断熱壁で囲まれた容器1と容器2があり、それぞれ理想気体が封入されています。容器1は容積が変化せず、初期温度が $T_1$ です。容器2はピストン付きで、初期温度が $T_2 (<T_1)$ 、圧力が $P_2$ です。容器1と容器2は熱的に接触しており、気体の定積モル比熱は $c_V$ です。 (i) ピストンが動かないように固定されている場合、熱平衡状態になったときの気体の温度 $T_{(i)}$ を求めます。 (ii) ピストンは固定されておらず、常に一定の圧力 $P_2$ を加えている場合、熱平衡状態になったときの気体の温度 $T_{(ii)}$ を求めます。 (iii) (i) と (ii) でどちらの温度が高くなるかを答え、その物理的な意味を考察します。

応用数学熱力学理想気体熱平衡内部エネルギー
2025/5/31

1. 問題の内容

断熱壁で囲まれた容器1と容器2があり、それぞれ理想気体が封入されています。容器1は容積が変化せず、初期温度が T1T_1 です。容器2はピストン付きで、初期温度が T2(<T1)T_2 (<T_1) 、圧力が P2P_2 です。容器1と容器2は熱的に接触しており、気体の定積モル比熱は cVc_V です。
(i) ピストンが動かないように固定されている場合、熱平衡状態になったときの気体の温度 T(i)T_{(i)} を求めます。
(ii) ピストンは固定されておらず、常に一定の圧力 P2P_2 を加えている場合、熱平衡状態になったときの気体の温度 T(ii)T_{(ii)} を求めます。
(iii) (i) と (ii) でどちらの温度が高くなるかを答え、その物理的な意味を考察します。

2. 解き方の手順

(i) ピストンが固定されている場合
容器1と容器2の体積をそれぞれ V1V_1V2V_2 とします。物質量が同じなので、モル数を nn とおくと、容器1の初期状態は、P1V1=nRT1P_1V_1 = nRT_1、容器2の初期状態は、P2V2=nRT2P_2V_2 = nRT_2となります。
ピストンが固定されているため、V1V_1V2V_2は一定です。熱平衡状態になったときの温度をT(i)T_{(i)}とすると、容器1の圧力はP1=nRT(i)V1P_1' = \frac{nRT_{(i)}}{V_1}、容器2の圧力はP2=nRT(i)V2P_2' = \frac{nRT_{(i)}}{V_2}となります。
内部エネルギーの変化の和は0なので、ΔU1+ΔU2=0\Delta U_1 + \Delta U_2 = 0
ncV(T(i)T1)+ncV(T(i)T2)=0nc_V(T_{(i)} - T_1) + nc_V(T_{(i)} - T_2) = 0
T(i)T1+T(i)T2=0T_{(i)} - T_1 + T_{(i)} - T_2 = 0
2T(i)=T1+T22T_{(i)} = T_1 + T_2
T(i)=T1+T22T_{(i)} = \frac{T_1 + T_2}{2}
(ii) ピストンが固定されていない場合
ピストンには常に圧力P2P_2がかかっているため、容器2の圧力は常にP2P_2です。容器1の初期状態はP1V1=nRT1P_1V_1 = nRT_1です。熱平衡状態になった時の温度をT(ii)T_{(ii)}、容器1の圧力をP1P_1''、容器2の体積をV2V_2'とすると、P1V1=nRT(ii)P_1''V_1 = nRT_{(ii)}P2V2=nRT(ii)P_2V_2' = nRT_{(ii)}となります。
この時、容器1の体積は変化しませんが、容器2の体積は変化します。
全エネルギーの変化は0なので、ΔU1+ΔU2+ΔW=0\Delta U_1 + \Delta U_2 + \Delta W= 0となります。
ここで、ΔU1=ncV(T(ii)T1) \Delta U_1 = nc_V(T_{(ii)} - T_1), ΔU2=ncV(T(ii)T2)\Delta U_2 = nc_V(T_{(ii)} - T_2), ΔW=P2(V2V2)\Delta W = P_2(V_2' - V_2)です。
ncV(T(ii)T1)+ncV(T(ii)T2)+P2(V2V2)=0nc_V(T_{(ii)} - T_1) + nc_V(T_{(ii)} - T_2) + P_2(V_2' - V_2) = 0
2ncVT(ii)ncV(T1+T2)+P2V2P2V2=02nc_VT_{(ii)} - nc_V(T_1+T_2) + P_2V_2' - P_2V_2 = 0
2ncVT(ii)ncV(T1+T2)+nRT(ii)nRT2=02nc_VT_{(ii)} - nc_V(T_1+T_2) + nRT_{(ii)} - nRT_2 = 0
(2cV+R)T(ii)=cV(T1+T2)+RT2(2c_V+R)T_{(ii)} = c_V(T_1+T_2) + RT_2
T(ii)=cV(T1+T2)+RT22cV+RT_{(ii)} = \frac{c_V(T_1+T_2) + RT_2}{2c_V + R}
T(ii)=cVT1+(cV+R)T22cV+RT_{(ii)} = \frac{c_VT_1 + (c_V+R)T_2}{2c_V + R}
(iii) (i) と (ii) の温度比較
T(i)=T1+T22T_{(i)} = \frac{T_1 + T_2}{2}
T(ii)=cVT1+(cV+R)T22cV+RT_{(ii)} = \frac{c_VT_1 + (c_V+R)T_2}{2c_V + R}
T(ii)T(i)=cVT1+(cV+R)T22cV+RT1+T22=2cVT1+2(cV+R)T2(2cV+R)(T1+T2)2(2cV+R)=2cVT1+2cVT2+2RT22cVT12cVT2RT1RT22(2cV+R)=RT2RT12(2cV+R)=R(T2T1)2(2cV+R)T_{(ii)} - T_{(i)} = \frac{c_VT_1 + (c_V+R)T_2}{2c_V + R} - \frac{T_1 + T_2}{2} = \frac{2c_VT_1 + 2(c_V+R)T_2 - (2c_V+R)(T_1+T_2)}{2(2c_V+R)} = \frac{2c_VT_1 + 2c_VT_2 + 2RT_2 - 2c_VT_1 - 2c_VT_2 - RT_1 - RT_2}{2(2c_V+R)} = \frac{RT_2 - RT_1}{2(2c_V+R)} = \frac{R(T_2-T_1)}{2(2c_V+R)}
T2<T1T_2 < T_1 より、T(ii)T(i)<0T_{(ii)} - T_{(i)} < 0。したがって、T(i)>T(ii)T_{(i)} > T_{(ii)}
物理的な意味:(ii)の場合、ピストンが動くことで外部に仕事をするため、その分、内部エネルギーが減少し、温度が低くなります。

3. 最終的な答え

(i) T(i)=T1+T22T_{(i)} = \frac{T_1 + T_2}{2}
(ii) T(ii)=cVT1+(cV+R)T22cV+RT_{(ii)} = \frac{c_VT_1 + (c_V+R)T_2}{2c_V + R}
(iii) T(i)>T(ii)T_{(i)} > T_{(ii)}

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