## 1. 問題の内容

確率論・統計学モーメント母関数二項分布中心極限定理確率変数マクローリン展開標準正規分布
2025/7/22
##

1. 問題の内容

確率変数 XX が二項分布 B(n,p)B(n, p) に従うとき、そのモーメント母関数 MX(t)M_X(t) が与えられています。
標準化された確率変数 Y=Xnpnp(1p)Y = \frac{X - np}{\sqrt{np(1-p)}} について、以下の問いに答えます。

1. $Y$ のモーメント母関数 $M_Y(t)$ を $M_X(t)$ を用いて表す。

2. 二項分布において、$n$ が大きく $p$ が小さいとき、$np = \lambda$ を保ったまま極限をとると、二項分布がポアソン分布に近似できることを利用し、$M_X(t)$ の極限を求める。

3. 標準正規分布 $N(0, 1)$ のモーメント母関数が $e^{t^2/2}$ であることを利用し、$Y$ のモーメント母関数 $M_Y(t)$ の対数 $\log M_Y(t)$ を $t=0$ 周りでマクローリン展開し、$t^2$ の項まで求める。

4. 上記

3. の結果の極限 $n \to \infty$ をとると、$\log M_Y(t)$ が何に収束するかを求める。

5. 中心極限定理が何を示すかを、モーメント母関数の収束という観点から考察する。

##

2. 解き方の手順

1. 確率変数の線形変換の性質を利用して、$M_Y(t)$ を $M_X(t)$ で表します。

MY(t)=E[etY]=E[etXnpnp(1p)]=E[etnp(1p)Xtnpnp(1p)]=etnpnp(1p)E[etnp(1p)X]=etnpnp(1p)MX(tnp(1p))M_Y(t) = E[e^{tY}] = E[e^{t \frac{X - np}{\sqrt{np(1-p)}}}] = E[e^{\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}}X - \frac{tnp}{\sqrt{np(1-p)}}}] = e^{-\frac{tnp}{\sqrt{np(1-p)}}} E[e^{\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}}X}] = e^{-\frac{tnp}{\sqrt{np(1-p)}}} M_X(\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}})
したがって、MY(t)=etnpnp(1p)MX(tnp(1p))M_Y(t) = e^{-\frac{tnp}{\sqrt{np(1-p)}}} M_X(\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}})

2. $n$ が大きく $p$ が小さいとき、$np = \lambda$ を保ったまま極限をとると、二項分布はポアソン分布に近似できます。このとき、$M_X(t)$ の極限を求めます。

MX(t)=(pet+(1p))n=(1+p(et1))nM_X(t) = (pe^t + (1-p))^n = (1 + p(e^t - 1))^n
np=λnp = \lambda なので、p=λnp = \frac{\lambda}{n}
MX(t)=(1+λn(et1))nM_X(t) = (1 + \frac{\lambda}{n}(e^t - 1))^n
nn \to \infty のとき、MX(t)eλ(et1)M_X(t) \to e^{\lambda(e^t - 1)}

3. $\log M_Y(t)$ を $t=0$ 周りでマクローリン展開し、$t^2$ の項まで求めます。

MY(t)=etnpnp(1p)MX(tnp(1p))=etnpnp(1p)(petnp(1p)+(1p))nM_Y(t) = e^{-\frac{tnp}{\sqrt{np(1-p)}}} M_X(\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}}) = e^{-\frac{tnp}{\sqrt{np(1-p)}}} (p e^{\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}}} + (1-p))^n
logMY(t)=tnpnp(1p)+nlog(petnp(1p)+(1p))\log M_Y(t) = -\frac{tnp}{\sqrt{np(1-p)}} + n \log (p e^{\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}}} + (1-p))
logMY(t)=tnp1p+nlog(1+p(etnp(1p)1))\log M_Y(t) = -\frac{t \sqrt{np}}{\sqrt{1-p}} + n \log (1 + p(e^{\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}}} -1))
ex1+x+x22e^x \approx 1 + x + \frac{x^2}{2} を利用すると、
etnp(1p)1tnp(1p)+t22np(1p)e^{\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}}} - 1 \approx \frac{t}{\sqrt{np(1-p)}} + \frac{t^2}{2np(1-p)}
logMY(t)tnp1p+nlog(1+p(tnp(1p)+t22np(1p)))\log M_Y(t) \approx -\frac{t \sqrt{np}}{\sqrt{1-p}} + n \log(1 + p(\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}} + \frac{t^2}{2np(1-p)}))
log(1+x)xx22\log(1+x) \approx x - \frac{x^2}{2} を利用すると、
logMY(t)tnp1p+n[p(tnp(1p)+t22np(1p))12p2(tnp(1p)+t22np(1p))2]\log M_Y(t) \approx -\frac{t \sqrt{np}}{\sqrt{1-p}} + n[p(\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}} + \frac{t^2}{2np(1-p)}) - \frac{1}{2}p^2(\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}} + \frac{t^2}{2np(1-p)})^2]
logMY(t)tnp1p+tnp1p+t22(1p)12np2(np(1p))t2+O(t3)=t22(1p)pt22(1p)=t22+O(t3)\log M_Y(t) \approx -\frac{t \sqrt{np}}{\sqrt{1-p}} + \frac{t \sqrt{np}}{\sqrt{1-p}} + \frac{t^2}{2(1-p)} - \frac{1}{2} \frac{np^2}{(np(1-p))} t^2 + O(t^3) = \frac{t^2}{2(1-p)} - \frac{p t^2}{2(1-p)} = \frac{t^2}{2} + O(t^3)

