質量 $m$ の物体が、傾斜角 $\theta$ の斜面を初速度 $V$ で上向きに運動し、距離 $D$ だけ進んで静止した。運動中の物体に働く斜面方向の力 $F$、静止するまでの時間 $t_0$、静止位置 $D$ を求めよ。斜面と物体の静止摩擦係数は $\mu$、動摩擦係数は $\mu'$ であり、$\mu' < \mu$ である。重力加速度の大きさは $g$ である。

応用数学力学運動方程式摩擦力等加速度運動物理
2025/5/22

1. 問題の内容

質量 mm の物体が、傾斜角 θ\theta の斜面を初速度 VV で上向きに運動し、距離 DD だけ進んで静止した。運動中の物体に働く斜面方向の力 FF、静止するまでの時間 t0t_0、静止位置 DD を求めよ。斜面と物体の静止摩擦係数は μ\mu、動摩擦係数は μ\mu' であり、μ<μ\mu' < \mu である。重力加速度の大きさは gg である。

2. 解き方の手順

(a) 運動中の物体に働く xx 方向の力 FF を求める。
運動中は、重力と動摩擦力が働く。重力の斜面方向の成分は mgsinθ-mg\sin\theta であり、動摩擦力は μmgcosθ- \mu' mg \cos\theta である。したがって、xx 方向の力 FF は、
F=mgsinθμmgcosθ=mg(sinθ+μcosθ) F = -mg\sin\theta - \mu' mg \cos\theta = -mg(\sin\theta + \mu'\cos\theta)
(b) 物体が静止するまでの時間 t0t_0 を求める。
運動方程式は ma=Fma = F であるから、加速度 aa は、
a=Fm=g(sinθ+μcosθ) a = \frac{F}{m} = -g(\sin\theta + \mu'\cos\theta)
等加速度運動の公式 v=v0+atv = v_0 + at を用いる。最終速度 v=0v = 0, 初速度 v0=Vv_0 = V であるから、
0=V+at0 0 = V + at_0
t0=Va=Vg(sinθ+μcosθ) t_0 = - \frac{V}{a} = \frac{V}{g(\sin\theta + \mu'\cos\theta)}
(c) 物体の静止位置 DDm,V,Fm, V, F で表す。
等加速度運動の公式 x=x0+v0t+12at2x = x_0 + v_0 t + \frac{1}{2}at^2 を用いる。初期位置 x0=0x_0 = 0, 初速度 v0=Vv_0 = V, 時間 t=t0t = t_0 であるから、
D=Vt0+12at02=VVg(sinθ+μcosθ)+12(g(sinθ+μcosθ))(Vg(sinθ+μcosθ))2 D = V t_0 + \frac{1}{2} a t_0^2 = V \frac{V}{g(\sin\theta + \mu'\cos\theta)} + \frac{1}{2} (-g(\sin\theta + \mu'\cos\theta)) \left( \frac{V}{g(\sin\theta + \mu'\cos\theta)} \right)^2
D=V2g(sinθ+μcosθ)12V2g(sinθ+μcosθ)=12V2g(sinθ+μcosθ) D = \frac{V^2}{g(\sin\theta + \mu'\cos\theta)} - \frac{1}{2} \frac{V^2}{g(\sin\theta + \mu'\cos\theta)} = \frac{1}{2} \frac{V^2}{g(\sin\theta + \mu'\cos\theta)}
ここで、F=mg(sinθ+μcosθ)F = -mg(\sin\theta + \mu'\cos\theta) より、sinθ+μcosθ=Fmg\sin\theta + \mu'\cos\theta = -\frac{F}{mg} であるから、
D=12V2g(Fmg)=12mV2F D = \frac{1}{2} \frac{V^2}{g(-\frac{F}{mg})} = - \frac{1}{2} \frac{mV^2}{F}
ただし、FF は負の値であることに注意する。静止条件として、静止摩擦力 fμmgcosθf \le \mu mg \cos\theta である必要がある。斜面下向きの力は mgsinθmg\sin\theta なので、mgsinθμmgcosθmg\sin\theta \le \mu mg \cos\theta つまり tanθμ\tan\theta \le \mu が成り立つ必要がある。

3. 最終的な答え

(a) F=mg(sinθ+μcosθ)F = -mg(\sin\theta + \mu'\cos\theta)
(b) t0=Vg(sinθ+μcosθ)t_0 = \frac{V}{g(\sin\theta + \mu'\cos\theta)}
(c) D=mV22FD = - \frac{mV^2}{2F}

「応用数学」の関連問題

水槽内の水面に、小球Pを一定の速さ $v$ で移動させながら、毎秒5.0回の頻度で水面を叩き水面波を発生させる。このとき、水面波は一定の速さ $V$ で円形に広がる。図は、ある時刻における水面波の山の...

ドップラー効果物理
2025/5/22

一様な板ABが支柱C, Dによって水平に支えられており、その上に重さ24Nのおもりが置かれている。板が支柱C, Dから受ける力の大きさをそれぞれ$N_C$ [N], $N_D$ [N]とする。おもりは...

力学モーメント力のつり合いグラフ
2025/5/22

長さ $L$、質量 $m$ の一様な棒ABの一端Aが壁に蝶番で固定され、他端Bが糸で壁に繋がれています。糸と水平面のなす角は30度です。Aにはたらく力の水平方向と鉛直方向の成分をそれぞれ $F_x$ ...

力学モーメント力のつりあい剛体物理
2025/5/22

半径2の円周上を運動する質点A, Bについて、時刻tにおける位置ベクトル$r^A(t)$と$r^B(t)$が与えられています。 $r^A(t) = 2 (cos(\frac{\pi t}{3} - \...

ベクトル円運動角速度加速度軌跡微分
2025/5/22

半径2の円周上を運動する質点A, Bについて、時刻tにおける位置がそれぞれ以下のように与えられています。 $r^A(t) = 2(\cos(\frac{\pi t}{3} - \frac{\pi}{6...

ベクトル円運動角速度加速度運動解析微分
2025/5/22

2階線形同次微分方程式 $4y'' - 12y' + 9y = 0$ の一般解を求め、初期条件 $x = 0$ のとき $y = 1$, $y' = 2$ を満たす解を、選択肢の中から選びます。

微分方程式線形微分方程式初期条件一般解特性方程式
2025/5/22

半径2の円周上を運動する質点AとBについて、時刻 $t$ における位置ベクトルがそれぞれ $r^A(t) = 2(\cos(\frac{\pi t}{3} - \frac{\pi}{6})i + \s...

ベクトル円運動角速度加速度接線成分法線成分軌跡
2025/5/22

半径2の円周上を運動する質点AとBについて、時刻 $t$ におけるそれぞれの位置が与えられています。 Aの位置ベクトル: $r^A(t) = 2(\cos(\frac{\pi t}{3} - \fra...

ベクトル円運動角速度加速度軌跡微分
2025/5/22

10 kgとP [kg]の物体がロープで吊るされ、図のような位置で静止している。ロープAB, BC, CDの張力の大きさとPの値を求めよ。

力学力の釣り合いベクトル三角関数
2025/5/22

デルタ結線された三相交流回路に、線間電圧 $E_{ab} = 200\angle 0^\circ$, $E_{bc} = 200\angle -120^\circ$, $E_{ca} = 200\an...

電気回路三相交流インピーダンス複素数オームの法則
2025/5/22