$n$ を自然数とする。変数 $x$ についての、$n$ 次以下の多項式 $f(x) = a_n x^n + a_{n-1}x^{n-1} + \dots + a_1 x + a_0$ ($a_0, a_1, \dots, a_n \in \mathbb{R}$) 全体がなす $\mathbb{R}$ 上のベクトル空間を $W_n$ とする。$x$ についての導関数をとることによって、$\mathbb{R}$ 上の線形写像 $\frac{d}{dx} : W_n \to W_{n-1}$ が得られることを示せ。

1. 問題の内容

$n$ を自然数とする。変数 $x$ についての、$n$ 次以下の多項式 $f(x) = a_n x^n + a_{n-1}x^{n-1} + \dots + a_1 x + a_0$ ($a_0, a_1, \dots, a_n \in \mathbb{R}$) 全体がなす $\mathbb{R}$ 上のベクトル空間を $W_n$ とする。$x$ についての導関数をとることによって、$\mathbb{R}$ 上の線形写像 $\frac{d}{dx} : W_n \to W_{n-1}$ が得られることを示せ。

2. 解き方の手順

まず、$\frac{d}{dx}$ が写像 $W_n \to W_{n-1}$ を定めることを示す。次に、$\frac{d}{dx}$ が線形写像であることを示す。

(1) $\frac{d}{dx}$ が写像 $W_n \to W_{n-1}$ を定めること：

$f(x) \in W_n$ とする。すなわち、$f(x)$ は $n$ 次以下の多項式である。

$f(x) = a_n x^n + a_{n-1}x^{n-1} + \dots + a_1 x + a_0$ ($a_0, a_1, \dots, a_n \in \mathbb{R}$)

このとき、$f(x)$ の導関数は、

$\frac{d}{dx} f(x) = na_n x^{n-1} + (n-1)a_{n-1} x^{n-2} + \dots + a_1$

これは、$n-1$ 次以下の多項式である。よって、$\frac{d}{dx} f(x) \in W_{n-1}$ となる。

したがって、$\frac{d}{dx}$ は写像 $W_n \to W_{n-1}$ を定める。

(2) $\frac{d}{dx}$ が線形写像であること：

$f(x), g(x) \in W_n$ および $c \in \mathbb{R}$ とする。

$f(x) = \sum_{i=0}^n a_i x^i$ , $g(x) = \sum_{i=0}^n b_i x^i$

線形性を示すには、次の2つの性質を示す必要がある。

(a) $\frac{d}{dx} (f(x) + g(x)) = \frac{d}{dx} f(x) + \frac{d}{dx} g(x)$

(b) $\frac{d}{dx} (c f(x)) = c \frac{d}{dx} f(x)$

(a) $\frac{d}{dx} (f(x) + g(x)) = \frac{d}{dx} (\sum_{i=0}^n a_i x^i + \sum_{i=0}^n b_i x^i) = \frac{d}{dx} (\sum_{i=0}^n (a_i + b_i) x^i) = \sum_{i=0}^n (a_i + b_i) \frac{d}{dx} x^i = \sum_{i=0}^n (a_i + b_i) i x^{i-1}$

一方で、

$\frac{d}{dx} f(x) + \frac{d}{dx} g(x) = \frac{d}{dx} \sum_{i=0}^n a_i x^i + \frac{d}{dx} \sum_{i=0}^n b_i x^i = \sum_{i=0}^n a_i \frac{d}{dx} x^i + \sum_{i=0}^n b_i \frac{d}{dx} x^i = \sum_{i=0}^n a_i i x^{i-1} + \sum_{i=0}^n b_i i x^{i-1} = \sum_{i=0}^n (a_i + b_i) i x^{i-1}$

よって、$\frac{d}{dx} (f(x) + g(x)) = \frac{d}{dx} f(x) + \frac{d}{dx} g(x)$ が成立する。

(b) $\frac{d}{dx} (c f(x)) = \frac{d}{dx} (c \sum_{i=0}^n a_i x^i) = \frac{d}{dx} (\sum_{i=0}^n c a_i x^i) = \sum_{i=0}^n c a_i \frac{d}{dx} x^i = \sum_{i=0}^n c a_i i x^{i-1} = c \sum_{i=0}^n a_i i x^{i-1}$

一方で、

$c \frac{d}{dx} f(x) = c \frac{d}{dx} \sum_{i=0}^n a_i x^i = c \sum_{i=0}^n a_i \frac{d}{dx} x^i = c \sum_{i=0}^n a_i i x^{i-1}$

よって、$\frac{d}{dx} (c f(x)) = c \frac{d}{dx} f(x)$ が成立する。

(a), (b) より、$\frac{d}{dx}$ は線形写像である。

したがって、$\frac{d}{dx} : W_n \to W_{n-1}$ は $\mathbb{R}$ 上の線形写像である。

3. 最終的な答え

$\frac{d}{dx} : W_n \to W_{n-1}$ は $\mathbb{R}$ 上の線形写像である。