以下の3つの空間が線形空間(ベクトル空間)かどうかを判定し、その理由を述べよ。 (1) $\mathbb{R}^2$内の放物線 $y = x^2$ (2) $\mathbb{R}^3$内で、$x + 2y - 3z = 0$を満たす点 $x = \begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}$ の作る図形 (3) $\mathbb{R}^n$内の原点を通らない直線 $x = c + sp$ ($s$ は任意の実数)

代数学線形空間ベクトル空間線形代数
2025/6/29

1. 問題の内容

以下の3つの空間が線形空間(ベクトル空間)かどうかを判定し、その理由を述べよ。
(1) R2\mathbb{R}^2内の放物線 y=x2y = x^2
(2) R3\mathbb{R}^3内で、x+2y3z=0x + 2y - 3z = 0を満たす点 x=(xyz)x = \begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix} の作る図形
(3) Rn\mathbb{R}^n内の原点を通らない直線 x=c+spx = c + spss は任意の実数)

2. 解き方の手順

線形空間であるためには、以下の2つの条件を満たす必要がある。
(i) ゼロベクトルが含まれること
(ii) ベクトル空間の任意の2つの元に対して、その和もまたベクトル空間に含まれること。
(iii) ベクトル空間の任意の元に対して、スカラー倍もまたベクトル空間に含まれること。
(1) y=x2y = x^2 について
ゼロベクトル (0,0)(0, 0) がこの集合に含まれるかどうかをチェックする。x=0x=0 のとき y=02=0y = 0^2 = 0なので、(0,0)(0, 0) は含まれる。
次に、この集合の2つの元 (x1,y1)(x_1, y_1)(x2,y2)(x_2, y_2) を考える。ただし、y1=x12y_1 = x_1^2 および y2=x22y_2 = x_2^2とする。これらの和は (x1+x2,y1+y2)(x_1 + x_2, y_1 + y_2) となる。この和が同じ集合に含まれるためには、y1+y2=(x1+x2)2y_1 + y_2 = (x_1 + x_2)^2 が成り立つ必要がある。
しかし、(x1+x2)2=x12+2x1x2+x22=y1+2x1x2+y2(x_1 + x_2)^2 = x_1^2 + 2x_1x_2 + x_2^2 = y_1 + 2x_1x_2 + y_2 であるため、y1+y2=(x1+x2)2y_1 + y_2 = (x_1 + x_2)^2 が一般には成り立たない。
例えば、x1=1x_1 = 1x2=1x_2 = 1 のとき、y1=1y_1 = 1y2=1y_2 = 1 である。(x1,y1)+(x2,y2)=(2,2)(x_1, y_1) + (x_2, y_2) = (2, 2) であるが、222=42 \neq 2^2 = 4 であるから、(2,2)(2, 2)y=x2y = x^2 上の点ではない。
また、スカラー倍も同様に考える。(x,y)(x, y) が集合に含まれるとき、y=x2y = x^2 が成り立つ。スカラー kk をかけると (kx,ky)(kx, ky) となる。これが集合に含まれるには ky=(kx)2ky = (kx)^2 が成り立つ必要がある。つまり、ky=k2x2ky = k^2 x^2 であり、これは k=k2k = k^2 のときのみ成り立つ。一般には kyk2x2ky \neq k^2 x^2 なのでスカラー倍で閉じているとは限らない。
(2) x+2y3z=0x + 2y - 3z = 0 について
ゼロベクトル (0,0,0)(0, 0, 0) がこの集合に含まれるかどうかをチェックする。0+2(0)3(0)=00 + 2(0) - 3(0) = 0なので、(0,0,0)(0, 0, 0) は含まれる。
次に、この集合の2つの元 (x1,y1,z1)(x_1, y_1, z_1)(x2,y2,z2)(x_2, y_2, z_2) を考える。ただし、x1+2y13z1=0x_1 + 2y_1 - 3z_1 = 0 および x2+2y23z2=0x_2 + 2y_2 - 3z_2 = 0とする。これらの和は (x1+x2,y1+y2,z1+z2)(x_1 + x_2, y_1 + y_2, z_1 + z_2) となる。この和が同じ集合に含まれるためには、(x1+x2)+2(y1+y2)3(z1+z2)=0(x_1 + x_2) + 2(y_1 + y_2) - 3(z_1 + z_2) = 0 が成り立つ必要がある。
(x1+x2)+2(y1+y2)3(z1+z2)=(x1+2y13z1)+(x2+2y23z2)=0+0=0(x_1 + x_2) + 2(y_1 + y_2) - 3(z_1 + z_2) = (x_1 + 2y_1 - 3z_1) + (x_2 + 2y_2 - 3z_2) = 0 + 0 = 0 であるから、和も同じ集合に含まれる。
スカラー倍について、kk を任意の実数とするとき、(x,y,z)(x, y, z) が集合に含まれるならば x+2y3z=0x + 2y - 3z = 0 が成り立つ。スカラー倍したベクトル (kx,ky,kz)(kx, ky, kz) について kx+2(ky)3(kz)=k(x+2y3z)=k(0)=0kx + 2(ky) - 3(kz) = k(x + 2y - 3z) = k(0) = 0 が成り立つので、スカラー倍も同じ集合に含まれる。
したがって、この集合は線形空間である。
(3) x=c+spx = c + sp について
ここで、cc は定数ベクトル、pp は方向ベクトル、ss は任意の実数である。
ゼロベクトルが含まれるかどうかをチェックする。もし、c=0c = 0 ならば、 x=spx = spとなり、ゼロベクトルは s=0s=0 の場合に得られる。しかし、問題文に「原点を通らない」とあるので、c0c \neq 0 である。したがって、ゼロベクトルは含まれない。
また、原点を通らない直線なので、ベクトル cc はゼロベクトルではない。s=0s = 0 のとき、x=cx = c となり、これが原点ではないことを意味する。
もし、x=c+s1px = c + s_1 p および x=c+s2px' = c + s_2 p という2つのベクトルを考えると、x+x=2c+(s1+s2)px + x' = 2c + (s_1 + s_2)p となる。これは一般に c+spc + sp の形にはならないので、和は同じ集合に含まれるとは限らない。
したがって、この集合は線形空間ではない。

