ベクトル空間 $U$ から $V$ への線形写像 $T$ が与えられている。 (1) $T$ の像 $\mathrm{Im}(T)$ が $V$ の部分空間であることを示す。 (2) $T$ の核 $\mathrm{Ker}(T)$ が $U$ の部分空間であることを示す。

代数学線形写像ベクトル空間部分空間
2025/8/5

1. 問題の内容

ベクトル空間 UU から VV への線形写像 TT が与えられている。
(1) TT の像 Im(T)\mathrm{Im}(T)VV の部分空間であることを示す。
(2) TT の核 Ker(T)\mathrm{Ker}(T)UU の部分空間であることを示す。

2. 解き方の手順

(1) Im(T)\mathrm{Im}(T)VV の部分空間であることを示す。
部分空間であるためには、以下の3つの条件を満たす必要がある。
(a) ゼロベクトル 0\mathbf{0}Im(T)\mathrm{Im}(T) に含まれる。
(b) Im(T)\mathrm{Im}(T) の任意の2つのベクトル v1,v2\mathbf{v}_1, \mathbf{v}_2 に対して、v1+v2\mathbf{v}_1 + \mathbf{v}_2Im(T)\mathrm{Im}(T) に含まれる (和に関して閉じている)。
(c) Im(T)\mathrm{Im}(T) の任意のベクトル v\mathbf{v} と任意のスカラー cc に対して、cvc\mathbf{v}Im(T)\mathrm{Im}(T) に含まれる (スカラー倍に関して閉じている)。
(a) TT は線形写像なので、T(0)=0T(\mathbf{0}) = \mathbf{0} である。ここで、0\mathbf{0}UU のゼロベクトルである。したがって、VV のゼロベクトル 0\mathbf{0}Im(T)\mathrm{Im}(T) に含まれる。
(b) v1,v2Im(T)\mathbf{v}_1, \mathbf{v}_2 \in \mathrm{Im}(T) とする。このとき、ある u1,u2U\mathbf{u}_1, \mathbf{u}_2 \in U が存在して、v1=T(u1)\mathbf{v}_1 = T(\mathbf{u}_1) かつ v2=T(u2)\mathbf{v}_2 = T(\mathbf{u}_2) と書ける。
v1+v2=T(u1)+T(u2)\mathbf{v}_1 + \mathbf{v}_2 = T(\mathbf{u}_1) + T(\mathbf{u}_2)
線形性より
T(u1)+T(u2)=T(u1+u2)T(\mathbf{u}_1) + T(\mathbf{u}_2) = T(\mathbf{u}_1 + \mathbf{u}_2)
u1+u2U\mathbf{u}_1 + \mathbf{u}_2 \in U より、T(u1+u2)Im(T)T(\mathbf{u}_1 + \mathbf{u}_2) \in \mathrm{Im}(T) である。したがって、v1+v2Im(T)\mathbf{v}_1 + \mathbf{v}_2 \in \mathrm{Im}(T) である。
(c) vIm(T)\mathbf{v} \in \mathrm{Im}(T) とする。このとき、ある uU\mathbf{u} \in U が存在して、v=T(u)\mathbf{v} = T(\mathbf{u}) と書ける。任意のスカラー cc に対して、cv=cT(u)c\mathbf{v} = cT(\mathbf{u}) である。線形性より、cT(u)=T(cu)cT(\mathbf{u}) = T(c\mathbf{u}) である。cuUc\mathbf{u} \in U より、T(cu)Im(T)T(c\mathbf{u}) \in \mathrm{Im}(T) である。したがって、cvIm(T)c\mathbf{v} \in \mathrm{Im}(T) である。
以上より、Im(T)\mathrm{Im}(T)VV の部分空間である。
(2) Ker(T)\mathrm{Ker}(T)UU の部分空間であることを示す。
部分空間であるためには、以下の3つの条件を満たす必要がある。
(a) ゼロベクトル 0\mathbf{0}Ker(T)\mathrm{Ker}(T) に含まれる。
(b) Ker(T)\mathrm{Ker}(T) の任意の2つのベクトル u1,u2\mathbf{u}_1, \mathbf{u}_2 に対して、u1+u2\mathbf{u}_1 + \mathbf{u}_2Ker(T)\mathrm{Ker}(T) に含まれる (和に関して閉じている)。
(c) Ker(T)\mathrm{Ker}(T) の任意のベクトル u\mathbf{u} と任意のスカラー cc に対して、cuc\mathbf{u}Ker(T)\mathrm{Ker}(T) に含まれる (スカラー倍に関して閉じている)。
(a) TT は線形写像なので、T(0)=0T(\mathbf{0}) = \mathbf{0} である。ここで、0\mathbf{0}UU のゼロベクトルであり、右辺の0\mathbf{0}VV のゼロベクトルである。0Ker(T)\mathbf{0} \in \mathrm{Ker}(T) である。
(b) u1,u2Ker(T)\mathbf{u}_1, \mathbf{u}_2 \in \mathrm{Ker}(T) とする。このとき、T(u1)=0T(\mathbf{u}_1) = \mathbf{0} かつ T(u2)=0T(\mathbf{u}_2) = \mathbf{0} である。
T(u1+u2)=T(u1)+T(u2)=0+0=0T(\mathbf{u}_1 + \mathbf{u}_2) = T(\mathbf{u}_1) + T(\mathbf{u}_2) = \mathbf{0} + \mathbf{0} = \mathbf{0}
したがって、u1+u2Ker(T)\mathbf{u}_1 + \mathbf{u}_2 \in \mathrm{Ker}(T) である。
(c) uKer(T)\mathbf{u} \in \mathrm{Ker}(T) とする。このとき、T(u)=0T(\mathbf{u}) = \mathbf{0} である。任意のスカラー cc に対して、T(cu)=cT(u)=c0=0T(c\mathbf{u}) = cT(\mathbf{u}) = c\mathbf{0} = \mathbf{0} である。したがって、cuKer(T)c\mathbf{u} \in \mathrm{Ker}(T) である。
以上より、Ker(T)\mathrm{Ker}(T)UU の部分空間である。

