この問題では、2つの酸(塩酸と酢酸)を水酸化ナトリウムで滴定したときのpH滴定曲線を描くことを求められています。 具体的には、以下の2つの滴定におけるpH滴定曲線を、横軸をNaOHの添加量(0~40mL)、縦軸をpHとしてグラフに表す必要があります。 - 0.100 mol/Lの塩酸25.00 mLを0.100 mol/Lの水酸化ナトリウムで滴定 - 0.100 mol/Lの酢酸25.00 mLを0.100 mol/Lの水酸化ナトリウムで滴定

応用数学pH滴定化学平衡酸塩基反応化学
2025/5/18

1. 問題の内容

この問題では、2つの酸(塩酸と酢酸)を水酸化ナトリウムで滴定したときのpH滴定曲線を描くことを求められています。
具体的には、以下の2つの滴定におけるpH滴定曲線を、横軸をNaOHの添加量(0~40mL)、縦軸をpHとしてグラフに表す必要があります。
- 0.100 mol/Lの塩酸25.00 mLを0.100 mol/Lの水酸化ナトリウムで滴定
- 0.100 mol/Lの酢酸25.00 mLを0.100 mol/Lの水酸化ナトリウムで滴定

2. 解き方の手順

まず、滴定曲線を描くための一般的な手順を説明します。
滴定曲線は、滴定剤の添加量に対して、被滴定溶液のpHの変化をプロットしたものです。滴定曲線を描くためには、滴定の各段階におけるpHを計算する必要があります。
(1) 塩酸(HCl)の滴定の場合
塩酸は強酸であるため、pHの計算は比較的簡単です。
* **滴定前:**
塩酸の濃度からpHを直接計算できます。
[H+]=0.100 mol/L[H^+] = 0.100 \text{ mol/L}
pH=log10[H+]=log10(0.100)=1pH = -log_{10}[H^+] = -log_{10}(0.100) = 1
* **滴定中:**
添加したNaOHの量に応じて、塩酸が中和されていきます。未反応の塩酸の濃度を計算し、そこからpHを求めます。
例えば、10 mLのNaOHを加えた場合:
NaOHのモル数 = 0.100 mol/L×0.010 L=0.0010 mol0.100 \text{ mol/L} \times 0.010 \text{ L} = 0.0010 \text{ mol}
HClの初期モル数 = 0.100 mol/L×0.025 L=0.0025 mol0.100 \text{ mol/L} \times 0.025 \text{ L} = 0.0025 \text{ mol}
未反応のHClのモル数 = 0.0025 mol0.0010 mol=0.0015 mol0.0025 \text{ mol} - 0.0010 \text{ mol} = 0.0015 \text{ mol}
溶液の総体積 = 25 mL+10 mL=35 mL=0.035 L25 \text{ mL} + 10 \text{ mL} = 35 \text{ mL} = 0.035 \text{ L}
未反応のHClの濃度 = 0.0015 mol0.035 L0.0429 mol/L\frac{0.0015 \text{ mol}}{0.035 \text{ L}} \approx 0.0429 \text{ mol/L}
pH=log10(0.0429)1.37pH = -log_{10}(0.0429) \approx 1.37
* **当量点:**
塩酸と水酸化ナトリウムが完全に中和される点です。強酸と強塩基の中和であるため、pHは7となります。
この場合、当量点はNaOHを25 mL加えたときです。
* **当量点以降:**
過剰に添加された水酸化ナトリウムによってpHが上昇します。過剰な水酸化ナトリウムの濃度を計算し、pOHを求めてからpHを計算します (pH=14pOHpH = 14 - pOH)。
(2) 酢酸(CH3COOH)の滴定の場合
酢酸は弱酸であるため、pHの計算が塩酸よりも複雑になります。
* **滴定前:**
酢酸の電離平衡を考慮してpHを計算します。酢酸の酸解離定数 KaK_a を知っておく必要があります。ここでは Ka=1.8×105K_a = 1.8 \times 10^{-5}とします。
CH3COOHCH3COO+H+CH_3COOH \rightleftharpoons CH_3COO^- + H^+
Ka=[CH3COO][H+][CH3COOH]K_a = \frac{[CH_3COO^-][H^+]}{[CH_3COOH]}
初期濃度をCとすると、電離度をαとして
Ka=(Cα)(Cα)C(1α)Cα2K_a = \frac{(C\alpha)(C\alpha)}{C(1-\alpha)} \approx C\alpha^2
α=KaC=1.8×1050.1000.0134\alpha = \sqrt{\frac{K_a}{C}} = \sqrt{\frac{1.8 \times 10^{-5}}{0.100}} \approx 0.0134
[H+]=Cα=0.100×0.01340.00134 mol/L[H^+] = C\alpha = 0.100 \times 0.0134 \approx 0.00134 \text{ mol/L}
pH=log10(0.00134)2.87pH = -log_{10}(0.00134) \approx 2.87
* **滴定中:**
酢酸と水酸化ナトリウムの中和反応により、酢酸ナトリウムという弱塩基が生成します。この混合溶液は緩衝溶液として働き、ヘンダーソン-ハッセルバルヒの式を使ってpHを計算できます。
pH=pKa+log10[CH3COO][CH3COOH]pH = pK_a + log_{10}\frac{[CH_3COO^-]}{[CH_3COOH]}
pKa=log10(Ka)=log10(1.8×105)4.74pK_a = -log_{10}(K_a) = -log_{10}(1.8 \times 10^{-5}) \approx 4.74
例えば、10 mLのNaOHを加えた場合:
NaOHのモル数 = 0.100 mol/L×0.010 L=0.0010 mol0.100 \text{ mol/L} \times 0.010 \text{ L} = 0.0010 \text{ mol}
酢酸の初期モル数 = 0.100 mol/L×0.025 L=0.0025 mol0.100 \text{ mol/L} \times 0.025 \text{ L} = 0.0025 \text{ mol}
酢酸ナトリウムのモル数 = 0.0010 mol0.0010 \text{ mol}
未反応の酢酸のモル数 = 0.0025 mol0.0010 mol=0.0015 mol0.0025 \text{ mol} - 0.0010 \text{ mol} = 0.0015 \text{ mol}
[CH3COO]0.0010 mol0.035 L[CH_3COO^-] \approx \frac{0.0010 \text{ mol}}{0.035 \text{ L}}
[CH3COOH]0.0015 mol0.035 L[CH_3COOH] \approx \frac{0.0015 \text{ mol}}{0.035 \text{ L}}
pH=4.74+log100.00100.00154.74+log10(0.667)4.56pH = 4.74 + log_{10}\frac{0.0010}{0.0015} \approx 4.74 + log_{10}(0.667) \approx 4.56
* **半当量点:**
酢酸の半分の量が中和された点。このとき [CH3COO]=[CH3COOH][CH_3COO^-] = [CH_3COOH]となり、pH=pKapH = pK_aとなります。この場合、半当量点はNaOHを12.5 mL加えたときです。
* **当量点:**
酢酸と水酸化ナトリウムが完全に中和される点。酢酸ナトリウムは弱塩基なので、pHは7よりも高くなります。
酢酸ナトリウムの加水分解を考慮してpHを計算する必要があります。
CH3COO+H2OCH3COOH+OHCH_3COO^- + H_2O \rightleftharpoons CH_3COOH + OH^-
Kb=KwKa=1.0×10141.8×1055.56×1010K_b = \frac{K_w}{K_a} = \frac{1.0 \times 10^{-14}}{1.8 \times 10^{-5}} \approx 5.56 \times 10^{-10}
当量点における酢酸ナトリウムの濃度をC'とすると、
[OH]=KbC[OH^-] = \sqrt{K_b C'}
pOH=log10[OH]pOH = -log_{10}[OH^-]
pH=14pOHpH = 14 - pOH
* **当量点以降:**
過剰に添加された水酸化ナトリウムによってpHが上昇します。

