急ブレーキをかけた自動車の運動を、動摩擦係数が速度 $v$ の関数 $\mu'(1-cv)$ で表されるとして考える。ここで $c$ は正の定数、$\mu'$ は定数である。以下の問いに答える。 (i) 水平方向の質点の運動方程式を求める。 (ii) (i) で求めた運動方程式を解き、加速度、速度、位置をそれぞれ求める。 (iii) 質点が静止するまでに必要な時間を求める。 (iv) その間に進んだ距離 $X_2$ を求める。 (v) 関数 $f(s) = \log(1-s)$ を $s=0$ の周りでマクローリン展開し、$s$ の2次の項まで求める。 (vi) $cv_0 \ll 1$ のとき、$X_2$ はどのように近似されるか。ただし、$v_0$ は初期速度。

応用数学運動方程式微分方程式積分マクローリン展開近似
2025/6/11
はい、承知いたしました。以下に回答します。

1. 問題の内容

急ブレーキをかけた自動車の運動を、動摩擦係数が速度 vv の関数 μ(1cv)\mu'(1-cv) で表されるとして考える。ここで cc は正の定数、μ\mu' は定数である。以下の問いに答える。
(i) 水平方向の質点の運動方程式を求める。
(ii) (i) で求めた運動方程式を解き、加速度、速度、位置をそれぞれ求める。
(iii) 質点が静止するまでに必要な時間を求める。
(iv) その間に進んだ距離 X2X_2 を求める。
(v) 関数 f(s)=log(1s)f(s) = \log(1-s)s=0s=0 の周りでマクローリン展開し、ss の2次の項まで求める。
(vi) cv01cv_0 \ll 1 のとき、X2X_2 はどのように近似されるか。ただし、v0v_0 は初期速度。

