$n$次正方行列全体のなすベクトル空間において、以下の行列の集合が部分空間であるかどうかを判定し、理由を述べる。 (1) 正則行列全体 (2) 対称行列の全体 (3) 冪等行列の全体

代数学線形代数行列ベクトル空間部分空間正則行列対称行列冪等行列
2025/7/15

1. 問題の内容

nn次正方行列全体のなすベクトル空間において、以下の行列の集合が部分空間であるかどうかを判定し、理由を述べる。
(1) 正則行列全体
(2) 対称行列の全体
(3) 冪等行列の全体

2. 解き方の手順

ベクトル空間の部分空間であるためには、以下の3つの条件を満たす必要がある。
(a) ゼロベクトルを含む
(b) スカラー倍に関して閉じている
(c) 和に関して閉じている
各集合に対して、上記の条件が満たされるかどうかを調べる。
(1) 正則行列全体
* ゼロ行列は正則ではないため、(a)を満たさない。
* 正則行列AAに対して、0A=O0A = O (ゼロ行列)となり、これは正則ではないので、(b)を満たさない。
* 例えば、A=(1001)A = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}B=(1001)B = \begin{pmatrix} -1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}はどちらも正則行列だが、A+B=(0000)A + B = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}は正則ではないため、(c)を満たさない。
(2) 対称行列の全体
* ゼロ行列は対称行列であるため、(a)を満たす。
* 対称行列AAに対して、任意のスカラccに対して、cAcAも対称行列となるため、(b)を満たす。なぜなら、(cA)T=cAT=cA(cA)^T = cA^T = cAだからである。
* 対称行列AABBに対して、A+BA+Bも対称行列となるため、(c)を満たす。なぜなら、(A+B)T=AT+BT=A+B(A+B)^T = A^T + B^T = A + Bだからである。
(3) 冪等行列の全体
* ゼロ行列と単位行列は冪等行列であるため、ゼロ行列は冪等行列の集合に含まれる。従って、(a)を満たす。
* 冪等行列AAに対して、cAcAが冪等行列であるためには、(cA)2=cA(cA)^2 = cAが成り立つ必要がある。つまり、c2A2=cAc^2A^2 = cAとなるが、A2=AA^2 = Aより、c2A=cAc^2A = cAとなり、c=0c = 0またはc=1c = 1でない限りは成り立たない。したがって、(b)を満たさない。
* 例えば、A=(1000)A = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}B=(0001)B = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}はどちらも冪等行列だが、A+B=(1001)=IA + B = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} = Iも冪等行列である。しかし、A=(1000)A = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}B=(1/21/21/21/2)B = \begin{pmatrix} 1/2 & 1/2 \\ 1/2 & 1/2 \end{pmatrix}はどちらも冪等行列だが、A+B=(3/21/21/21/2)A+B = \begin{pmatrix} 3/2 & 1/2 \\ 1/2 & 1/2 \end{pmatrix}は冪等行列ではないので、(c)を満たさない。

3. 最終的な答え

(1) 正則行列全体:部分空間ではない。
(2) 対称行列の全体:部分空間である。
(3) 冪等行列の全体:部分空間ではない。

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