薬物Aの加水分解反応に関する問題です。反応速度定数 $k$ はヒドロニウムイオン濃度と水酸化物イオン濃度によって決まります。以下の4つの問いに答えます。 (1) 薬物A水溶液の加水分解反応が擬一次反応として解析できる理由を答えよ。 (2) 薬物A水溶液の見かけの反応速度定数 $k$ [min$^{-1}$] の常用対数とpHの関係を表すグラフを選べ。 (3) 薬物Aが最も安定なpHを求めよ。 (4) 最も安定なpHでの半減期は何日か。

応用数学反応速度論微分対数pH半減期
2025/7/27

1. 問題の内容

薬物Aの加水分解反応に関する問題です。反応速度定数 kk はヒドロニウムイオン濃度と水酸化物イオン濃度によって決まります。以下の4つの問いに答えます。
(1) 薬物A水溶液の加水分解反応が擬一次反応として解析できる理由を答えよ。
(2) 薬物A水溶液の見かけの反応速度定数 kk [min1^{-1}] の常用対数とpHの関係を表すグラフを選べ。
(3) 薬物Aが最も安定なpHを求めよ。
(4) 最も安定なpHでの半減期は何日か。

2. 解き方の手順

(1) 擬一次反応となる理由
加水分解反応において、水の濃度は反応中にほとんど変化しないため一定とみなすことができます。したがって、水の濃度を含めた速度定数を新たに定義することで、見かけ上一次反応として扱うことができます。
(2) グラフの選択
与えられた式 k=kH+[H3O+]+kOH[OH]k = k_{H^+}[H_3O^+] + k_{OH^-}[OH^-] の常用対数をとります。
まず、水のイオン積 Kw=[H3O+][OH]=1.0×1014K_w = [H_3O^+][OH^-] = 1.0 \times 10^{-14} より、[OH]=Kw[H3O+][OH^-] = \frac{K_w}{[H_3O^+]} です。
pHの定義より、[H3O+]=10pH[H_3O^+] = 10^{-pH} です。よって、[OH]=101410pH=10pH14[OH^-] = \frac{10^{-14}}{10^{-pH}} = 10^{pH-14} となります。
これを kk の式に代入すると、
k=kH+10pH+kOH10pH14k = k_{H^+}10^{-pH} + k_{OH^-}10^{pH-14}
k=(1.0×104)10pH+(1.0×102)10pH14k = (1.0 \times 10^4)10^{-pH} + (1.0 \times 10^2)10^{pH-14}
k=104pH+10pH12k = 10^{4-pH} + 10^{pH-12}
両辺の常用対数をとると、
logk=log(104pH+10pH12)\log k = \log (10^{4-pH} + 10^{pH-12})
pHが小さいとき、104pH10^{4-pH} が支配的になり、pHが大きくなるほど logk\log k は直線的に減少します。pHが大きいとき、10pH1210^{pH-12} が支配的になり、pHが大きくなるほど logk\log k は直線的に増加します。中間付近では、104pH10^{4-pH}10pH1210^{pH-12} の影響が同程度となり、最小値を持つことが予想できます。
pH = 6のとき、k=1046+10612=102+106102k = 10^{4-6} + 10^{6-12} = 10^{-2} + 10^{-6} \approx 10^{-2} なので、logk=2\log k = -2 となります。
pH = 8のとき、k=1048+10812=104+104=2×104k = 10^{4-8} + 10^{8-12} = 10^{-4} + 10^{-4} = 2 \times 10^{-4} なので、logk=log2+log104=log240.34=3.7\log k = \log 2 + \log 10^{-4} = \log 2 - 4 \approx 0.3 - 4 = -3.7 となります。
これらのことから、(オ)のグラフが最も適切であると考えられます。
(3) 最も安定なpH
最も安定なpHは、kk が最小となるpHです。(2)より、グラフ(オ)が最も適切なので、グラフの最小値となるpHを読み取ると、pH = 7 付近となります。正確に計算するには、kk を最小にするpHを求める必要があります。
k=104pH+10pH12k = 10^{4-pH} + 10^{pH-12}
dkdpH=(ln10)104pH+(ln10)10pH12=0\frac{dk}{dpH} = -(\ln 10)10^{4-pH} + (\ln 10)10^{pH-12} = 0
104pH=10pH1210^{4-pH} = 10^{pH-12}
4pH=pH124-pH = pH-12
2pH=162pH = 16
pH=8pH = 8
(4) 半減期
半減期 t1/2t_{1/2} は、一次反応の場合 t1/2=ln2kt_{1/2} = \frac{\ln 2}{k} で表されます。
pH = 8のとき、k=1048+10812=104+104=2×104k = 10^{4-8} + 10^{8-12} = 10^{-4} + 10^{-4} = 2 \times 10^{-4} min1^{-1} です。
t1/2=0.692×104=0.692×104=0.345×104=3450t_{1/2} = \frac{0.69}{2 \times 10^{-4}} = \frac{0.69}{2} \times 10^4 = 0.345 \times 10^4 = 3450 min
1日は24時間で、1時間は60分なので、1日は 24×60=144024 \times 60 = 1440 分です。
t1/2=345014402.4t_{1/2} = \frac{3450}{1440} \approx 2.4

3. 最終的な答え

(1) 水の濃度が反応中ほぼ一定であるため。
(2) (オ)
(3) pH = 8
(4) 2.4日

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