線形変換 $f: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^n$ について、以下の2点を証明する問題です。 (1) $f$ が単射であることと全射であることは同値である。 (2) $f$ が全単射であるとき、その逆写像 $f^{-1}: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^n$ も線形写像となる。

代数学線形変換単射全射逆写像線形写像線形代数ランク・ヌラリティ定理
2025/7/16

1. 問題の内容

線形変換 f:RnRnf: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^n について、以下の2点を証明する問題です。
(1) ff が単射であることと全射であることは同値である。
(2) ff が全単射であるとき、その逆写像 f1:RnRnf^{-1}: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^n も線形写像となる。

2. 解き方の手順

(1) ff が単射であることと全射であることの同値性
* ffRn\mathbb{R}^n から Rn\mathbb{R}^n への線形変換とします。
* ff に対応する n×nn \times n 行列を AA とします。
* ff が単射であるとは、Ax=0Ax = 0 ならば x=0x = 0 であるということです。これは、AA の核 (kernel) が {0}\{0\} のみであることを意味します。
* ff が全射であるとは、任意の yRny \in \mathbb{R}^n に対して、Ax=yAx = y となる xRnx \in \mathbb{R}^n が存在することです。これは、AA の像 (image) が Rn\mathbb{R}^n 全体であることを意味します。
* 線形代数のランク・ヌラリティ定理 (Rank-Nullity Theorem) を用います。dim(ker(A))+rank(A)=n\dim(\text{ker}(A)) + \text{rank}(A) = n です。
* ff が単射であれば、dim(ker(A))=0\dim(\text{ker}(A)) = 0 です。したがって、rank(A)=n\text{rank}(A) = n となり、AA は full rank です。これは AA の列ベクトルが線形独立であることを意味し、Ax=yAx = y が任意の yy に対して解を持つことを示します。したがって、ff は全射です。
* ff が全射であれば、rank(A)=n\text{rank}(A) = n です。したがって、dim(ker(A))=0\dim(\text{ker}(A)) = 0 となり、AA の核は {0}\{0\} のみです。これは Ax=0Ax = 0 ならば x=0x = 0 であることを意味します。したがって、ff は単射です。
* したがって、ff が単射であることと全射であることは同値です。
(2) f1f^{-1} が線形写像であること
* ff が全単射であると仮定します。したがって、f1f^{-1} が存在します。
* f1f^{-1} が線形写像であることを示すには、線形性の定義を満たすことを示します。つまり、任意の y1,y2Rny_1, y_2 \in \mathbb{R}^n と任意のスカラー cRc \in \mathbb{R} に対して、以下の2つの条件が成り立つことを示す必要があります。

1. $f^{-1}(y_1 + y_2) = f^{-1}(y_1) + f^{-1}(y_2)$

2. $f^{-1}(c y_1) = c f^{-1}(y_1)$

* x1=f1(y1)x_1 = f^{-1}(y_1) および x2=f1(y2)x_2 = f^{-1}(y_2) とします。このとき、f(x1)=y1f(x_1) = y_1 および f(x2)=y2f(x_2) = y_2 です。
* f(x1+x2)=f(x1)+f(x2)=y1+y2f(x_1 + x_2) = f(x_1) + f(x_2) = y_1 + y_2 (なぜなら、ff は線形写像だから)。したがって、f1(y1+y2)=x1+x2=f1(y1)+f1(y2)f^{-1}(y_1 + y_2) = x_1 + x_2 = f^{-1}(y_1) + f^{-1}(y_2) となり、1つ目の条件が満たされます。
* f(cx1)=cf(x1)=cy1f(c x_1) = c f(x_1) = c y_1 (なぜなら、ff は線形写像だから)。したがって、f1(cy1)=cx1=cf1(y1)f^{-1}(c y_1) = c x_1 = c f^{-1}(y_1) となり、2つ目の条件が満たされます。
* したがって、f1f^{-1} は線形写像です。

3. 最終的な答え

(1) 線形変換 f:RnRnf: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^n について、ff が単射であることと全射であることは同値である。
(2) 線形変換 f:RnRnf: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^n が全単射であるとき、その逆写像 f1:RnRnf^{-1}: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^n も線形写像となる。

「代数学」の関連問題

次の式の値を計算し、$\square + \square \sqrt{\square}$ の形式で表す問題です。 $\frac{1}{2-\sqrt{3}} + \frac{\sqrt{3}+1}{\...

式の計算分母の有理化平方根
2025/7/16

数列$\{a_n\}$の初項から第$n$項までの和を$S_n = (n+1)^2$とするとき、以下の問いに答えます。 (1) 一般項$a_n$を求めます。 (2) $\sum_{k=1}^{n} \f...

数列級数一般項和の公式
2025/7/16

$a_1, ..., a_n, b$ を $\mathbb{R}^m$ のベクトルとし、$A = [a_1, ..., a_n]$ を $m \times n$ 行列とします。このとき、以下の3つの条...

線形代数ベクトル行列一次結合次元同値性連立方程式
2025/7/16

線形写像 $f: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^m$ が与えられたとき、$\mathbb{R}^n$ のある基底 $\{a_1, \dots, a_n\}$ と $\math...

線形写像表現行列基底標準形線形代数
2025/7/16

線形写像 $f: \mathbb{R}^n \rightarrow \mathbb{R}^m$ が与えられたとき、$\mathbb{R}^n$ のある基底 $\{a_1, ..., a_n\}$ と ...

線形代数線形写像表現行列基底標準形ランク
2025/7/16

$f: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^m$ を任意の線形写像とします。このとき、$\mathbb{R}^n$ のある基底 $\{a_1, \dots, a_n\}$ と $\...

線形写像線形代数基底表現行列標準形
2025/7/16

与えられた行列の等式 $AX = B$ を満たす正方行列 $X$ を求める問題です。ここで、$A = \begin{pmatrix} 1 & -3 & 3 \\ 1 & -2 & 1 \\ -3 & ...

線形代数行列逆行列連立一次方程式
2025/7/16

線形写像 $f: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^m$ と $\mathbb{R}^m$ の基底 $\{b_1, \dots, b_m\}$ について、$f(a_i) = b_...

線形写像線形代数全射一次独立ベクトル空間
2025/7/16

与えられた関数 $y = \sqrt{x^4 + 2x^2 + 2}$ をできる限り簡単にします。

関数の簡素化平方根平方完成
2025/7/16

線形写像 $f: \mathbb{R}^3 \to \mathbb{R}^2$ が与えられています。$\mathbb{R}^3$ の基底 $\{\begin{bmatrix} 2 \\ 1 \\ 1 ...

線形写像表現行列基底変換線形代数
2025/7/16