(1) 多重線形性の定式化
多重線形性とは、各列ベクトルに関して線形性を持つことを意味します。つまり、ある列ベクトルが2つのベクトルの和で表される場合、行列式はそれぞれのベクトルに対する行列式の和になります。また、ある列ベクトルがスカラー倍された場合、行列式も同じスカラー倍されます。
具体的には、以下のように表されます。
* ある列 (例えば第1列) が a=αu+βv (u,v∈K3, α,β∈K) と表されるとき、 F(αu+βv,b,c)=αF(u,b,c)+βF(v,b,c) * 同様に、
F(a,αu+βv,c)=αF(a,u,c)+βF(a,v,c) F(a,b,αu+βv)=αF(a,b,u)+βF(a,b,v) (2) 多重線形性を持つD(A)の展開式の導出 a,b,cを基本ベクトルで展開すると、 a=a1e1+a2e2+a3e3 b=b1e1+b2e2+b3e3 c=c1e1+c2e2+c3e3 D(A)=D(a,b,c)=D(a1e1+a2e2+a3e3,b1e1+b2e2+b3e3,c1e1+c2e2+c3e3) 多重線形性より、これを展開すると、27個の項の和になります。
D(A)=∑i=13∑j=13∑k=13aibjckD(ei,ej,ek) さらに、行列式が交代性を持つ(すなわち、2つの列を入れ替えると符号が変わる)ことを考慮します。これにより、D(ei,ej,ek) は、i,j,kがすべて異なるときのみ0でない値を持ち、順列 (i,j,k) の偶奇によって符号が変わります。 特に、D(e1,e2,e3)=1となるようにDを規格化すると、以下のようになります。 D(e1,e2,e3)=1 D(e2,e3,e1)=1 D(e3,e1,e2)=1 D(e3,e2,e1)=−1 D(e2,e1,e3)=−1 D(e1,e3,e2)=−1 その他はすべて0。
したがって、
D(A)=a1b2c3D(e1,e2,e3)+a1b3c2D(e1,e3,e2)+a2b1c3D(e2,e1,e3)+a2b3c1D(e2,e3,e1)+a3b1c2D(e3,e1,e2)+a3b2c1D(e3,e2,e1) D(A)=a1b2c3−a1b3c2−a2b1c3+a2b3c1+a3b1c2−a3b2c1