300Kにおいて100gの水に6.2gの炭酸($H_2CO_3$)を溶解させた水溶液について、以下の問いに答える問題です。ただし、溶解による溶液の体積変化は無視できるものとします。炭酸の逐次酸解離定数は、$K_{a1} = 5.76 \times 10^{-6}$、$K_{a2} = 6.00 \times 10^{-10}$とします。 (1) $H_2CO_3$水溶液の初濃度を求めよ。 (2) この溶液の平衡を示す式を全て書け。 (3) 各化学種の平衡表を書け。 (4) この水溶液中に含まれる全ての化学種と、平衡時のそれぞれの濃度を答えよ。 (5) この水溶液のpHが(ア)~(エ)のとき、水溶液中に主として存在する$H_2CO_3$由来の化学種を答えよ。またその理由を示せ。

応用数学化学平衡酸解離pHモル濃度
2025/7/27
はい、承知いたしました。問題文を読み解き、順番に解答します。

1. 問題の内容

300Kにおいて100gの水に6.2gの炭酸(H2CO3H_2CO_3)を溶解させた水溶液について、以下の問いに答える問題です。ただし、溶解による溶液の体積変化は無視できるものとします。炭酸の逐次酸解離定数は、Ka1=5.76×106K_{a1} = 5.76 \times 10^{-6}Ka2=6.00×1010K_{a2} = 6.00 \times 10^{-10}とします。
(1) H2CO3H_2CO_3水溶液の初濃度を求めよ。
(2) この溶液の平衡を示す式を全て書け。
(3) 各化学種の平衡表を書け。
(4) この水溶液中に含まれる全ての化学種と、平衡時のそれぞれの濃度を答えよ。
(5) この水溶液のpHが(ア)~(エ)のとき、水溶液中に主として存在するH2CO3H_2CO_3由来の化学種を答えよ。またその理由を示せ。

