この問題は、ある国の産業連関表の基本取引表に基づいて、投入係数表、逆行列係数表を求め、さらに公共投資による各産業への波及効果を計算するものです。具体的には、以下の3つの問いに答えます。 (1) 基本取引表の数値を用いて、投入係数表に対応する行列を求めよ。 (2) 投入係数表を用い、逆行列係数表を求めよ。 (3) 公共投資によって第1産業、第2産業、第3産業のそれぞれに対して5、10、2の新規需要が発生したとき、国内で誘発される各産業への波及効果はいくらになるか計算せよ。

応用数学行列産業連関表逆行列経済モデル
2025/7/30

1. 問題の内容

この問題は、ある国の産業連関表の基本取引表に基づいて、投入係数表、逆行列係数表を求め、さらに公共投資による各産業への波及効果を計算するものです。具体的には、以下の3つの問いに答えます。
(1) 基本取引表の数値を用いて、投入係数表に対応する行列を求めよ。
(2) 投入係数表を用い、逆行列係数表を求めよ。
(3) 公共投資によって第1産業、第2産業、第3産業のそれぞれに対して5、10、2の新規需要が発生したとき、国内で誘発される各産業への波及効果はいくらになるか計算せよ。

2. 解き方の手順

(1) 投入係数表の作成
投入係数(aija_{ij})は、ii産業の生産のためにjj産業から投入される財・サービスの割合を示します。
投入係数は、各産業の取引額を生産額で割ることで計算できます。
基本取引表の各要素をそれぞれの産業の生産額で割ることで投入係数表を作成します。
具体的には、aij=xij/Xja_{ij} = x_{ij} / X_jで計算します。ここで、xijx_{ij}jj産業からii産業への投入額、XjX_jjj産業の生産額です。
第1産業の生産額は360、第2産業の生産額は410、第3産業の生産額は270です。
よって、投入係数表は以下のようになります。
a11=40/360=0.111a_{11} = 40/360 = 0.111
a12=110/410=0.268a_{12} = 110/410 = 0.268
a13=90/270=0.333a_{13} = 90/270 = 0.333
a21=60/360=0.167a_{21} = 60/360 = 0.167
a22=200/410=0.488a_{22} = 200/410 = 0.488
a23=40/270=0.148a_{23} = 40/270 = 0.148
a31=100/360=0.278a_{31} = 100/360 = 0.278
a32=60/410=0.146a_{32} = 60/410 = 0.146
a33=20/270=0.074a_{33} = 20/270 = 0.074
投入係数表Aは以下の通りです。
A=[0.1110.2680.3330.1670.4880.1480.2780.1460.074]A = \begin{bmatrix} 0.111 & 0.268 & 0.333 \\ 0.167 & 0.488 & 0.148 \\ 0.278 & 0.146 & 0.074 \end{bmatrix}
(2) 逆行列係数表の作成
逆行列係数表((IA)1(I-A)^{-1})は、レオンチェフ逆行列とも呼ばれ、生産誘発効果を表します。ここで、IIは単位行列、AAは投入係数表です。
逆行列係数表は、(IA)(I-A)の逆行列を計算することで求められます。
I=[100010001]I = \begin{bmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{bmatrix}
IA=[10.1110.2680.3330.16710.4880.1480.2780.14610.074]=[0.8890.2680.3330.1670.5120.1480.2780.1460.926]I-A = \begin{bmatrix} 1-0.111 & -0.268 & -0.333 \\ -0.167 & 1-0.488 & -0.148 \\ -0.278 & -0.146 & 1-0.074 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 0.889 & -0.268 & -0.333 \\ -0.167 & 0.512 & -0.148 \\ -0.278 & -0.146 & 0.926 \end{bmatrix}
(IA)1(I-A)^{-1}を計算すると、約
(IA)1=[1.3990.7080.6360.6012.2340.4580.5480.4661.228](I-A)^{-1} = \begin{bmatrix} 1.399 & 0.708 & 0.636 \\ 0.601 & 2.234 & 0.458 \\ 0.548 & 0.466 & 1.228 \end{bmatrix}
(3) 波及効果の計算
公共投資による新規需要のベクトルをd=[5102]d = \begin{bmatrix} 5 \\ 10 \\ 2 \end{bmatrix}とします。
生産誘発効果は、逆行列係数に新規需要ベクトルを掛けることで計算できます。
すなわち、x=(IA)1dx = (I-A)^{-1}dで求められます。
x=[1.3990.7080.6360.6012.2340.4580.5480.4661.228][5102]=[1.3995+0.70810+0.63620.6015+2.23410+0.45820.5485+0.46610+1.2282]=[7.0+7.08+1.2723.005+22.34+0.9162.74+4.66+2.456]=[15.35126.2619.856]x = \begin{bmatrix} 1.399 & 0.708 & 0.636 \\ 0.601 & 2.234 & 0.458 \\ 0.548 & 0.466 & 1.228 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} 5 \\ 10 \\ 2 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 1.399*5 + 0.708*10 + 0.636*2 \\ 0.601*5 + 2.234*10 + 0.458*2 \\ 0.548*5 + 0.466*10 + 1.228*2 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 7.0 + 7.08 + 1.272 \\ 3.005 + 22.34 + 0.916 \\ 2.74 + 4.66 + 2.456 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 15.351 \\ 26.261 \\ 9.856 \end{bmatrix}

3. 最終的な答え

(1) 投入係数表:
A=[0.1110.2680.3330.1670.4880.1480.2780.1460.074]A = \begin{bmatrix} 0.111 & 0.268 & 0.333 \\ 0.167 & 0.488 & 0.148 \\ 0.278 & 0.146 & 0.074 \end{bmatrix}
(2) 逆行列係数表:
(IA)1=[1.3990.7080.6360.6012.2340.4580.5480.4661.228](I-A)^{-1} = \begin{bmatrix} 1.399 & 0.708 & 0.636 \\ 0.601 & 2.234 & 0.458 \\ 0.548 & 0.466 & 1.228 \end{bmatrix}
(3) 波及効果:
第1産業:15.351
第2産業:26.261
第3産業:9.856

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