大きさ、b\vec{b} の大きさ、そして a\vec{a}b\vec{b} のなす角 θ\theta のコサインの積で定義されます。
つまり、
ab=abcosθ\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}| |\vec{b}| \cos{\theta}
一方、ベクトルを成分表示すると、例えば2次元の場合、a=(a1,a2)\vec{a} = (a_1, a_2), b=(b1,b2)\vec{b} = (b_1, b_2) となります。このとき、成分ごとの積の和は a1b1+a2b2a_1b_1 + a_2b_2 です。
この2つの定義が一致することを証明します。
ab=a1b1+a2b2\vec{a} \cdot \vec{b} = a_1b_1 + a_2b_2
a\vec{a}b\vec{b} のなす角 θ\theta を用いて、b\vec{b} の成分を a\vec{a} の成分と関係づけることを考えます。
ベクトル ab\vec{a}-\vec{b} の大きさの2乗を2通りの方法で計算します。
まず、ベクトルの大きさの定義から、
ab2=(ab)(ab)=aa2ab+bb=a2+b22ab|\vec{a}-\vec{b}|^2 = (\vec{a}-\vec{b}) \cdot (\vec{a}-\vec{b}) = \vec{a} \cdot \vec{a} - 2 \vec{a} \cdot \vec{b} + \vec{b} \cdot \vec{b} = |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 - 2 \vec{a} \cdot \vec{b}
次に、余弦定理を用いると、
ab2=a2+b22abcosθ|\vec{a}-\vec{b}|^2 = |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 - 2 |\vec{a}| |\vec{b}| \cos{\theta}
これら2つの式から、
a2+b22ab=a2+b22abcosθ|\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 - 2 \vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 - 2 |\vec{a}| |\vec{b}| \cos{\theta}
したがって、
ab=abcosθ\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}| |\vec{b}| \cos{\theta}
これは幾何学的な定義と同じです。
次に、成分表示の場合を考えます。a=(a1,a2)\vec{a} = (a_1, a_2), b=(b1,b2)\vec{b} = (b_1, b_2) なので、ab=(a1b1,a2b2)\vec{a} - \vec{b} = (a_1-b_1, a_2-b_2) となります。したがって、
ab2=(a1b1)2+(a2b2)2=a122a1b1+b12+a222a2b2+b22|\vec{a} - \vec{b}|^2 = (a_1 - b_1)^2 + (a_2 - b_2)^2 = a_1^2 - 2 a_1 b_1 + b_1^2 + a_2^2 - 2 a_2 b_2 + b_2^2
=(a12+a22)+(b12+b22)2(a1b1+a2b2)= (a_1^2 + a_2^2) + (b_1^2 + b_2^2) - 2 (a_1 b_1 + a_2 b_2)
=a2+b22(a1b1+a2b2)= |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 - 2 (a_1 b_1 + a_2 b_2)
余弦定理を用いると、
ab2=a2+b22abcosθ|\vec{a} - \vec{b}|^2 = |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 - 2 |\vec{a}| |\vec{b}| \cos{\theta}
これら2つの式から、
a2+b22(a1b1+a2b2)=a2+b22abcosθ|\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 - 2 (a_1 b_1 + a_2 b_2) = |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 - 2 |\vec{a}| |\vec{b}| \cos{\theta}
したがって、
a1b1+a2b2=abcosθ=aba_1 b_1 + a_2 b_2 = |\vec{a}| |\vec{b}| \cos{\theta} = \vec{a} \cdot \vec{b}
つまり、成分ごとの積の和は内積の幾何学的な定義と一致します。
一般のn次元空間でも同様に証明できます。内積は、ベクトル間の角度や長さを計算するための便利な道具であり、成分表示を用いることで、計算が容易になります。

3. 最終的な答え

2つのベクトルの内積は、幾何学的な定義(abcosθ|\vec{a}| |\vec{b}| \cos{\theta})と代数的な定義(成分ごとの積の和)が一致するように定義されているため、それぞれの成分を掛け合わせたものの和で計算されます。これは、ベクトル間の角度や長さを計算するための便利な道具であり、成分表示を用いることで、計算が容易になるためです。

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