集合$A$と$B$について、以下の2つの命題を証明する。 (1) $A$から$B$への単射が存在するための必要十分条件は、$B$から$A$への全射が存在すること。 (2) $A$から$B$への単射$f$が存在し、かつ$A$から$B$への全射$g$が存在すれば、$A$から$B$への全単射が存在する、つまり$A$と$B$は対等であること。ただし、$f$と$g$は同じ写像とは限らない。

離散数学集合論写像単射全射全単射ベルンシュタインの定理
2025/7/8

1. 問題の内容

集合AABBについて、以下の2つの命題を証明する。
(1) AAからBBへの単射が存在するための必要十分条件は、BBからAAへの全射が存在すること。
(2) AAからBBへの単射ffが存在し、かつAAからBBへの全射ggが存在すれば、AAからBBへの全単射が存在する、つまりAABBは対等であること。ただし、ffggは同じ写像とは限らない。

2. 解き方の手順

(1)
* AAからBBへの単射が存在すると仮定する。単射をf:ABf: A \rightarrow Bとする。このとき、関数g:BAg: B \rightarrow Aを以下のように定義する。
bBb \in Bに対し、
* bIm(f)b \in \text{Im}(f)のとき、g(b)=ag(b) = a (f(a)=bf(a) = bとなるaAa \in A)
* bIm(f)b \notin \text{Im}(f)のとき、g(b)=a0g(b) = a_0 (任意のa0Aa_0 \in A)
ggが全射であることを示す。任意のaAa \in Aに対して、f(a)Bf(a) \in Bであり、g(f(a))=ag(f(a)) = aである。したがって、ggは全射である。
* BBからAAへの全射が存在すると仮定する。全射をg:BAg: B \rightarrow Aとする。このとき、関数f:ABf: A \rightarrow Bを以下のように定義する。
aAa \in Aに対し、f(a)=bf(a) = b (g(b)=ag(b) = aとなるbBb \in B)。ggは全射なので、g(b)=ag(b) = aとなるbbは存在する。もし複数のbbが存在するなら、その中の一つを任意に選ぶ。
ffが単射であることを示す。f(a1)=f(a2)f(a_1) = f(a_2)とすると、b1=f(a1)b_1 = f(a_1), b2=f(a2)b_2 = f(a_2)であり、b1=b2b_1 = b_2g(b1)=a1g(b_1) = a_1かつg(b2)=a2g(b_2) = a_2であり、b1=b2b_1 = b_2なので、a1=a2a_1 = a_2。したがって、ffは単射である。
(2)
* AAからBBへの単射f:ABf: A \rightarrow Bが存在し、AAからBBへの全射g:ABg: A \rightarrow Bが存在すると仮定する。
* ベルンシュタインの定理(またはシュレーダー・ベルンシュタインの定理)を使用する。この定理は、AAからBBへの単射と、BBからAAへの単射が存在すれば、AABBの間に全単射が存在することを述べている。
* f:ABf: A \rightarrow Bは単射なので、条件を満たしている。全射g:ABg: A \rightarrow Bが存在するということは、BA|B| \le |A|であり、AAからBBへの単射ffが存在するということは、AB|A| \le |B|である。
* AAからBBへの単射f:ABf: A \rightarrow Bが存在する。次に、BBからAAへの単射h:BAh: B \rightarrow Aを構成する。
AAからBBへの全射g:ABg: A \rightarrow Bが存在するので、BBからAAへの関数h:BAh: B \rightarrow Aを以下のように定める。各bBb \in Bに対して、h(b)=ah(b) = a (ここで aAa \in Ag(a)=bg(a) = b である)。ggは全射なので、g(a)=bg(a) = b となるようなaAa \in Aが存在する。もしg(a1)=g(a2)=bg(a_1) = g(a_2) = bなら、そのようなaaの中から一つを任意に選ぶ。
この方法で構成された関数h:BAh: B \rightarrow Aは一般には単射とは限らない。
* 全射g:ABg: A \to B を利用して、BBからAAへの単射を構成する。各bBb \in Bに対して、集合 g1(b)={aAg(a)=b}g^{-1}(b) = \{ a \in A \mid g(a) = b \} を考える。ggは全射なので、g1(b)g^{-1}(b) \neq \emptyset である。各bBb \in Bに対して、g1(b)g^{-1}(b)から一つ要素を選び、それをh(b)h(b)と定義する。このh:BAh: B \to A は単射となる。なぜなら、h(b1)=h(b2)h(b_1) = h(b_2) なら、g(h(b1))=b1g(h(b_1)) = b_1 かつ g(h(b2))=b2g(h(b_2)) = b_2 であるから、b1=g(h(b1))=g(h(b2))=b2b_1 = g(h(b_1)) = g(h(b_2)) = b_2 となる。
* したがって、AAからBBへの単射ffと、BBからAAへの単射hhが存在するため、ベルンシュタインの定理より、AAからBBへの全単射が存在する。つまり、AABBは対等である。

3. 最終的な答え

(1) AAからBBへの単射が存在するための必要十分条件は、BBからAAへの全射が存在する。
(2) AAからBBへの単射ffが存在し、かつAAからBBへの全射ggが存在すれば、AAからBBへの全単射が存在する。つまり、AABBは対等である。

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