この問題は、確率・統計に関する複数の問題から構成されています。 * 問題1:正規分布に従う確率変数X, Yについて、Xが50以下である確率とX+Yが80以上である確率を求めます。 * 問題2:サイコロを720回振ったとき、1の目が150回以上出る確率を、二項分布の正規近似を使って求めます(半整数補正を使用)。 * 問題3:母集団分布が与えられたとき、パラメータ$\theta$の最尤推定量$\hat{\theta}$を求め、その性質(不偏性、最小分散性)を証明します。 * 問題4:正規分布に従う母集団からの標本に基づいて、パラメータ$\theta$の推定量$\hat{\theta}$を定義し、その性質(最尤性、不偏性)を証明します。

確率論・統計学確率分布正規分布二項分布最尤推定量不偏推定量クラーメル・ラオの不等式
2025/7/22

1. 問題の内容

この問題は、確率・統計に関する複数の問題から構成されています。
* 問題1:正規分布に従う確率変数X, Yについて、Xが50以下である確率とX+Yが80以上である確率を求めます。
* 問題2:サイコロを720回振ったとき、1の目が150回以上出る確率を、二項分布の正規近似を使って求めます(半整数補正を使用)。
* 問題3:母集団分布が与えられたとき、パラメータθ\thetaの最尤推定量θ^\hat{\theta}を求め、その性質(不偏性、最小分散性)を証明します。
* 問題4:正規分布に従う母集団からの標本に基づいて、パラメータθ\thetaの推定量θ^\hat{\theta}を定義し、その性質(最尤性、不偏性)を証明します。

