(1) H2CO3水溶液の初濃度を求める。 まず、H2CO3の分子量を計算します。H:1.0, C:12.0, O:16.0 なので、分子量は2×1.0+12.0+3×16.0=62.0 g/molです。 次に、H2CO3のモル数を計算します。6.2 g/62.0 g/mol=0.1 molです。 水溶液の体積を求めます。水の密度を1 g/mLと近似すると、100 gの水は100 mL = 0.1 Lです。溶解による体積変化は無視できるので、溶液の体積は0.1 Lとします。
したがって、初濃度は0.1 mol/0.1 L=1 mol/L=1 Mです。 (2) この溶液の平衡を示す式を全て書く。
H2CO3の酸解離平衡は以下の通りです。 H2CO3(aq)+H2O(l)⇌HCO3−(aq)+H3O+(aq) HCO3−(aq)+H2O(l)⇌CO32−(aq)+H3O+(aq) 水の自己解離平衡も考慮すると、
2H2O(l)⇌H3O+(aq)+OH−(aq) (3) 各化学種の平衡表を書く。
| 化学種 | 初濃度(M) | 変化量(M) | 平衡濃度(M) |
| ----------- | -------- | -------- | -------- |
| H2CO3 | 1 | -x | 1-x | | HCO3− | 0 | +x | x | | H3O+ | 0 | +x | x | | CO32− | 0 | +y | y | | OH− | 0 | +z | z | HCO3−については、2段階目の解離による変化も考慮して、 HCO3−(aq)+H2O(l)⇌CO32−(aq)+H3O+(aq) | 化学種 | 初濃度(M) | 変化量(M) | 平衡濃度(M) |
| ----------- | -------- | -------- | -------- |
| HCO3− | x | -y | x-y | | CO32− | 0 | +y | y | | H3O+ | x | +y | x+y | (4) この水溶液中に含まれる全ての化学種と平衡時のそれぞれの濃度を答えよ。
水溶液中に含まれる化学種は、H2CO3, HCO3−, CO32−, H3O+, OH−, H2Oです。 ただし、H2Oは溶媒なので通常は濃度を計算しません。 Ka1=[H2CO3][HCO3−][H3O+]=5.76×10−6 Ka2=[HCO3−][CO32−][H3O+]=6.00×10−10 Kw=[H3O+][OH−]=1.0×10−14 H2CO3の初濃度が1Mと大きく、Ka1が小さいので、x << 1と近似できます。よって、[H2CO3]≈1 M。 Ka1=1x2=5.76×10−6より、x=5.76×10−6=2.4×10−3 M したがって、[HCO3−]=[H3O+]=2.4×10−3 M 次に、Ka2を用いて[CO32−]を計算します。 Ka2=[HCO3−][CO32−][H3O+]=6.00×10−10 [CO32−]=Ka2×[H3O+][HCO3−]=6.00×10−10×2.4×10−32.4×10−3=6.00×10−10 M 最後に、[OH−]を計算します。 [OH−]=[H3O+]Kw=2.4×10−31.0×10−14=4.17×10−12 M よって、平衡時の濃度は以下の通りです。
[H2CO3]≈1 M [HCO3−]=2.4×10−3 M [CO32−]=6.00×10−10 M [H3O+]=2.4×10−3 M [OH−]=4.17×10−12 M (5) この水溶液のpHが(ア)~(エ)のとき、水溶液中に主として存在するH2CO3由来の化学種を答えよ。またその理由を示せ。 pHと主成分の関係は以下のようになります。
ア) pH << pKa1: 主に H2CO3 が存在する。理由は、pHが低い(酸性)ため、H2CO3の解離が抑制されるため。 イ) pH ≈ pKa1: H2CO3 と HCO3− がほぼ同程度存在する。理由は、pH が pKa1 に近いと、H2CO3 の解離平衡がほぼ中間になるため。 ウ) pKa1 << pH << pKa2: 主に HCO3− が存在する。理由は、pHがpKa1 より高く、pKa2より低いため、H2CO3 は解離してHCO3− になりやすいが、HCO3−の解離はまだ抑制されるため。 エ) pH ≈ pKa2: HCO3− と CO32− がほぼ同程度存在する。理由は、pH が pKa2 に近いと、HCO3− の解離平衡がほぼ中間になるため。 オ) pH >> pKa2: 主に CO32− が存在する。理由は、pHが高い(塩基性)ため、HCO3− の解離が促進されるため。 pKa1=−log(5.76×10−6)≈5.24 pKa2=−log(6.00×10−10)≈9.22 pHが(ア)から(エ)の値が具体的に与えられていないので、一般的なpH範囲とpKaの値から考えられる主成分を上記に示しました。