写像 $f: X \rightarrow Y$ と $g: Y \rightarrow Z$ に対して、以下の4つの命題が真であるか偽であるかを判定し、真ならば証明し、偽ならば反例を挙げてください。 (1) $g \circ f$ が全射かつ、$g$ が単射ならば、$f$ は全射である。 (2) $g \circ f$ が全射かつ、$g$ が単射ならば、$f$ は単射である。 (3) $g \circ f$ が単射かつ、$f$ が全射ならば、$g$ は単射である。 (4) $g \circ f$ が単射かつ、$f$ が全射ならば、$g$ は全射である。

1. 問題の内容

写像 $f: X \rightarrow Y$ と $g: Y \rightarrow Z$ に対して、以下の4つの命題が真であるか偽であるかを判定し、真ならば証明し、偽ならば反例を挙げてください。

(1) $g \circ f$ が全射かつ、$g$ が単射ならば、$f$ は全射である。

(2) $g \circ f$ が全射かつ、$g$ が単射ならば、$f$ は単射である。

(3) $g \circ f$ が単射かつ、$f$ が全射ならば、$g$ は単射である。

(4) $g \circ f$ が単射かつ、$f$ が全射ならば、$g$ は全射である。

2. 解き方の手順

(1) 命題「$g \circ f$ が全射かつ、$g$ が単射ならば、$f$ は全射である」

この命題は偽です。反例を挙げます。

$X = \{1\}$、$Y = \{2, 3\}$、$Z = \{4\}$ とします。

$f(1) = 2$、$g(2) = 4$、$g(3) = 4$ と定義します。

このとき、$g \circ f(1) = g(f(1)) = g(2) = 4$ なので、$g \circ f$ は $Z$ への全射です。

$g$ は単射ではありません ($g(2) = g(3) = 4$ なので)。したがって、この前提は満たされていません。命題が前提として、$g$が単射であると述べているからです。

別な反例：

$X = \{1\}$、$Y = \{1, 2\}$、$Z = \{1\}$ とします。

$f(1) = 1$、$g(1) = 1$、$g(2) = 1$ と定義します。

このとき、$g \circ f(1) = g(f(1)) = g(1) = 1$ なので、$g \circ f$ は $Z$ への全射です。

$g$ は単射ではありません ($g(1) = g(2) = 1$ なので)。

しかし、$f$ は全射ではありません。なぜならば、$Y = \{1, 2\}$に対して、$f(X) = \{1\} \neq Y$　だからです。

(2) 命題「$g \circ f$ が全射かつ、$g$ が単射ならば、$f$ は単射である」

この命題は偽です。反例を挙げます。

$X = \{1, 2\}$、$Y = \{3, 4\}$、$Z = \{5\}$ とします。

$f(1) = 3$、$f(2) = 3$、$g(3) = 5$、$g(4) = 5$ と定義します。

このとき、$g \circ f(1) = g(f(1)) = g(3) = 5$、$g \circ f(2) = g(f(2)) = g(3) = 5$ なので、$g \circ f$ は $Z$ への全射です。

$g$ は単射ではありません ($g(3) = g(4) = 5$ なので)。したがって、この前提は満たされていません。

$f$ は単射ではありません ($f(1) = f(2) = 3$ なので)。

別な反例：

$X = \{1, 2\}$、$Y = \{1, 2\}$、$Z = \{1\}$ とします。

$f(1) = 1$、$f(2) = 1$、$g(1) = 1$、$g(2) = 1$ と定義します。

このとき、$g \circ f(1) = g(f(1)) = g(1) = 1$、$g \circ f(2) = g(f(2)) = g(1) = 1$ なので、$g \circ f$ は $Z$ への全射です。

$g$ は単射ではありません ($g(1) = g(2) = 1$ なので)。

$f$ は単射ではありません ($f(1) = f(2) = 1$ なので)。

(3) 命題「$g \circ f$ が単射かつ、$f$ が全射ならば、$g$ は単射である」

この命題は真です。証明します。

$g(y_1) = g(y_2)$ と仮定します。ここで、$y_1, y_2 \in Y$ です。

$f$ が全射であるから、$y_1 = f(x_1)$ および $y_2 = f(x_2)$ となる $x_1, x_2 \in X$ が存在します。

すると、$g(f(x_1)) = g(f(x_2))$ となります。

これは、$g \circ f(x_1) = g \circ f(x_2)$ を意味します。

$g \circ f$ が単射であるから、$x_1 = x_2$ が成り立ちます。

したがって、$f(x_1) = f(x_2)$ となり、$y_1 = y_2$ です。

ゆえに、$g$ は単射です。

(4) 命題「$g \circ f$ が単射かつ、$f$ が全射ならば、$g$ は全射である」

この命題は偽です。反例を挙げます。

$X = \{1\}$、$Y = \{1, 2\}$、$Z = \{1\}$ とします。

$f(1) = 1$、$g(1) = 1$、$g(2) = 1$ と定義します。

このとき、$g \circ f(1) = g(f(1)) = g(1) = 1$ なので、$g \circ f$ は単射です。

$f$ は全射ではありません（$Y=\{1, 2\}$　に対して、$f(X) = \{1\} \neq Y$）。

しかし、$f:X \rightarrow f(X)$ と定義すると、$f:X \rightarrow \{1\}$　は全射です。このとき、$g:Y\rightarrow Z$ は全射ではありません。

別な反例：

$X = \{1\}$、$Y = \{1, 2\}$、$Z = \{1, 2\}$ とします。

$f(1) = 1$、$g(1) = 1$、$g(2) = 2$ と定義します。

このとき、$g \circ f(1) = g(f(1)) = g(1) = 1$ なので、$g \circ f$ は単射です。

$f$ は全射ではありません （$Y=\{1, 2\}$　に対して、$f(X) = \{1\} \neq Y$）。

3. 最終的な答え

(1) 偽

(2) 偽

(3) 真

(4) 偽