この問題は、酵素反応における阻害剤の影響を調べるものです。阻害剤の有無で基質濃度と反応速度の関係が与えられており、 (1) 阻害剤が存在しない場合のミカエリス定数 $K_M$ と最大反応速度 $V_{max}$ を求める (2) 表中の空欄に当てはまる基質濃度を求める (3) 阻害剤の阻害様式を特定する

応用数学酵素反応ミカエリス・メンテン式阻害剤数式モデル
2025/7/15

1. 問題の内容

この問題は、酵素反応における阻害剤の影響を調べるものです。阻害剤の有無で基質濃度と反応速度の関係が与えられており、
(1) 阻害剤が存在しない場合のミカエリス定数 KMK_M と最大反応速度 VmaxV_{max} を求める
(2) 表中の空欄に当てはまる基質濃度を求める
(3) 阻害剤の阻害様式を特定する

2. 解き方の手順

(1) 阻害剤が存在しない場合のミカエリス・メンテン式は
v=Vmax[S]KM+[S]v = \frac{V_{max} [S]}{K_M + [S]}
で表されます。ここで、vv は反応速度、[S][S] は基質濃度です。
データから、VmaxV_{max}KMK_M を推定します。基質濃度 [S][S] が十分に大きいとき、反応速度 vvVmaxV_{max} に近づきます。表から、基質濃度が10 µmol/L のとき、v=8.3v = 8.3 µmol/(L s) であるため、VmaxV_{max} は約 8.3 µmol/(L s) よりも大きい値と予想できます。
KMK_M は、v=Vmax/2v = V_{max}/2 となる基質濃度 [S][S] です。
二つのデータ点を使用して、VmaxV_{max}KMK_M を計算してみましょう。基質濃度0.5, 1.0 µmol/L のときの速度をそれぞれ v1=2.0v_1 = 2.0, v2=3.3v_2 = 3.3 µmol/(L s)とします。
v1=Vmax[S1]KM+[S1]v_1 = \frac{V_{max} [S_1]}{K_M + [S_1]}
v2=Vmax[S2]KM+[S2]v_2 = \frac{V_{max} [S_2]}{K_M + [S_2]}
2.0=0.5VmaxKM+0.52.0 = \frac{0.5 V_{max}}{K_M + 0.5}
3.3=1.0VmaxKM+1.03.3 = \frac{1.0 V_{max}}{K_M + 1.0}
これらの式を整理すると、
2.0KM+1.0=0.5Vmax2.0 K_M + 1.0 = 0.5 V_{max}
3.3KM+3.3=Vmax3.3 K_M + 3.3 = V_{max}
2.0KM+1.0=0.5(3.3KM+3.3)2.0 K_M + 1.0 = 0.5 (3.3 K_M + 3.3)
2.0KM+1.0=1.65KM+1.652.0 K_M + 1.0 = 1.65 K_M + 1.65
0.35KM=0.650.35 K_M = 0.65
KM=0.65/0.35=1.857K_M = 0.65 / 0.35 = 1.857 µmol/L
Vmax=3.3KM+3.3=3.31.857+3.3=9.428V_{max} = 3.3 K_M + 3.3 = 3.3 * 1.857 + 3.3 = 9.428 µmol/(L s)
(基質濃度5.0, 10.0の速度で同様に計算すると、KMK_M = 1.826、 VmaxV_{max} = 9.076となり、似たような値になります。)
(2) 表の空欄に対応する基質濃度を xx µmol/L とします。阻害剤非共存下での反応速度が 5.0 µmol/(L s) であることから、以下の式が成り立ちます。
5.0=9.428x1.857+x5.0 = \frac{9.428 x}{1.857 + x}
5.0(1.857+x)=9.428x5.0(1.857 + x) = 9.428 x
9.285+5.0x=9.428x9.285 + 5.0x = 9.428 x
4.428x=9.2854.428 x = 9.285
x=9.285/4.428=2.097x = 9.285 / 4.428 = 2.097 µmol/L
したがって、空欄に当てはまる基質濃度は約2.1 µmol/L です。
(3) 阻害剤存在下では、VmaxV_{max}が変化し、KMK_Mは変化しない場合、競争阻害、VmaxV_{max}は変化せず、KMK_Mが変化する場合は、不競阻害、VmaxV_{max}KMK_Mの両方が変化する場合は、非競争阻害です。阻害剤が存在するとき、反応速度は常に低下しています。基質濃度が十分に高い(10 µmol/L)では、阻害剤非共存下での速度は8.3 µmol/(L s)であるのに対し、阻害剤共存下では7.1 µmol/(L s)であるため、VmaxV_{max}が減少していることがわかります。
vi=Vmax,i[S]KM,i+[S]v_i = \frac{V_{max,i} [S]}{K_{M,i} + [S]}
阻害剤存在下におけるLineweaver-Burkプロットをプロットすると、x軸切片とy軸切片の両方が変化することがわかります。したがって、阻害剤は非競争阻害剤である可能性が高いと考えられます。阻害剤存在下でのKMK_MVmaxV_{max}が両方とも変わると非競争阻害です。

3. 最終的な答え

(1) ミカエリス定数 KMK_M は約 1.9 µmol/L、最大反応速度 VmaxV_{max} は約 9.4 µmol/(L s)です。
(2) 表の空欄アに当てはまる基質濃度は約 2.1 µmol/L です。
(3) この阻害剤の阻害様式は非競争阻害です。

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