3. 最終的な答え

最終的な答えは、上記の手順に従って計算されたpH値を、NaOHの添加量に対してプロットした2つのpH滴定曲線です。グラフは、
* 塩酸の滴定曲線:pH=1付近から始まり、当量点(25mL)で急激にpHが上昇しpH=7となります。その後、徐々にpHが高くなる曲線。
* 酢酸の滴定曲線:pH=2.87付近から始まり、半当量点(12.5mL)で緩衝作用によりpHの変化が緩やかになります。当量点(25mL)でpHが急上昇するものの、強酸-強塩基の滴定ほど急峻ではありません。その後、過剰の水酸化ナトリウムによりpHが上昇します。
上記手順を参考に、いくつかの代表的な点についてpHを計算し、それらを滑らかな曲線で結ぶことでpH滴定曲線を描くことができます。

「応用数学」の関連問題

定価200円の商品がA商店とB商店で異なる価格で販売されています。A商店では定価のm%で販売し、B商店では200個以下は定価、200個を超える分は定価のn%で販売します。ただし、m, nは自然数です。...

文章問題価格不等式最大値計算
2025/6/6

金属材料の抵抗率が与えられたとき、ヴィーデマン・フランツの法則を用いて、室温における熱伝導度を求める。

物理熱伝導電気抵抗ヴィーデマン・フランツの法則計算
2025/6/6

室温(300 K)におけるある金属材料の抵抗率が $1.7 \times 10^{-8} \ \Omega \cdot \text{m}$ であるとき、ヴィーデマン・フランツの法則を用いて、室温におけ...

物理熱伝導ヴィーデマン・フランツの法則電気抵抗率ローレンツ数
2025/6/6

Sを発射位置として、水平方向から45°の方向にボールを発射した場合と、30°の方向にボールを発射した場合の水平距離を比較し、その結果から言えることを選択肢から選ぶ問題です。

力学物理放物運動三角関数
2025/6/6

等温等積条件で平衡状態にある液体と気体の化学ポテンシャル$\mu_L$と$\mu_G$の関係を求める問題です。 ラグランジュの未定乗数法を使用します。

化学熱力学化学ポテンシャルラグランジュの未定乗数法
2025/6/6

等温等積条件で平衡状態にある液体と気体について、それぞれの化学ポテンシャル$\mu_L$と$\mu_G$の関係を求める問題です。

熱力学化学ポテンシャル相平衡ギブズエネルギー
2025/6/6

等温等積条件で平衡状態にある液体と気体について、それぞれの化学ポテンシャル $\mu_L$(液体)と $\mu_G$(気体)の間の関係を求める問題です。

熱力学化学ポテンシャル平衡状態ギブズエネルギー
2025/6/6

直径 $d = 30 \text{ mm}$、長さ $l = 500 \text{ mm}$ の円形断面軸の一端が固定されており、軸の中央から先端にかけて単位長さあたり $\tau = 300 \te...

材料力学ねじり積分断面二次極モーメント横弾性係数
2025/6/6

ベクトル $\mathbf{A} = \mathbf{i} + \mathbf{j} + 3\mathbf{k}$, $\mathbf{B} = \mathbf{i} - 2\mathbf{j} + ...

ベクトルベクトルの内積ベクトルの外積ラプラシアン
2025/6/6

直径 $d = 20 \text{ mm}$、長さ $l = 400 \text{ mm}$ の円形断面軸の一端が壁に固定されている。軸端に $T = 300 \text{ Nm}$ のトルクを作用さ...

力学材料力学ねじりトルク極断面二次モーメント横弾性係数単位変換
2025/6/6