2. 解き方の手順

(i) 運動方程式
水平方向の運動方程式は、ニュートンの運動方程式 F=maF = ma より、
mdvdt=μ(1cv)mgm \frac{dv}{dt} = -\mu' (1-cv) mg
となる。ここで、mm は質点の質量、gg は重力加速度である。
(ii) 運動方程式の解
加速度 a=dvdta = \frac{dv}{dt} は、
a=μg(1cv)a = -\mu' g (1-cv)
速度 v(t)v(t) を求めるために、微分方程式を解く。
dvdt=μg(1cv)\frac{dv}{dt} = -\mu' g (1-cv)
dv1cv=μgdt\frac{dv}{1-cv} = -\mu' g dt
両辺を積分する。
dv1cv=μgdt\int \frac{dv}{1-cv} = \int -\mu' g dt
1clog1cv=μgt+C1-\frac{1}{c} \log|1-cv| = -\mu' g t + C_1
初期条件 t=0t=0v=v0v=v_0 を代入して、C1C_1 を求める。
1clog1cv0=C1-\frac{1}{c} \log|1-cv_0| = C_1
よって、
1clog1cv=μgt1clog1cv0-\frac{1}{c} \log|1-cv| = -\mu' g t - \frac{1}{c} \log|1-cv_0|
log1cv=log1cv0+cμgt\log|1-cv| = \log|1-cv_0| + c \mu' g t
1cv=(1cv0)ecμgt1-cv = (1-cv_0) e^{-c \mu' g t}
v(t)=1c[1(1cv0)ecμgt]v(t) = \frac{1}{c} [1 - (1-cv_0) e^{c\mu'gt}]
位置 x(t)x(t) を求めるために、速度を時間で積分する。
x(t)=v(t)dt=1c[1(1cv0)ecμgt]dtx(t) = \int v(t) dt = \int \frac{1}{c} [1 - (1-cv_0) e^{-c \mu' g t}] dt
x(t)=1c[t+(1cv0)cμgecμgt]+C2x(t) = \frac{1}{c} [t + \frac{(1-cv_0)}{c\mu'g} e^{-c \mu' g t}] + C_2
初期条件 t=0t=0x=0x=0 を代入して、C2C_2 を求める。
0=1c[0+(1cv0)cμg]+C20 = \frac{1}{c} [0 + \frac{(1-cv_0)}{c\mu'g} ] + C_2
C2=1c(1cv0)cμgC_2 = -\frac{1}{c} \frac{(1-cv_0)}{c\mu'g}
よって、
x(t)=tc+1cv0c2μg(ecμgt1)x(t) = \frac{t}{c} + \frac{1-cv_0}{c^2 \mu' g} (e^{-c\mu'gt} - 1)
(iii) 静止するまでの時間
v(t)=0v(t) = 0 となる時間 tt を求める。
v(t)=1c[1(1cv0)ecμgt]=0v(t) = \frac{1}{c} [1 - (1-cv_0) e^{-c \mu' g t}] = 0
1=(1cv0)ecμgt1 = (1-cv_0) e^{-c \mu' g t}
ecμgt=1cv0e^{c \mu' g t} = 1-cv_0
cμgt=log(1cv0)-c\mu'gt = \log(1-cv_0)
t=log(1cv0)cμgt = - \frac{\log(1-cv_0)}{c\mu'g}
(iv) 静止するまでに進んだ距離
上記で求めた時間を x(t)x(t) に代入する。
X2=x(t)=tc+1cv0c2μg(ecμgt1)X_2 = x(t) = \frac{t}{c} + \frac{1-cv_0}{c^2 \mu' g} (e^{-c\mu'gt} - 1)
X2=1c(log(1cv0)cμg)+1cv0c2μg(elog(1cv0)1)X_2 = \frac{1}{c} \left( - \frac{\log(1-cv_0)}{c\mu'g}\right) + \frac{1-cv_0}{c^2 \mu' g} (e^{ \log(1-cv_0)} - 1)
X2=log(1cv0)c2μg+1cv0c2μg((1cv0)11)X_2 = - \frac{\log(1-cv_0)}{c^2\mu'g} + \frac{1-cv_0}{c^2 \mu' g} ((1-cv_0)^{-1} - 1)
X2=log(1cv0)c2μg+1cv0c2μg(11cv01)X_2 = - \frac{\log(1-cv_0)}{c^2\mu'g} + \frac{1-cv_0}{c^2 \mu' g} (\frac{1}{1-cv_0} - 1)
X2=log(1cv0)c2μg+1cv0c2μgcv01cv0X_2 = - \frac{\log(1-cv_0)}{c^2\mu'g} + \frac{1-cv_0}{c^2 \mu' g} \frac{cv_0}{1-cv_0}
X2=1c2μg[log(1cv0)+cv0]X_2 = \frac{1}{c^2\mu'g} [-\log(1-cv_0) + cv_0]
(v) マクローリン展開
f(s)=log(1s)f(s) = \log(1-s)s=0s=0 の周りでマクローリン展開する。
f(s)=f(0)+f(0)s+f(0)2!s2+f(s) = f(0) + f'(0)s + \frac{f''(0)}{2!}s^2 + \dots
f(0)=log(10)=log(1)=0f(0) = \log(1-0) = \log(1) = 0
f(s)=11sf'(s) = \frac{-1}{1-s}, f(0)=1f'(0) = -1
f(s)=1(1s)2f''(s) = \frac{-1}{(1-s)^2}, f(0)=1f''(0) = -1
よって、
f(s)=0ss22+f(s) = 0 - s - \frac{s^2}{2} + \dots
f(s)ss22f(s) \approx -s - \frac{s^2}{2}
(vi) 近似
cv01cv_0 \ll 1 のとき、
log(1cv0)cv0(cv0)22\log(1-cv_0) \approx -cv_0 - \frac{(cv_0)^2}{2}
これを X2X_2 の式に代入する。
X2=1c2μg[log(1cv0)+cv0]X_2 = \frac{1}{c^2\mu'g} [-\log(1-cv_0) + cv_0]
X21c2μg[(cv0(cv0)22)+cv0]X_2 \approx \frac{1}{c^2\mu'g} [-(-cv_0 - \frac{(cv_0)^2}{2}) + cv_0]
X21c2μg[cv0+(cv0)22+cv0]X_2 \approx \frac{1}{c^2\mu'g} [cv_0 + \frac{(cv_0)^2}{2} + cv_0]
X21c2μg[2cv0+(cv0)22]X_2 \approx \frac{1}{c^2\mu'g} [2cv_0 + \frac{(cv_0)^2}{2}]
X22v0cμg+v022μgX_2 \approx \frac{2v_0}{c\mu'g} + \frac{v_0^2}{2\mu'g}

3. 最終的な答え

(i) mdvdt=μ(1cv)mgm \frac{dv}{dt} = -\mu' (1-cv) mg
(ii) a=μg(1cv)a = -\mu' g (1-cv), v(t)=1c[1(1cv0)ecμgt]v(t) = \frac{1}{c} [1 - (1-cv_0) e^{-c \mu' g t}], x(t)=tc+1cv0c2μg(ecμgt1)x(t) = \frac{t}{c} + \frac{1-cv_0}{c^2 \mu' g} (e^{-c\mu'gt} - 1)
(iii) t=log(1cv0)cμgt = - \frac{\log(1-cv_0)}{c\mu'g}
(iv) X2=1c2μg[log(1cv0)+cv0]X_2 = \frac{1}{c^2\mu'g} [-\log(1-cv_0) + cv_0]
(v) f(s)ss22f(s) \approx -s - \frac{s^2}{2}
(vi) X22v0cμg+v022μgX_2 \approx \frac{2v_0}{c\mu'g} + \frac{v_0^2}{2\mu'g}

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