行列 $A$ が与えられたとき、以下の2つのことを証明しなさい。 (1) 任意の行列 $A$ がエルミート行列 $B$ と反エルミート行列 $C$ の和として一意的に表されることを示せ。 (2) 条件 $A^*A = AA^*$ (このような $A$ を正規行列という) に同値な条件を $B$ と $C$ のみで与えよ。ここで $A^*$ は $A$ の共役転置を表す。
2025/5/22
## 問題1
1. 問題の内容
行列 が与えられたとき、以下の2つのことを証明しなさい。
(1) 任意の行列 がエルミート行列 と反エルミート行列 の和として一意的に表されることを示せ。
(2) 条件 (このような を正規行列という) に同値な条件を と のみで与えよ。ここで は の共役転置を表す。
2. 解き方の手順
(1) 任意の行列 をエルミート行列 と反エルミート行列 の和として表すことを考えます。
とします。ここで、、 です。
両辺の共役転置をとると、 となります。
したがって、
これにより、 および となります。
と がそれぞれエルミート行列と反エルミート行列であることを確認します。
よって、 はエルミート行列、 は反エルミート行列です。
一意性について: と2通りの表現があったとする。このときとなる。左辺はエルミート行列、右辺は反エルミート行列である。従って、両辺はエルミート行列かつ反エルミート行列となるため、ゼロ行列でなければならない。すなわち、、となり、一意的に表される。
(2) に同値な条件を と で表す。
なので、
したがって、 は、 と同値である。
つまり、 から となり、 となる。
3. 最終的な答え
(1) および であり、一意的に表される。
(2)
## 問題2
1. 問題の内容
与えられた行列
\begin{pmatrix}
a & a-b+\sqrt{\frac{-1}{3}} \\
a+\sqrt{\frac{-1}{3}} & b-a
\end{pmatrix}
がユニタリ行列となるような実数 を求めよ。
2. 解き方の手順
行列 がユニタリ行列であるとは、 を満たすことです。ここで、 は の共役転置であり、 は単位行列です。
$A = \begin{pmatrix}
a & a-b+i/\sqrt{3} \\
a+i/\sqrt{3} & b-a
\end{pmatrix}$
$A^* = \begin{pmatrix}
a & a-i/\sqrt{3} \\
a-b-i/\sqrt{3} & b-a
\end{pmatrix}$
$A^*A = \begin{pmatrix}
a & a-i/\sqrt{3} \\
a-b-i/\sqrt{3} & b-a
\end{pmatrix} \begin{pmatrix}
a & a-b+i/\sqrt{3} \\
a+i/\sqrt{3} & b-a
\end{pmatrix}$
$= \begin{pmatrix}
a^2 + (a+i/\sqrt{3})(a-i/\sqrt{3}) & a(a-b+i/\sqrt{3})+(a-i/\sqrt{3})(b-a) \\
(a-b-i/\sqrt{3})a+(b-a)(a+i/\sqrt{3}) & (a-b-i/\sqrt{3})(a-b+i/\sqrt{3}) + (b-a)^2
\end{pmatrix}$
$= \begin{pmatrix}
2a^2 + 1/3 & a(a-b+i/\sqrt{3})+a(b-a)-i/\sqrt{3}(b-a) \\
a(a-b-i/\sqrt{3})+(b-a)a+i/\sqrt{3}(b-a) & (a-b)^2 + 1/3 + (b-a)^2
\end{pmatrix}$
$= \begin{pmatrix}
2a^2 + 1/3 & i/\sqrt{3} a - i/\sqrt{3}(b-a) \\
-i/\sqrt{3} a + i/\sqrt{3}(b-a) & 2(a-b)^2 + 1/3
\end{pmatrix}$
$= \begin{pmatrix}
2a^2 + 1/3 & i/\sqrt{3} (2a-b) \\
i/\sqrt{3} (b-2a) & 2(a-b)^2 + 1/3
\end{pmatrix}$
$A^*A = I = \begin{pmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{pmatrix}$
したがって、以下の連立方程式が得られます。
(1)
(2)
(3)
(1) より、 なので 。したがって、。
(3) より、。
(2) に代入すると、
。したがって、。
のとき、
のとき、
3. 最終的な答え
## 問題3
1. 問題の内容
が部分空間であるとき、「 が部分空間になること」と「 または が成立すること」が同値であることを示せ。
2. 解き方の手順
() が部分空間 または を示す。
かつ と仮定する。このとき、 かつ なる が存在し、 かつ なる が存在する。
であるから、 が部分空間であると仮定すると、 となる。
したがって、 または が成り立つ。
(i) のとき、 より、 となる。これは、 に矛盾する。
(ii) のとき、 より、 となる。これは、 に矛盾する。
したがって、 かつ という仮定は誤りである。よって、 または が成り立つ。
() または が部分空間であることを示す。
(i) のとき、 である。 は部分空間であるから、 は部分空間である。
(ii) のとき、 である。 は部分空間であるから、 は部分空間である。
3. 最終的な答え
が部分空間になることと、 または が成立することは同値である。