線形空間であるためには、以下の2つの条件を満たす必要がある。
(i) ゼロベクトルが含まれること
(ii) ベクトル空間の任意の2つの元に対して、その和もまたベクトル空間に含まれること。
(iii) ベクトル空間の任意の元に対して、スカラー倍もまたベクトル空間に含まれること。
ゼロベクトル (0,0) がこの集合に含まれるかどうかをチェックする。x=0 のとき y=02=0なので、(0,0) は含まれる。 次に、この集合の2つの元 (x1,y1) と (x2,y2) を考える。ただし、y1=x12 および y2=x22とする。これらの和は (x1+x2,y1+y2) となる。この和が同じ集合に含まれるためには、y1+y2=(x1+x2)2 が成り立つ必要がある。 しかし、(x1+x2)2=x12+2x1x2+x22=y1+2x1x2+y2 であるため、y1+y2=(x1+x2)2 が一般には成り立たない。 例えば、x1=1、x2=1 のとき、y1=1、y2=1 である。(x1,y1)+(x2,y2)=(2,2) であるが、2=22=4 であるから、(2,2) は y=x2 上の点ではない。 また、スカラー倍も同様に考える。(x,y) が集合に含まれるとき、y=x2 が成り立つ。スカラー k をかけると (kx,ky) となる。これが集合に含まれるには ky=(kx)2 が成り立つ必要がある。つまり、ky=k2x2 であり、これは k=k2 のときのみ成り立つ。一般には ky=k2x2 なのでスカラー倍で閉じているとは限らない。 (2) x+2y−3z=0 について ゼロベクトル (0,0,0) がこの集合に含まれるかどうかをチェックする。0+2(0)−3(0)=0なので、(0,0,0) は含まれる。 次に、この集合の2つの元 (x1,y1,z1) と (x2,y2,z2) を考える。ただし、x1+2y1−3z1=0 および x2+2y2−3z2=0とする。これらの和は (x1+x2,y1+y2,z1+z2) となる。この和が同じ集合に含まれるためには、(x1+x2)+2(y1+y2)−3(z1+z2)=0 が成り立つ必要がある。 (x1+x2)+2(y1+y2)−3(z1+z2)=(x1+2y1−3z1)+(x2+2y2−3z2)=0+0=0 であるから、和も同じ集合に含まれる。 スカラー倍について、k を任意の実数とするとき、(x,y,z) が集合に含まれるならば x+2y−3z=0 が成り立つ。スカラー倍したベクトル (kx,ky,kz) について kx+2(ky)−3(kz)=k(x+2y−3z)=k(0)=0 が成り立つので、スカラー倍も同じ集合に含まれる。 したがって、この集合は線形空間である。
(3) x=c+sp について ここで、c は定数ベクトル、p は方向ベクトル、s は任意の実数である。 ゼロベクトルが含まれるかどうかをチェックする。もし、c=0 ならば、 x=spとなり、ゼロベクトルは s=0 の場合に得られる。しかし、問題文に「原点を通らない」とあるので、c=0 である。したがって、ゼロベクトルは含まれない。 また、原点を通らない直線なので、ベクトル c はゼロベクトルではない。s=0 のとき、x=c となり、これが原点ではないことを意味する。 もし、x=c+s1p および x′=c+s2p という2つのベクトルを考えると、x+x′=2c+(s1+s2)p となる。これは一般に c+sp の形にはならないので、和は同じ集合に含まれるとは限らない。 したがって、この集合は線形空間ではない。