2. 解き方の手順

問題1
(1) XN(60,82)X \sim N(60, 8^2)なので、Z=X608Z = \frac{X - 60}{8}は標準正規分布N(0,1)N(0, 1)に従います。
P(X50)=P(Z50608)=P(Z1.25)P(X \le 50) = P(Z \le \frac{50 - 60}{8}) = P(Z \le -1.25)。標準正規分布表または計算ツールを用いて、P(Z1.25)P(Z \le -1.25)の値を求めます。
(2) XN(60,82)X \sim N(60, 8^2)YN(40,62)Y \sim N(40, 6^2)であり、XXYYは独立なので、X+YN(60+40,82+62)=N(100,100)=N(100,102)X+Y \sim N(60+40, 8^2+6^2) = N(100, 100) = N(100, 10^2)となります。
Z=X+Y10010Z = \frac{X+Y - 100}{10}は標準正規分布N(0,1)N(0, 1)に従います。
P(X+Y80)=P(Z8010010)=P(Z2)P(X+Y \ge 80) = P(Z \ge \frac{80 - 100}{10}) = P(Z \ge -2)。標準正規分布表または計算ツールを用いて、P(Z2)=1P(Z2)P(Z \ge -2) = 1 - P(Z \le -2)の値を求めます。
問題2
n=720n = 720回の試行で、1の目が出る確率はp=16p = \frac{1}{6}です。
1の目が150回以上出る確率を求めます。
期待値μ=np=720×16=120\mu = np = 720 \times \frac{1}{6} = 120、分散σ2=np(1p)=720×16×56=100\sigma^2 = np(1-p) = 720 \times \frac{1}{6} \times \frac{5}{6} = 100、標準偏差σ=10\sigma = 10です。
二項分布の正規近似を用いると、半整数補正を考慮して、P(X150)P(Y149.5)P(X \ge 150) \approx P(Y \ge 149.5)YN(120,102)Y \sim N(120, 10^2)となります。
Z=Y12010Z = \frac{Y - 120}{10}は標準正規分布N(0,1)N(0, 1)に従います。
P(Y149.5)=P(Z149.512010)=P(Z2.95)P(Y \ge 149.5) = P(Z \ge \frac{149.5 - 120}{10}) = P(Z \ge 2.95)。標準正規分布表または計算ツールを用いて、P(Z2.95)=1P(Z2.95)P(Z \ge 2.95) = 1 - P(Z \le 2.95)の値を求めます。
問題3
(1) 母集団分布p(x)=θx(1θ)1xp(x) = \theta^x(1-\theta)^{1-x}に従う確率変数XXの期待値と分散を示します。
E(X)=x=01xp(x)=0(1θ)+1θ=θE(X) = \sum_{x=0}^{1} x p(x) = 0 \cdot (1-\theta) + 1 \cdot \theta = \theta
E(X2)=x=01x2p(x)=02(1θ)+12θ=θE(X^2) = \sum_{x=0}^{1} x^2 p(x) = 0^2 \cdot (1-\theta) + 1^2 \cdot \theta = \theta
V(X)=E(X2)[E(X)]2=θθ2=θ(1θ)V(X) = E(X^2) - [E(X)]^2 = \theta - \theta^2 = \theta(1-\theta)
(2) 最尤推定量θ^\hat{\theta}を求めます。
尤度関数L(θ)=i=1np(xi)=i=1nθxi(1θ)1xi=θxi(1θ)nxiL(\theta) = \prod_{i=1}^{n} p(x_i) = \prod_{i=1}^{n} \theta^{x_i}(1-\theta)^{1-x_i} = \theta^{\sum x_i}(1-\theta)^{n - \sum x_i}
対数尤度関数logL(θ)=(i=1nxi)logθ+(ni=1nxi)log(1θ)\log L(\theta) = (\sum_{i=1}^{n} x_i) \log \theta + (n - \sum_{i=1}^{n} x_i) \log(1-\theta)
logL(θ)θ=xiθnxi1θ=0\frac{\partial \log L(\theta)}{\partial \theta} = \frac{\sum x_i}{\theta} - \frac{n - \sum x_i}{1-\theta} = 0
xi(1θ)=(nxi)θ\sum x_i (1-\theta) = (n - \sum x_i) \theta
xiθxi=nθθxi\sum x_i - \theta \sum x_i = n\theta - \theta \sum x_i
xi=nθ\sum x_i = n\theta
θ=1ni=1nxi\theta = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i
したがって、θ^=1ni=1nXi\hat{\theta} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_iです。
(3) θ^\hat{\theta}θ\thetaの不偏推定量であることを示します。
E[θ^]=E[1ni=1nXi]=1ni=1nE[Xi]=1ni=1nθ=1n(nθ)=θE[\hat{\theta}] = E[\frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_i] = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} E[X_i] = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} \theta = \frac{1}{n} (n\theta) = \theta
したがって、θ^\hat{\theta}θ\thetaの不偏推定量です。
(4) θ^\hat{\theta}θ\thetaの不偏最小分散推定量であることをクラーメル・ラオの不等式を用いて証明します。
まず、logp0(x)=xlogθ+(1x)log(1θ)log p_0(x) = x log\theta + (1-x)log(1-\theta)
logp0(x)θ=xθ1x1θ=x(1θ)θ(1x)θ(1θ)=xθθ(1θ)\frac{\partial log p_0(x)}{\partial \theta} = \frac{x}{\theta} - \frac{1-x}{1-\theta} = \frac{x(1-\theta)-\theta(1-x)}{\theta(1-\theta)} = \frac{x-\theta}{\theta(1-\theta)}
