$n$次元数ベクトル空間$\mathbb{R}^n$内の$n$個のベクトル$\mathbf{a}_1, \dots, \mathbf{a}_n$に対して、次の6つの命題が互いに同値であることを証明する問題を、$n=2$の場合について証明せよ。 1. 列$(\mathbf{a}_1, \dots, \mathbf{a}_n)$は$\mathbb{R}^n$の基底である。

代数学線形代数ベクトル空間基底一次独立正則行列ランク行列式
2025/7/18

1. 問題の内容

nn次元数ベクトル空間Rn\mathbb{R}^n内のnn個のベクトルa1,,an\mathbf{a}_1, \dots, \mathbf{a}_nに対して、次の6つの命題が互いに同値であることを証明する問題を、n=2n=2の場合について証明せよ。

1. 列$(\mathbf{a}_1, \dots, \mathbf{a}_n)$は$\mathbb{R}^n$の基底である。

2. $\mathbf{a}_1, \dots, \mathbf{a}_n$は一次独立である。

3. $\text{span}\{\mathbf{a}_1, \dots, \mathbf{a}_n\} = \mathbb{R}^n$である。

4. $A = [\mathbf{a}_1, \dots, \mathbf{a}_n]$は正則行列である。すなわち、$AB = BA = I$を満たす行列$B$が存在する。

5. $\text{rank}[\mathbf{a}_1, \dots, \mathbf{a}_n] = n$である。

6. $\det[\mathbf{a}_1, \dots, \mathbf{a}_n] \neq 0$である。

2. 解き方の手順

n=2n=2の場合について、上記の6つの命題が互いに同値であることを示す。すなわち、任意の2つの命題ppqqについて、pqp \Rightarrow qまたはqpq \Rightarrow pを示せば良い。今回は、12345611 \Rightarrow 2 \Rightarrow 3 \Rightarrow 4 \Rightarrow 5 \Rightarrow 6 \Rightarrow 1を示す。
(1) 121 \Rightarrow 2:
(a1,a2)(\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2)R2\mathbb{R}^2の基底であると仮定する。
このとき、R2\mathbb{R}^2の任意のベクトルはa1\mathbf{a}_1a2\mathbf{a}_2の線形結合で一意的に表せる。
c1a1+c2a2=0c_1 \mathbf{a}_1 + c_2 \mathbf{a}_2 = \mathbf{0}と仮定すると、c1=c2=0c_1 = c_2 = 0となることを示せばよい。
もしc1c_1またはc2c_2が0でない場合、0\mathbf{0}a1\mathbf{a}_1a2\mathbf{a}_2の線形結合で一意的に表せないため、矛盾する。
したがって、c1=c2=0c_1 = c_2 = 0となり、a1\mathbf{a}_1a2\mathbf{a}_2は一次独立である。
(2) 232 \Rightarrow 3:
a1,a2\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2が一次独立であると仮定する。
span{a1,a2}=R2\text{span}\{\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2\} = \mathbb{R}^2を示す。
a1,a2\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2は一次独立なので、a10\mathbf{a}_1 \neq \mathbf{0}かつa2\mathbf{a}_2a1\mathbf{a}_1のスカラー倍ではない。
R2\mathbb{R}^2の任意のベクトルv\mathbf{v}を考える。
a1\mathbf{a}_1a2\mathbf{a}_2の線形結合でv\mathbf{v}を表せることを示す。
すなわち、c1a1+c2a2=vc_1 \mathbf{a}_1 + c_2 \mathbf{a}_2 = \mathbf{v}を満たすc1,c2c_1, c_2が存在することを示す。
a1=[a11a21]\mathbf{a}_1 = \begin{bmatrix} a_{11} \\ a_{21} \end{bmatrix}, a2=[a12a22]\mathbf{a}_2 = \begin{bmatrix} a_{12} \\ a_{22} \end{bmatrix}, v=[v1v2]\mathbf{v} = \begin{bmatrix} v_1 \\ v_2 \end{bmatrix}とすると、
a11c1+a12c2=v1a_{11} c_1 + a_{12} c_2 = v_1
a21c1+a22c2=v2a_{21} c_1 + a_{22} c_2 = v_2
という連立一次方程式を得る。この方程式の解が存在するためには、行列[a11a12a21a22]\begin{bmatrix} a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} \end{bmatrix}の行列式が0でないことが必要十分条件である。
a11a22a12a210a_{11} a_{22} - a_{12} a_{21} \neq 0を示す。
もしa11a22a12a21=0a_{11} a_{22} - a_{12} a_{21} = 0とすると、a11a22=a12a21a_{11} a_{22} = a_{12} a_{21}となる。
このとき、a1\mathbf{a}_1a2\mathbf{a}_2は一次従属となり、a1,a2\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2が一次独立であるという仮定に矛盾する。
したがって、a11a22a12a210a_{11} a_{22} - a_{12} a_{21} \neq 0であり、span{a1,a2}=R2\text{span}\{\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2\} = \mathbb{R}^2である。
(3) 343 \Rightarrow 4:
span{a1,a2}=R2\text{span}\{\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2\} = \mathbb{R}^2であると仮定する。
このとき、任意のvR2\mathbf{v} \in \mathbb{R}^2に対して、c1a1+c2a2=vc_1 \mathbf{a}_1 + c_2 \mathbf{a}_2 = \mathbf{v}を満たすc1,c2c_1, c_2が存在する。
行列A=[a1,a2]A = [\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2]を考えると、Ac=vA \mathbf{c} = \mathbf{v}となる。
ここで、c=[c1c2]\mathbf{c} = \begin{bmatrix} c_1 \\ c_2 \end{bmatrix}である。
したがって、AAR2\mathbb{R}^2からR2\mathbb{R}^2への全射である。
AAは正方行列であるため、全射であることは正則行列であることと同値である。
したがって、AAは正則行列である。
(4) 454 \Rightarrow 5:
AAが正則行列であると仮定する。
正則行列のランクはnnであるため、rank(A)=2=n\text{rank}(A) = 2 = nである。
(5) 565 \Rightarrow 6:
rank(A)=2\text{rank}(A) = 2であると仮定する。
行列AAのランクが2であるとき、det(A)0\det(A) \neq 0である。
(6) 616 \Rightarrow 1:
det(A)0\det(A) \neq 0であると仮定する。
このとき、A=[a1,a2]A = [\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2]は正則行列であり、a1,a2\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2は一次独立である。
R2\mathbb{R}^2の基底は2つの一次独立なベクトルからなるため、a1,a2\mathbf{a}_1, \mathbf{a}_2R2\mathbb{R}^2の基底である。

3. 最終的な答え

n=2n=2の場合、上記の6つの命題は互いに同値である。

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