ベクトル a と b の内積 a⋅b は、幾何学的には、a の大きさ、b の大きさ、そして a と b のなす角 θ のコサインの積で定義されます。 つまり、
a⋅b=∣a∣∣b∣cosθ 一方、ベクトルを成分表示すると、例えば2次元の場合、a=(a1,a2), b=(b1,b2) となります。このとき、成分ごとの積の和は a1b1+a2b2 です。 この2つの定義が一致することを証明します。
a⋅b=a1b1+a2b2 a と b のなす角 θ を用いて、b の成分を a の成分と関係づけることを考えます。 ベクトル a−b の大きさの2乗を2通りの方法で計算します。 まず、ベクトルの大きさの定義から、
∣a−b∣2=(a−b)⋅(a−b)=a⋅a−2a⋅b+b⋅b=∣a∣2+∣b∣2−2a⋅b 次に、余弦定理を用いると、
∣a−b∣2=∣a∣2+∣b∣2−2∣a∣∣b∣cosθ これら2つの式から、
∣a∣2+∣b∣2−2a⋅b=∣a∣2+∣b∣2−2∣a∣∣b∣cosθ したがって、
a⋅b=∣a∣∣b∣cosθ これは幾何学的な定義と同じです。
次に、成分表示の場合を考えます。a=(a1,a2), b=(b1,b2) なので、a−b=(a1−b1,a2−b2) となります。したがって、 ∣a−b∣2=(a1−b1)2+(a2−b2)2=a12−2a1b1+b12+a22−2a2b2+b22 =(a12+a22)+(b12+b22)−2(a1b1+a2b2) =∣a∣2+∣b∣2−2(a1b1+a2b2) 余弦定理を用いると、
∣a−b∣2=∣a∣2+∣b∣2−2∣a∣∣b∣cosθ これら2つの式から、
∣a∣2+∣b∣2−2(a1b1+a2b2)=∣a∣2+∣b∣2−2∣a∣∣b∣cosθ したがって、
a1b1+a2b2=∣a∣∣b∣cosθ=a⋅b つまり、成分ごとの積の和は内積の幾何学的な定義と一致します。
一般のn次元空間でも同様に証明できます。内積は、ベクトル間の角度や長さを計算するための便利な道具であり、成分表示を用いることで、計算が容易になります。