二次正方行列 $A, B$ に対して、以下の等式が成り立つことを示します。 (1) $\text{tr}(AB) = \text{tr}(BA)$ (2) 正則行列 $P$ に対して、$\text{tr}(P^{-1}AP) = \text{tr}(A)$ (ヒント：(1)を利用) (3) $(AB)^T = B^T A^T$

1. 問題の内容

二次正方行列 $A, B$ に対して、以下の等式が成り立つことを示します。

(1) $\text{tr}(AB) = \text{tr}(BA)$

(2) 正則行列 $P$ に対して、$\text{tr}(P^{-1}AP) = \text{tr}(A)$ (ヒント：(1)を利用)

(3) $(AB)^T = B^T A^T$

2. 解き方の手順

(1) $A = (a_{ij}), B = (b_{ij})$ とします。$AB$ の $(i, i)$ 成分は $\sum_{k=1}^2 a_{ik} b_{ki}$ であり、$BA$ の $(i, i)$ 成分は $\sum_{k=1}^2 b_{ik} a_{ki}$ です。トレースは対角成分の和なので、

$\text{tr}(AB) = \sum_{i=1}^2 \sum_{k=1}^2 a_{ik} b_{ki}$

$\text{tr}(BA) = \sum_{i=1}^2 \sum_{k=1}^2 b_{ik} a_{ki}$

ここで、$\text{tr}(AB)$ の和の記号の順序を入れ替えます。

$\text{tr}(AB) = \sum_{k=1}^2 \sum_{i=1}^2 a_{ik} b_{ki} = \sum_{k=1}^2 \sum_{i=1}^2 b_{ki} a_{ik} = \sum_{i=1}^2 \sum_{k=1}^2 b_{ik} a_{ki} = \text{tr}(BA)$

よって、$\text{tr}(AB) = \text{tr}(BA)$ が成り立ちます。

(2) (1)を利用します。

$\text{tr}(P^{-1}AP) = \text{tr}(P^{-1}(AP)) = \text{tr}((AP)P^{-1}) = \text{tr}(A(PP^{-1})) = \text{tr}(AI) = \text{tr}(A)$

よって、$\text{tr}(P^{-1}AP) = \text{tr}(A)$ が成り立ちます。

(3) $A = (a_{ij}), B = (b_{ij})$ とします。

$(AB)^T$ の $(i,j)$ 成分は $(AB)_{ji}$です。

一方、$B^T A^T$ の $(i,j)$ 成分は $\sum_k B^T_{ik} A^T_{kj} = \sum_k B_{ki} A_{jk}$

$AB$ の $(j,i)$ 成分は $(AB)_{ji} = \sum_k A_{jk} B_{ki}$

これらは等しいので、$(AB)^T = B^T A^T$ が成り立ちます。

3. 最終的な答え

(1) $\text{tr}(AB) = \text{tr}(BA)$

(2) $\text{tr}(P^{-1}AP) = \text{tr}(A)$

(3) $(AB)^T = B^T A^T$