問題は、与えられた集合 $W$ がベクトル空間 $\mathbb{R}^3$ の部分空間であるかどうかを判定することです。具体的には、以下の2つの集合について判定します。 (1) $W = \{x \in \mathbb{R}^3 \mid x_1 + x_2 - x_3 = 0, 3x_1 + x_2 + 2x_3 = 0\}$ (2) $W = \{x \in \mathbb{R}^3 \mid 2x_1 - 3x_2 + x_3 \le 1, 3x_1 + x_2 + 2x_3 \le 1\}$

代数学線形代数ベクトル空間部分空間線形性
2025/6/8

1. 問題の内容

問題は、与えられた集合 WW がベクトル空間 R3\mathbb{R}^3 の部分空間であるかどうかを判定することです。具体的には、以下の2つの集合について判定します。
(1) W={xR3x1+x2x3=0,3x1+x2+2x3=0}W = \{x \in \mathbb{R}^3 \mid x_1 + x_2 - x_3 = 0, 3x_1 + x_2 + 2x_3 = 0\}
(2) W={xR32x13x2+x31,3x1+x2+2x31}W = \{x \in \mathbb{R}^3 \mid 2x_1 - 3x_2 + x_3 \le 1, 3x_1 + x_2 + 2x_3 \le 1\}

2. 解き方の手順

部分空間であるかどうかを判定するためには、以下の3つの条件を確認する必要があります。
(1) 零ベクトル 00WW に含まれるか。
(2) WW の任意の2つのベクトル u,vu, v に対して、u+vu + vWW に含まれるか(加法について閉じているか)。
(3) WW の任意のベクトル uu と任意のスカラー cc に対して、cucuWW に含まれるか(スカラー倍について閉じているか)。
(1) の集合 WW について:
(1) 零ベクトル (0,0,0)(0, 0, 0) を与えられた方程式に代入すると、0+00=00 + 0 - 0 = 03(0)+0+2(0)=03(0) + 0 + 2(0) = 0 となり、どちらの式も満たします。したがって、零ベクトルは WW に含まれます。
(2) u=(u1,u2,u3)u = (u_1, u_2, u_3)v=(v1,v2,v3)v = (v_1, v_2, v_3)WW の任意の2つのベクトルとします。
このとき、u1+u2u3=0u_1 + u_2 - u_3 = 0 かつ 3u1+u2+2u3=03u_1 + u_2 + 2u_3 = 0であり、v1+v2v3=0v_1 + v_2 - v_3 = 0 かつ 3v1+v2+2v3=03v_1 + v_2 + 2v_3 = 0が成り立ちます。
u+v=(u1+v1,u2+v2,u3+v3)u + v = (u_1 + v_1, u_2 + v_2, u_3 + v_3) を考えます。
(u1+v1)+(u2+v2)(u3+v3)=(u1+u2u3)+(v1+v2v3)=0+0=0(u_1 + v_1) + (u_2 + v_2) - (u_3 + v_3) = (u_1 + u_2 - u_3) + (v_1 + v_2 - v_3) = 0 + 0 = 0
3(u1+v1)+(u2+v2)+2(u3+v3)=(3u1+u2+2u3)+(3v1+v2+2v3)=0+0=03(u_1 + v_1) + (u_2 + v_2) + 2(u_3 + v_3) = (3u_1 + u_2 + 2u_3) + (3v_1 + v_2 + 2v_3) = 0 + 0 = 0
したがって、u+vu + vWW に含まれます。
(3) u=(u1,u2,u3)u = (u_1, u_2, u_3)WW の任意のベクトルとし、cc を任意のスカラーとします。
このとき、u1+u2u3=0u_1 + u_2 - u_3 = 0 かつ 3u1+u2+2u3=03u_1 + u_2 + 2u_3 = 0が成り立ちます。
cu=(cu1,cu2,cu3)cu = (cu_1, cu_2, cu_3) を考えます。
(cu1)+(cu2)(cu3)=c(u1+u2u3)=c(0)=0(cu_1) + (cu_2) - (cu_3) = c(u_1 + u_2 - u_3) = c(0) = 0
3(cu1)+(cu2)+2(cu3)=c(3u1+u2+2u3)=c(0)=03(cu_1) + (cu_2) + 2(cu_3) = c(3u_1 + u_2 + 2u_3) = c(0) = 0
したがって、cucuWW に含まれます。
したがって、(1)の WW は部分空間です。
(2) の集合 WW について:
零ベクトル (0,0,0)(0, 0, 0) を与えられた不等式に代入すると、2(0)3(0)+0=012(0) - 3(0) + 0 = 0 \le 13(0)+0+2(0)=013(0) + 0 + 2(0) = 0 \le 1 となり、どちらの不等式も満たします。したがって、零ベクトルは WW に含まれます。
しかし、例えば、x=(1,0,0)x = (1,0,0) を考えます。このとき、2(1)3(0)+0=2>12(1) - 3(0) + 0 = 2 > 1なので xxWW に含まれません。また、x1=0,x2=0,x3=0x_1 = 0, x_2 = 0, x_3 = 0 のとき、2030+0=012*0 - 3*0 + 0 = 0 \le 130+0+20=013*0 + 0 + 2*0 = 0 \le 1 が成り立つので、原点は WW に含まれます。
次に、x=(0,0,0)x = (0,0,0)WWに含まれます。cx=(0,0,0)cx = (0,0,0)なので、WWに含まれます。
u=(0,0,1)u = (0,0,1), v=(0,0,1)v=(0,0,1)とします。このとき、2u13u2+u3=112u_1 - 3u_2 + u_3 = 1 \le 13u1+u2+2u3=213u_1 + u_2 + 2u_3 = 2 \le 1を満たしません。またv=(0,0,1)v=(0,0,1)2v13v2+v3=112v_1 - 3v_2 + v_3 = 1 \le 13v1+v2+2v3=213v_1 + v_2 + 2v_3 = 2 \le 1を満たしません。 u+v=(0,0,2)u+v = (0,0,2)のとき、2(0)3(0)+2=212(0)-3(0)+2 = 2 \le 1を満たしません。よって、WWは和について閉じていません。
不等式によって定義されているため、スカラー倍に関して閉じているとは限りません。例えば、x=(0,0,1)x = (0,0,1)2(0)3(0)+1=112(0)-3(0)+1 = 1 \le 1 かつ 3(0)+0+2(1)=213(0)+0+2(1) = 2 \le 1を満たさないためWWに含まれません。
しかし 1/2(0,0,1)=(0,0,1/2)1/2(0,0,1) = (0,0,1/2)であれば、WWの条件を満たします。
例えば WWR3\mathbb{R}^3 の部分空間であると仮定します。
x=(0,0,1)x = (0, 0, 1) を考えます。
2(0)3(0)+1=112(0) - 3(0) + 1 = 1 \le 1 を満たしますが、3(0)+0+2(1)=213(0) + 0 + 2(1) = 2 \le 1 を満たしません。
したがって、x=(0,0,1)x = (0, 0, 1)WW に含まれません。
よって、WWはベクトル空間ではありません。

3. 最終的な答え

(1) WW は部分空間である。
(2) WW は部分空間ではない。

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