E[logp0(X)θ]2=E[(Xθ)2θ2(1θ)2]=1θ2(1θ)2E[(Xθ)2]=V(X)θ2(1θ)2=θ(1θ)θ2(1θ)2=1θ(1θ)E \left[\frac{\partial log p_0(X)}{\partial \theta}\right]^2 = E\left[ \frac{(X-\theta)^2}{\theta^2(1-\theta)^2} \right] = \frac{1}{\theta^2(1-\theta)^2} E[(X-\theta)^2] = \frac{V(X)}{\theta^2(1-\theta)^2} = \frac{\theta(1-\theta)}{\theta^2(1-\theta)^2} = \frac{1}{\theta(1-\theta)}
クラーメル・ラオの不等式より
V(θ^)1nE[logp0(X)θ]2=1n1θ(1θ)=θ(1θ)nV(\hat{\theta}) \geq \frac{1}{nE \left[\frac{\partial log p_0(X)}{\partial \theta}\right]^2} = \frac{1}{n \frac{1}{\theta(1-\theta)}} = \frac{\theta(1-\theta)}{n}
θ^=1ni=1nXi\hat{\theta} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_iなので、
V(θ^)=V(1ni=1nXi)=1n2i=1nV(Xi)=1n2i=1nθ(1θ)=nθ(1θ)n2=θ(1θ)nV(\hat{\theta}) = V(\frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_i) = \frac{1}{n^2} \sum_{i=1}^{n} V(X_i) = \frac{1}{n^2} \sum_{i=1}^{n} \theta(1-\theta) = \frac{n\theta(1-\theta)}{n^2} = \frac{\theta(1-\theta)}{n}
したがって、V(θ^)=θ(1θ)nV(\hat{\theta}) = \frac{\theta(1-\theta)}{n}であり、クラーメル・ラオの下限を達成しているため、θ^\hat{\theta}θ\thetaの不偏最小分散推定量です。
問題4
(1) 最尤推定量θ^\hat{\theta}を求めます。
尤度関数L(θ)=i=1np(xi)=i=1n12πθe(xiμ)22θ=(2πθ)n2e12θi=1n(xiμ)2L(\theta) = \prod_{i=1}^{n} p(x_i) = \prod_{i=1}^{n} \frac{1}{\sqrt{2\pi\theta}} e^{-\frac{(x_i-\mu)^2}{2\theta}} = (2\pi\theta)^{-\frac{n}{2}} e^{-\frac{1}{2\theta} \sum_{i=1}^{n} (x_i-\mu)^2}
対数尤度関数logL(θ)=n2log(2πθ)12θi=1n(xiμ)2\log L(\theta) = -\frac{n}{2} \log(2\pi\theta) - \frac{1}{2\theta} \sum_{i=1}^{n} (x_i-\mu)^2
logL(θ)θ=n21θ+12θ2i=1n(xiμ)2=0\frac{\partial \log L(\theta)}{\partial \theta} = -\frac{n}{2} \frac{1}{\theta} + \frac{1}{2\theta^2} \sum_{i=1}^{n} (x_i-\mu)^2 = 0
n2θ=12θ2i=1n(xiμ)2\frac{n}{2\theta} = \frac{1}{2\theta^2} \sum_{i=1}^{n} (x_i-\mu)^2
nθ=i=1n(xiμ)2n\theta = \sum_{i=1}^{n} (x_i-\mu)^2
θ=1ni=1n(xiμ)2\theta = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (x_i-\mu)^2
したがって、θ^=1ni=1n(Xiμ)2\hat{\theta} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (X_i-\mu)^2です。
(2) θ^\hat{\theta}θ\thetaの不偏推定量であることを示します。
E[θ^]=E[1ni=1n(Xiμ)2]=1ni=1nE[(Xiμ)2]E[\hat{\theta}] = E[\frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (X_i-\mu)^2] = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} E[(X_i-\mu)^2]
XiN(μ,θ)X_i \sim N(\mu, \theta)なので、V(Xi)=E[(Xiμ)2]=θV(X_i) = E[(X_i-\mu)^2] = \theta
E[θ^]=1ni=1nθ=1n(nθ)=θE[\hat{\theta}] = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} \theta = \frac{1}{n} (n\theta) = \theta
したがって、θ^\hat{\theta}θ\thetaの不偏推定量です。

3. 最終的な答え

問題1
(1) P(X50)=P(Z1.25)0.1056P(X \le 50) = P(Z \le -1.25) \approx 0.1056
(2) P(X+Y80)=P(Z2)0.9772P(X+Y \ge 80) = P(Z \ge -2) \approx 0.9772
問題2
P(X150)P(Z2.95)0.0016P(X \ge 150) \approx P(Z \ge 2.95) \approx 0.0016
問題3
(1) E(X)=θE(X) = \theta, V(X)=θ(1θ)V(X) = \theta(1-\theta)
(2) θ^=1ni=1nXi\hat{\theta} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_i
(3) θ^\hat{\theta}θ\thetaの不偏推定量
(4) θ^\hat{\theta}θ\thetaの不偏最小分散推定量
問題4
(1) θ^=1ni=1n(Xiμ)2\hat{\theta} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (X_i-\mu)^2
(2) θ^\hat{\theta}θ\thetaの不偏推定量

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