表が出る確率が $a$ $(0 < a < \frac{1}{2})$、裏が出る確率が $1-a$ のコインを $n$ 回投げる試行を考えます。ただし、$n \ge 2$ とします。 $A_n$ を、$n$ 回の試行の結果、表が 2 回以上出る事象とします。 $B_n$ を、1 回目から $n$ 回目の試行が終わるまでに、「裏→表」の順で出ない事象とします。 (1) 確率 $P(A_n)$, $P(B_n)$ を求めます。 (2) 確率 $P(A_n \cap B_n)$ を求めます。 (3) 極限 $\lim_{n \to \infty} \frac{P(A_n)P(B_n)}{P(A_n \cap B_n)}$ を求めます。ただし、$0 < r < 1$ を満たす $r$ に対して、$\lim_{n \to \infty} nr^n = 0$ であることを証明なしに用いてよいです。

確率論・統計学確率事象条件付き確率極限コイン
2025/5/24
## 数学の問題の解答

1. 問題の内容

表が出る確率が aa (0<a<12)(0 < a < \frac{1}{2})、裏が出る確率が 1a1-a のコインを nn 回投げる試行を考えます。ただし、n2n \ge 2 とします。
AnA_n を、nn 回の試行の結果、表が 2 回以上出る事象とします。
BnB_n を、1 回目から nn 回目の試行が終わるまでに、「裏→表」の順で出ない事象とします。
(1) 確率 P(An)P(A_n), P(Bn)P(B_n) を求めます。
(2) 確率 P(AnBn)P(A_n \cap B_n) を求めます。
(3) 極限 limnP(An)P(Bn)P(AnBn)\lim_{n \to \infty} \frac{P(A_n)P(B_n)}{P(A_n \cap B_n)} を求めます。ただし、0<r<10 < r < 1 を満たす rr に対して、limnnrn=0\lim_{n \to \infty} nr^n = 0 であることを証明なしに用いてよいです。

2. 解き方の手順

(1) P(An)P(A_n) を求める:
AnA_n は「表が2回以上出る」事象なので、AnA_n の余事象は「表が0回または1回出る」事象です。
P(An)=1P(表が0回)P(表が1回)P(A_n) = 1 - P(\text{表が0回}) - P(\text{表が1回})
P(表が0回)=(1a)nP(\text{表が0回}) = (1-a)^n
P(表が1回)=nC1a(1a)n1=na(1a)n1P(\text{表が1回}) = {}_nC_1 a (1-a)^{n-1} = n a (1-a)^{n-1}
したがって、
P(An)=1(1a)nna(1a)n1P(A_n) = 1 - (1-a)^n - n a (1-a)^{n-1}
P(Bn)P(B_n) を求める:
BnB_n は「裏→表」の順で出ない事象です。BncB_n^cを「裏→表」が少なくとも一度出る事象とすると、P(Bn)=1P(Bnc)P(B_n) = 1 - P(B_n^c)です。
ここでは直接、P(Bn)P(B_n) を計算します。
P(Bn)P(B_n)を計算する別の方法として、漸化式を利用する方法があります。
nn回目に「裏→表」の順で出ない確率をP(Bn)P(B_n)とする。
nn回目に表が出た場合、n1n-1回目までの試行で「裏→表」が出なければよいので、確率はaP(Bn1)aP(B_{n-1})
nn回目に裏が出た場合、 n1n-1回目までの試行で「裏→表」が出なくても良いし、n1n-1回目に表が出ていれば良いので、確率は(1a)P(Bn1)+(1a)an1(1-a)P(B_{n-1})+(1-a)a^{n-1}
したがって、P(Bn)=P(Bn1)+(1a)an1P(B_n) = P(B_{n-1}) + (1-a)a^{n-1} となる。
P(B1)=1P(B_1) = 1
P(B2)=1(1a)aP(B_2) = 1 - (1-a)a
これを解くと、P(Bn)=1(n1)(1a)aP(B_n) = 1 - (n-1)(1-a)aとなります。
(2) P(AnBn)P(A_n \cap B_n) を求める:
P(AnBn)=P(AnBn)P(Bn)P(A_n \cap B_n) = P(A_n | B_n)P(B_n) または P(BnAn)P(An)P(B_n | A_n)P(A_n) を使って計算します。
AnBnA_n \cap B_n は「表が2回以上出て、かつ「裏→表」の順で出ない」事象です。
これは、AnA_nから「表が2回以上出て、かつ「裏→表」の順で出る」事象を除いたものと考えられます。
しかし、直接計算する方が簡単です。AnA_nは「表が2回以上出る」事象なので、AnBnA_n \cap B_nの余事象は「表が0回または1回出る、または「裏→表」が出る」事象です。
P(AnBn)=1P(表が0回)P(表が1回)P(裏→表が少なくとも1回)+P(表が0回かつ「裏→表」が少なくとも1回)+P(表が1回かつ「裏→表」が少なくとも1回)P(A_n \cap B_n) = 1 - P(\text{表が0回}) - P(\text{表が1回}) - P(\text{裏→表が少なくとも1回}) + P(\text{表が0回かつ「裏→表」が少なくとも1回}) + P(\text{表が1回かつ「裏→表」が少なくとも1回})
P(AnBn)=P(An)P(AnBnc)P(A_n \cap B_n) = P(A_n) - P(A_n \cap B_n^c)
P(AnBn)=1(1a)nna(1a)n1(n1)(1a)aP(A_n \cap B_n) = 1 - (1-a)^n - n a (1-a)^{n-1} - (n-1)(1-a)a
(3) 極限を求める:
limnP(An)P(Bn)P(AnBn)=limn(1(1a)nna(1a)n1)(1(n1)(1a)a)(1(1a)nna(1a)n1(n1)(1a)a)\lim_{n \to \infty} \frac{P(A_n)P(B_n)}{P(A_n \cap B_n)} = \lim_{n \to \infty} \frac{(1 - (1-a)^n - n a (1-a)^{n-1}) (1 - (n-1)(1-a)a)}{(1 - (1-a)^n - n a (1-a)^{n-1} - (n-1)(1-a)a)}
0<1a<10 < 1-a < 1 なので、 limn(1a)n=0\lim_{n \to \infty} (1-a)^n = 0 であり、limnn(1a)n1=0\lim_{n \to \infty} n (1-a)^{n-1} = 0 です。
したがって、
limnP(An)=1\lim_{n \to \infty} P(A_n) = 1
limnP(An)P(Bn)P(AnBn)=limn1(n1)(1a)a1(n1)(1a)a=1\lim_{n \to \infty} \frac{P(A_n)P(B_n)}{P(A_n \cap B_n)} = \lim_{n \to \infty} \frac{1-(n-1)(1-a)a}{1-(n-1)(1-a)a} = 1

3. 最終的な答え

(1) P(An)=1(1a)nna(1a)n1P(A_n) = 1 - (1-a)^n - n a (1-a)^{n-1}
P(Bn)=1(n1)a(1a)P(B_n) = 1 - (n-1)a(1-a)
(2) P(AnBn)=1(1a)nna(1a)n1(n1)(1a)aP(A_n \cap B_n) = 1 - (1-a)^n - n a (1-a)^{n-1} - (n-1)(1-a)a
(3) limnP(An)P(Bn)P(AnBn)=1\lim_{n \to \infty} \frac{P(A_n)P(B_n)}{P(A_n \cap B_n)} = 1

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