「総選挙がある」「総選挙がない」という噂の伝播について、噂を伝えていくうちに「総選挙がある」と聞く人と「総選挙がない」と聞く人の割合がそれぞれ一定値に近づくことを示せ。噂の伝播は、前の人が「総選挙がある」と聞いた場合、次の人に「総選挙がある」と伝える確率が0.8、「総選挙がない」と伝える確率が0.2である。前の人が「総選挙がない」と聞いた場合、次の人に「総選挙がある」と伝える確率が0.3、「総選挙がない」と伝える確率が0.7である。$n$人を経由したあとの噂の状態を表すベクトルを $x_n = \begin{bmatrix} \text{総選挙ありの確率} \\ \text{総選挙なしの確率} \end{bmatrix}$ とすると、$x_n = Ax_{n-1}$ と書ける。

代数学線形代数遷移行列固有値固有ベクトル極限
2025/7/7

1. 問題の内容

「総選挙がある」「総選挙がない」という噂の伝播について、噂を伝えていくうちに「総選挙がある」と聞く人と「総選挙がない」と聞く人の割合がそれぞれ一定値に近づくことを示せ。噂の伝播は、前の人が「総選挙がある」と聞いた場合、次の人に「総選挙がある」と伝える確率が0.8、「総選挙がない」と伝える確率が0.2である。前の人が「総選挙がない」と聞いた場合、次の人に「総選挙がある」と伝える確率が0.3、「総選挙がない」と伝える確率が0.7である。nn人を経由したあとの噂の状態を表すベクトルを xn=[総選挙ありの確率総選挙なしの確率]x_n = \begin{bmatrix} \text{総選挙ありの確率} \\ \text{総選挙なしの確率} \end{bmatrix} とすると、xn=Axn1x_n = Ax_{n-1} と書ける。

2. 解き方の手順

(1) 遷移行列 AA を求める。
問題文より、遷移行列 AA は以下のようになる。
A=[0.80.30.20.7] A = \begin{bmatrix} 0.8 & 0.3 \\ 0.2 & 0.7 \end{bmatrix}
(2) 行列 AA の固有値と固有ベクトルを求める。
まず、固有方程式 AλI=0|A - \lambda I| = 0 を解いて固有値を求める。
0.8λ0.30.20.7λ=(0.8λ)(0.7λ)(0.3)(0.2)=0 \begin{vmatrix} 0.8 - \lambda & 0.3 \\ 0.2 & 0.7 - \lambda \end{vmatrix} = (0.8 - \lambda)(0.7 - \lambda) - (0.3)(0.2) = 0
0.560.8λ0.7λ+λ20.06=0 0.56 - 0.8\lambda - 0.7\lambda + \lambda^2 - 0.06 = 0
λ21.5λ+0.5=0 \lambda^2 - 1.5\lambda + 0.5 = 0
(2λ1)(λ1)=0 (2\lambda - 1)(\lambda - 1) = 0
したがって、固有値は λ1=1\lambda_1 = 1λ2=0.5\lambda_2 = 0.5
次に、各固有値に対応する固有ベクトルを求める。
- λ1=1\lambda_1 = 1 のとき:
(AI)v1=0 (A - I)v_1 = 0
[0.20.30.20.3][x1x2]=[00] \begin{bmatrix} -0.2 & 0.3 \\ 0.2 & -0.3 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 0 \\ 0 \end{bmatrix}
0.2x1+0.3x2=0 -0.2x_1 + 0.3x_2 = 0
2x1=3x2 2x_1 = 3x_2
x1=32x2 x_1 = \frac{3}{2}x_2
したがって、固有ベクトル v1=[32]v_1 = \begin{bmatrix} 3 \\ 2 \end{bmatrix} (またはその定数倍)。
- λ2=0.5\lambda_2 = 0.5 のとき:
(A0.5I)v2=0 (A - 0.5I)v_2 = 0
[0.30.30.20.2][x1x2]=[00] \begin{bmatrix} 0.3 & 0.3 \\ 0.2 & 0.2 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 0 \\ 0 \end{bmatrix}
0.3x1+0.3x2=0 0.3x_1 + 0.3x_2 = 0
x1=x2 x_1 = -x_2
したがって、固有ベクトル v2=[11]v_2 = \begin{bmatrix} 1 \\ -1 \end{bmatrix} (またはその定数倍)。
(3) 一般解を求める。
初期状態ベクトルを x0=c1v1+c2v2x_0 = c_1v_1 + c_2v_2 と表すと、xn=Anx0=c1λ1nv1+c2λ2nv2=c1(1)nv1+c2(0.5)nv2x_n = A^n x_0 = c_1\lambda_1^n v_1 + c_2\lambda_2^n v_2 = c_1(1)^n v_1 + c_2(0.5)^n v_2
xn=c1[32]+c2(0.5)n[11]x_n = c_1 \begin{bmatrix} 3 \\ 2 \end{bmatrix} + c_2 (0.5)^n \begin{bmatrix} 1 \\ -1 \end{bmatrix}
(4) 極限を求める。
nn \to \infty のとき、(0.5)n0(0.5)^n \to 0 なので、xnc1[32]x_n \to c_1 \begin{bmatrix} 3 \\ 2 \end{bmatrix}
xnx_n は確率ベクトルなので、要素の合計は1である必要がある。したがって、3c1+2c1=13c_1 + 2c_1 = 1 より 5c1=15c_1 = 1。よって、c1=15=0.2c_1 = \frac{1}{5} = 0.2
したがって、xn15[32]=[0.60.4]x_n \to \frac{1}{5} \begin{bmatrix} 3 \\ 2 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 0.6 \\ 0.4 \end{bmatrix}

3. 最終的な答え

「総選挙がある」と聞く人の割合は0.6、「総選挙がない」と聞く人の割合は0.4に近づく。

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