3. 最終的な答え

(1) Im(T)\mathrm{Im}(T)VV の部分空間である。
(2) Ker(T)\mathrm{Ker}(T)UU の部分空間である。

「代数学」の関連問題

$\frac{\sqrt{3} - 1}{\sqrt{3} + 1}$ の分母を有理化しなさい。

分母の有理化平方根式の計算
2025/8/6

与えられた二つの数式をそれぞれ計算し、簡単にする問題です。一つ目の式は $(3a + 4) - (-a + 6)$ であり、二つ目の式は $(-\frac{1}{5}x + 3) + (\frac{4...

式の計算一次式分配法則文字式
2025/8/6

写真に写っている計算問題(1番と2番)を解く。

文字式の計算一次式同類項の計算分配法則
2025/8/6

$a > b$ のとき、以下の不等式の空欄に当てはまる不等号(< または >)を答える問題です。 (1) $a + 7 \square b + 7$ (2) $-\frac{2}{5}a \squar...

不等式不等号式の変形
2025/8/6

画像に写っている数学の問題を解く。問題は、式を計算する問題で、掛け算と割り算、分配法則を使った計算などが含まれる。

式の計算分配法則一次式計算
2025/8/6

与えられた行列 $A = \begin{bmatrix} -2 & 1 \\ 4 & 1 \end{bmatrix}$ を対角化する。

線形代数行列対角化固有値固有ベクトル
2025/8/6

縦12cm、横16cmの絵を台紙に貼ったところ、周りの余白の幅が同じになった。絵の面積が台紙の面積の3/5であるとき、余白の幅 $x$ cmを求めよ。

二次方程式面積因数分解文章問題
2025/8/6

行列 $A = \begin{bmatrix} -2 & 1 \\ 4 & 1 \end{bmatrix}$ を対角化する。

線形代数行列対角化固有値固有ベクトル
2025/8/6

与えられた複数の1次式の計算問題を解く問題です。

一次式式の計算同類項
2025/8/6

与えられた各組の数について、それらの大小関係を不等号を用いて表す問題です。 (1) $2^{\frac{3}{2}}$, $2^{-2}$, $2^5$, $1$ (2) $0.7^5$, $0.7^...

大小比較指数累乗根
2025/8/6