$n \times n$ の正方行列 $A = \{A_{ij}(t)\}$ と $B = \{B_{ij}(t)\}$ の各要素が時間 $t$ の関数であるとき、以下の2つの式を示す問題です。 (1) $\frac{d}{dt}(AB) = \frac{dA}{dt}B + A\frac{dB}{dt}$ (2) $B = A^{-1}$ のとき、$\frac{dA^{-1}}{dt} = -A^{-1}\frac{dA}{dt}A^{-1}$

応用数学行列微分積の微分逆行列
2025/6/16

1. 問題の内容

n×nn \times n の正方行列 A={Aij(t)}A = \{A_{ij}(t)\}B={Bij(t)}B = \{B_{ij}(t)\} の各要素が時間 tt の関数であるとき、以下の2つの式を示す問題です。
(1) ddt(AB)=dAdtB+AdBdt\frac{d}{dt}(AB) = \frac{dA}{dt}B + A\frac{dB}{dt}
(2) B=A1B = A^{-1} のとき、dA1dt=A1dAdtA1\frac{dA^{-1}}{dt} = -A^{-1}\frac{dA}{dt}A^{-1}

2. 解き方の手順

(1) ddt(AB)=dAdtB+AdBdt\frac{d}{dt}(AB) = \frac{dA}{dt}B + A\frac{dB}{dt} の証明
行列 ABAB(i,j)(i, j) 成分は k=1nAikBkj\sum_{k=1}^n A_{ik}B_{kj} です。これの時間微分は、積の微分法則を用いると
ddt(AB)ij=ddtk=1nAikBkj=k=1nddt(AikBkj)=k=1n(dAikdtBkj+AikdBkjdt)\frac{d}{dt}(AB)_{ij} = \frac{d}{dt} \sum_{k=1}^n A_{ik}B_{kj} = \sum_{k=1}^n \frac{d}{dt} (A_{ik}B_{kj}) = \sum_{k=1}^n (\frac{dA_{ik}}{dt}B_{kj} + A_{ik}\frac{dB_{kj}}{dt})
ここで、和の順序を入れ替えて、
k=1ndAikdtBkj+k=1nAikdBkjdt=(dAdtB)ij+(AdBdt)ij\sum_{k=1}^n \frac{dA_{ik}}{dt}B_{kj} + \sum_{k=1}^n A_{ik}\frac{dB_{kj}}{dt} = (\frac{dA}{dt}B)_{ij} + (A\frac{dB}{dt})_{ij}
したがって、
ddt(AB)=dAdtB+AdBdt\frac{d}{dt}(AB) = \frac{dA}{dt}B + A\frac{dB}{dt} が成り立ちます。
(2) B=A1B = A^{-1} のとき、dA1dt=A1dAdtA1\frac{dA^{-1}}{dt} = -A^{-1}\frac{dA}{dt}A^{-1} の証明
AA1=IA A^{-1} = I (単位行列) であることを利用します。両辺を時間 tt で微分すると、
ddt(AA1)=ddt(I)=0\frac{d}{dt}(AA^{-1}) = \frac{d}{dt}(I) = 0
(1) の結果を用いると、
dAdtA1+AdA1dt=0\frac{dA}{dt}A^{-1} + A\frac{dA^{-1}}{dt} = 0
AdA1dt=dAdtA1A\frac{dA^{-1}}{dt} = -\frac{dA}{dt}A^{-1}
両辺に左から A1A^{-1} を掛けると、
A1AdA1dt=A1dAdtA1A^{-1} A \frac{dA^{-1}}{dt} = -A^{-1} \frac{dA}{dt}A^{-1}
dA1dt=A1dAdtA1\frac{dA^{-1}}{dt} = -A^{-1}\frac{dA}{dt}A^{-1}
が成り立ちます。

3. 最終的な答え

(1) ddt(AB)=dAdtB+AdBdt\frac{d}{dt}(AB) = \frac{dA}{dt}B + A\frac{dB}{dt}
(2) dA1dt=A1dAdtA1\frac{dA^{-1}}{dt} = -A^{-1}\frac{dA}{dt}A^{-1}

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