線形写像 $f: \mathbb{R}^n \rightarrow \mathbb{R}^m$ が与えられたとき、$\mathbb{R}^n$ のある基底 $\{a_1, ..., a_n\}$ と $\mathbb{R}^m$ のある基底 $\{b_1, ..., b_m\}$ をうまく選べば、その基底に関する $f$ の表現行列が標準形になることを示す問題です。

代数学線形代数線形写像表現行列基底標準形ランク
2025/7/16

1. 問題の内容

線形写像 f:RnRmf: \mathbb{R}^n \rightarrow \mathbb{R}^m が与えられたとき、Rn\mathbb{R}^n のある基底 {a1,...,an}\{a_1, ..., a_n\}Rm\mathbb{R}^m のある基底 {b1,...,bm}\{b_1, ..., b_m\} をうまく選べば、その基底に関する ff の表現行列が標準形になることを示す問題です。

2. 解き方の手順

(ヒントに従って解きます)
(1) まず、Rn\mathbb{R}^nRm\mathbb{R}^m にそれぞれ勝手な基底 {a1,...,an}\{a'_1, ..., a'_n\}{b1,...,bm}\{b'_1, ..., b'_m\} を選びます。
(2) これらの基底に関する ff の表現行列を FF とします。
(3) FF に対して行列の標準形 (簡約形) を求めます。つまり、正則行列 PPQQ を用いて、
PFQ1=(Ir000)PFQ^{-1} = \begin{pmatrix} I_r & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}
となるようにします。ここで、IrI_rr×rr \times r の単位行列、rrFF のランクです。
(4) 上で求めた正則行列 PPQQ を使って、求める基底を作ります。
新しい Rn\mathbb{R}^n の基底 {a1,...,an}\{a_1, ..., a_n\} は、もとの基底 {a1,...,an}\{a'_1, ..., a'_n\} に対して、QQ によって変換されたものとします。すなわち、ai=j=1nQjiaja_i = \sum_{j=1}^n Q_{ji} a'_j です。
同様に、新しい Rm\mathbb{R}^m の基底 {b1,...,bm}\{b_1, ..., b_m\} は、もとの基底 {b1,...,bm}\{b'_1, ..., b'_m\} に対して、P1P^{-1} によって変換されたものとします。すなわち、bi=j=1m(P1)jibjb_i = \sum_{j=1}^m (P^{-1})_{ji} b'_j です。言い換えると、Pbi=biPb_i = b'_i ということになります。
(5) このようにして求めた新しい基底 {a1,...,an}\{a_1, ..., a_n\}{b1,...,bm}\{b_1, ..., b_m\} に関する ff の表現行列が標準形 (Ir000)\begin{pmatrix} I_r & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} となることを確認します。
実際、Rn\mathbb{R}^n の基底 {a1,...,an}\{a_1, ..., a_n\} に関して f(ai)f(a_i) を計算すると、
f(ai)=f(j=1nQjiaj)=j=1nQjif(aj)=j=1nQji(k=1mFkjbk)=k=1m(j=1nFkjQji)bkf(a_i) = f(\sum_{j=1}^n Q_{ji} a'_j) = \sum_{j=1}^n Q_{ji} f(a'_j) = \sum_{j=1}^n Q_{ji} (\sum_{k=1}^m F_{kj} b'_k) = \sum_{k=1}^m (\sum_{j=1}^n F_{kj}Q_{ji}) b'_k
さらに PFQ1=(Ir000)PFQ^{-1} = \begin{pmatrix} I_r & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} を考えると、FQ=P1(Ir000)F Q = P^{-1} \begin{pmatrix} I_r & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}なので、j=1nFkjQji=(P1)ki\sum_{j=1}^n F_{kj}Q_{ji} = (P^{-1})_{ki} (krk \le r の場合)または0 (k>rk > r の場合) となります。
すると、f(ai)=k=1m(P1)kibk=bif(a_i) = \sum_{k=1}^m (P^{-1})_{ki}b'_k = b_i (iri \le r の場合)となり、また f(ai)=0f(a_i) = 0 (i>ri > r の場合)となります。
したがって、新しい基底 {a1,...,an}\{a_1, ..., a_n\}{b1,...,bm}\{b_1, ..., b_m\} に関する ff の表現行列は、標準形 (Ir000)\begin{pmatrix} I_r & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} となります。

3. 最終的な答え

Rn\mathbb{R}^n の基底 {a1,...,an}\{a_1, ..., a_n\}Rm\mathbb{R}^m の基底 {b1,...,bm}\{b_1, ..., b_m\} を上記の手順で選べば、ff の表現行列は標準形 (Ir000)\begin{pmatrix} I_r & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} となる。

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