2. 解き方の手順

(1) H2CO3H_2CO_3水溶液の初濃度を求める。
まず、H2CO3H_2CO_3の分子量を計算します。H:1.0, C:12.0, O:16.0 なので、分子量は2×1.0+12.0+3×16.0=62.02 \times 1.0 + 12.0 + 3 \times 16.0 = 62.0 g/molです。
次に、H2CO3H_2CO_3のモル数を計算します。6.2 g/62.0 g/mol=0.1 mol6.2 \text{ g} / 62.0 \text{ g/mol} = 0.1 \text{ mol}です。
水溶液の体積を求めます。水の密度を1 g/mLと近似すると、100 gの水は100 mL = 0.1 Lです。溶解による体積変化は無視できるので、溶液の体積は0.1 Lとします。
したがって、初濃度は0.1 mol/0.1 L=1 mol/L=1 M0.1 \text{ mol} / 0.1 \text{ L} = 1 \text{ mol/L} = 1 \text{ M}です。
(2) この溶液の平衡を示す式を全て書く。
H2CO3H_2CO_3の酸解離平衡は以下の通りです。
H2CO3(aq)+H2O(l)HCO3(aq)+H3O+(aq)H_2CO_3(aq) + H_2O(l) \rightleftharpoons HCO_3^-(aq) + H_3O^+(aq)
HCO3(aq)+H2O(l)CO32(aq)+H3O+(aq)HCO_3^-(aq) + H_2O(l) \rightleftharpoons CO_3^{2-}(aq) + H_3O^+(aq)
水の自己解離平衡も考慮すると、
2H2O(l)H3O+(aq)+OH(aq)2H_2O(l) \rightleftharpoons H_3O^+(aq) + OH^-(aq)
(3) 各化学種の平衡表を書く。
| 化学種 | 初濃度(M) | 変化量(M) | 平衡濃度(M) |
| ----------- | -------- | -------- | -------- |
| H2CO3H_2CO_3 | 1 | -x | 1-x |
| HCO3HCO_3^- | 0 | +x | x |
| H3O+H_3O^+ | 0 | +x | x |
| CO32CO_3^{2-} | 0 | +y | y |
| OHOH^- | 0 | +z | z |
HCO3HCO_3^-については、2段階目の解離による変化も考慮して、
HCO3(aq)+H2O(l)CO32(aq)+H3O+(aq)HCO_3^- (aq) + H_2O(l) \rightleftharpoons CO_3^{2-}(aq) + H_3O^+(aq)
| 化学種 | 初濃度(M) | 変化量(M) | 平衡濃度(M) |
| ----------- | -------- | -------- | -------- |
| HCO3HCO_3^- | x | -y | x-y |
| CO32CO_3^{2-} | 0 | +y | y |
| H3O+H_3O^+ | x | +y | x+y |
(4) この水溶液中に含まれる全ての化学種と平衡時のそれぞれの濃度を答えよ。
水溶液中に含まれる化学種は、H2CO3H_2CO_3, HCO3HCO_3^-, CO32CO_3^{2-}, H3O+H_3O^+, OHOH^-, H2OH_2Oです。
ただし、H2OH_2Oは溶媒なので通常は濃度を計算しません。
Ka1=[HCO3][H3O+][H2CO3]=5.76×106K_{a1} = \frac{[HCO_3^-][H_3O^+]}{[H_2CO_3]} = 5.76 \times 10^{-6}
Ka2=[CO32][H3O+][HCO3]=6.00×1010K_{a2} = \frac{[CO_3^{2-}][H_3O^+]}{[HCO_3^-]} = 6.00 \times 10^{-10}
Kw=[H3O+][OH]=1.0×1014K_w = [H_3O^+][OH^-] = 1.0 \times 10^{-14}
H2CO3H_2CO_3の初濃度が1Mと大きく、Ka1K_{a1}が小さいので、x << 1と近似できます。よって、[H2CO3]1[H_2CO_3] \approx 1 M。
Ka1=x21=5.76×106K_{a1} = \frac{x^2}{1} = 5.76 \times 10^{-6}より、x=5.76×106=2.4×103x = \sqrt{5.76 \times 10^{-6}} = 2.4 \times 10^{-3} M
したがって、[HCO3]=[H3O+]=2.4×103[HCO_3^-] = [H_3O^+] = 2.4 \times 10^{-3} M
次に、Ka2K_{a2}を用いて[CO32][CO_3^{2-}]を計算します。
Ka2=[CO32][H3O+][HCO3]=6.00×1010K_{a2} = \frac{[CO_3^{2-}][H_3O^+]}{[HCO_3^-]} = 6.00 \times 10^{-10}
[CO32]=Ka2×[HCO3][H3O+]=6.00×1010×2.4×1032.4×103=6.00×1010[CO_3^{2-}] = K_{a2} \times \frac{[HCO_3^-]}{[H_3O^+]} = 6.00 \times 10^{-10} \times \frac{2.4 \times 10^{-3}}{2.4 \times 10^{-3}} = 6.00 \times 10^{-10} M
最後に、[OH][OH^-]を計算します。
[OH]=Kw[H3O+]=1.0×10142.4×103=4.17×1012[OH^-] = \frac{K_w}{[H_3O^+]} = \frac{1.0 \times 10^{-14}}{2.4 \times 10^{-3}} = 4.17 \times 10^{-12} M
よって、平衡時の濃度は以下の通りです。
[H2CO3]1[H_2CO_3] \approx 1 M
[HCO3]=2.4×103[HCO_3^-] = 2.4 \times 10^{-3} M
[CO32]=6.00×1010[CO_3^{2-}] = 6.00 \times 10^{-10} M
[H3O+]=2.4×103[H_3O^+] = 2.4 \times 10^{-3} M
[OH]=4.17×1012[OH^-] = 4.17 \times 10^{-12} M
(5) この水溶液のpHが(ア)~(エ)のとき、水溶液中に主として存在するH2CO3H_2CO_3由来の化学種を答えよ。またその理由を示せ。
pHと主成分の関係は以下のようになります。
ア) pH << pKa1pK_{a1}: 主に H2CO3H_2CO_3 が存在する。理由は、pHが低い(酸性)ため、H2CO3H_2CO_3の解離が抑制されるため。
イ) pH ≈ pKa1pK_{a1}: H2CO3H_2CO_3HCO3HCO_3^- がほぼ同程度存在する。理由は、pH が pKa1pK_{a1} に近いと、H2CO3H_2CO_3 の解離平衡がほぼ中間になるため。
ウ) pKa1pK_{a1} << pH << pKa2pK_{a2}: 主に HCO3HCO_3^- が存在する。理由は、pHがpKa1pK_{a1} より高く、pKa2pK_{a2}より低いため、H2CO3H_2CO_3 は解離してHCO3HCO_3^- になりやすいが、HCO3HCO_3^-の解離はまだ抑制されるため。
エ) pH ≈ pKa2pK_{a2}: HCO3HCO_3^-CO32CO_3^{2-} がほぼ同程度存在する。理由は、pH が pKa2pK_{a2} に近いと、HCO3HCO_3^- の解離平衡がほぼ中間になるため。
オ) pH >> pKa2pK_{a2}: 主に CO32CO_3^{2-} が存在する。理由は、pHが高い(塩基性)ため、HCO3HCO_3^- の解離が促進されるため。
pKa1=log(5.76×106)5.24pK_{a1} = -log(5.76 \times 10^{-6}) \approx 5.24
pKa2=log(6.00×1010)9.22pK_{a2} = -log(6.00 \times 10^{-10}) \approx 9.22
pHが(ア)から(エ)の値が具体的に与えられていないので、一般的なpH範囲とpKapK_aの値から考えられる主成分を上記に示しました。

3. 最終的な答え

(1) H2CO3H_2CO_3水溶液の初濃度: 1 M
(2) 平衡反応式:
H2CO3(aq)+H2O(l)HCO3(aq)+H3O+(aq)H_2CO_3(aq) + H_2O(l) \rightleftharpoons HCO_3^-(aq) + H_3O^+(aq)
HCO3(aq)+H2O(l)CO32(aq)+H3O+(aq)HCO_3^-(aq) + H_2O(l) \rightleftharpoons CO_3^{2-}(aq) + H_3O^+(aq)
2H2O(l)H3O+(aq)+OH(aq)2H_2O(l) \rightleftharpoons H_3O^+(aq) + OH^-(aq)
(3) 平衡表: (上記参照)
(4) 各化学種の平衡濃度:
[H2CO3]1[H_2CO_3] \approx 1 M
[HCO3]=2.4×103[HCO_3^-] = 2.4 \times 10^{-3} M
[CO32]=6.00×1010[CO_3^{2-}] = 6.00 \times 10^{-10} M
[H3O+]=2.4×103[H_3O^+] = 2.4 \times 10^{-3} M
[OH]=4.17×1012[OH^-] = 4.17 \times 10^{-12} M
(5) pHによる主成分の変化: (上記参照)

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