3. 最終的な答え

(1) 線形空間ではない。
(2) 線形空間である。
(3) 線形空間ではない。

「代数学」の関連問題

$x = \frac{1}{\sqrt{5} + \sqrt{3}}$ , $y = \frac{1}{\sqrt{5} - \sqrt{3}}$ のとき、$x^2 + y^2$ の値を求める。

式の計算有理化平方根
2025/6/29

2次関数 $y = x^2 - 3x + 5$ のグラフとx軸との位置関係(交わる、接する、共有点を持たない)を答える問題です。

二次関数グラフ判別式x軸との位置関係
2025/6/29

画像にある数学の問題は、以下の3つのカテゴリに分かれています。 * **[6]**:与えられた二次関数を平方完成の形($y = a(x-p)^2 + q$)に変形し、空欄を埋める問題です。 * ...

二次関数平方完成グラフ平行移動頂点
2025/6/29

2次関数 $y = -x^2 + 2x + 8$ のグラフとx軸との共有点の座標を求める問題です。共有点のy座標は0なので、$y=0$ となるxの値を求めればよい。

二次関数二次方程式グラフ共有点因数分解
2025/6/29

2次方程式 $x^2 + 2x + 4 = 0$ の2つの解を $\alpha, \beta$ とするとき、$\alpha^3 + \beta^3$ の値を求める。

二次方程式解と係数の関係式の展開解の性質
2025/6/29

与えられた2次関数(ただし、具体的な関数は不明)のグラフが $x$ 軸に接するとき、定数 $m$ の値を求め、そのときの接点の座標を求める問題です。2次関数が不明なため、一般的な解法を提示します。2次...

二次関数判別式二次方程式グラフ接点因数分解
2025/6/29

2次関数 $y = -x^2 + 2x + 8$ のグラフと x 軸の共有点の座標を求める問題です。共有点の座標は $(エ, 0)$ と $(カ, 0)$ の形式で与えられています。

二次関数二次方程式グラフ因数分解x軸との共有点
2025/6/29

与えられた2次式 $x^2 + x - 6$ を因数分解し、$(x + \text{ウ})(x - \text{エ})$ の形にする問題です。ここで、ウ と エ に当てはまる数字を求めます。

因数分解二次式多項式
2025/6/29

2次方程式 $2x^2 + 5x + 1 = 0$ の実数解の個数を求める問題です。

二次方程式判別式実数解
2025/6/29

与えられた2次式 $x^2 - 2x + 1$ を因数分解し、$(x - \text{キ})^2$ の形にする問題です。「キ」に当てはまる数字を求めます。

因数分解二次式平方完成
2025/6/29