4. $n \to \infty$ のとき、$\log M_Y(t)$ が何に収束するかを求めます。

上記の結果から、nn \to \infty では、p0p \to 0 なので、logMY(t)t22\log M_Y(t) \to \frac{t^2}{2}

5. 中心極限定理が何を示すかを、モーメント母関数の収束という観点から考察します。

中心極限定理は、nn が大きいとき、独立な確率変数の和を適切に標準化すると、その分布が標準正規分布に近づくことを示しています。モーメント母関数の収束という観点から見ると、YY のモーメント母関数が標準正規分布のモーメント母関数 et2/2e^{t^2/2} に収束することは、中心極限定理を示唆していると言えます。
##

3. 最終的な答え

ア: MY(t)=etnpnp(1p)MX(tnp(1p))M_Y(t) = e^{-\frac{tnp}{\sqrt{np(1-p)}}} M_X(\frac{t}{\sqrt{np(1-p)}})
イ: eλ(et1)e^{\lambda(e^t - 1)}
ウ: t22\frac{t^2}{2}
エ: t22\frac{t^2}{2}
オ: 成立する

「確率論・統計学」の関連問題

与えられた標本データ(3.5, 3.4, 3.8, 3.6, 3.2)を用いて、以下の問いに答えます。 (1) 標本平均$\bar{X}$と標本分散$s^2$を求めます。 (2) 母平均と母分散の不偏...

標本平均標本分散不偏推定量信頼区間正規分布t分布F分布
2025/7/23

(1) 白玉4個と黒玉5個が入った袋から、玉を1個取り出し、元に戻さずに、続いてもう1個を取り出すとき、2個とも白玉である確率を求める。 (2) 1から9までの番号が書かれた9枚のカードから、1枚を取...

確率確率分布条件付き確率カード
2025/7/23

(1) 1枚の硬貨を5回投げたとき、表がちょうど3回出る確率を求めます。 (2) 白玉8個、赤玉4個が入っている袋から玉を1個取り出し、色を調べて元に戻すことを5回繰り返すとき、赤玉が4回以上出る確率...

確率二項分布組み合わせ
2025/7/23

(1) 袋Aには赤玉3個と白玉5個、袋Bには赤玉4個と白玉4個が入っています。それぞれの袋から1個ずつ玉を取り出すとき、両方とも白玉が出る確率を求めます。 (2) A, Bの2人が検定試験に合格する確...

確率事象確率の積排反事象
2025/7/23

(1)1から100までの番号が書かれた100枚の札から1枚引くとき、引いた札の番号が6の倍数でない確率を求めます。 (2)3個のサイコロを同時に投げるとき、少なくとも1個は奇数の目が出る確率を求めます...

確率余事象倍数サイコロ
2025/7/23

(1) 1等、2等、3等が当たる確率がそれぞれ $\frac{1}{15}, \frac{4}{15}, \frac{9}{15}$ であるくじがある。このくじを1本引くとき、1等または3等が当たる確...

確率排反事象確率の加法定理倍数
2025/7/23

(1) 白玉4個、赤玉8個が入った袋から2個同時に取り出すとき、2個とも白玉である確率を求める。 (2) 白玉3個、赤玉7個が入った袋から3個同時に取り出すとき、白玉1個、赤玉2個である確率を求める。...

確率組み合わせ順列事象
2025/7/23

確率の問題です。 (1) 1個のサイコロを投げたとき、偶数の目が出る確率を求めます。 (2) 2個のサイコロを同時に投げたとき、目の和が7になる確率を求めます。 (3) 袋の中に白玉5個と赤玉8個が入...

確率サイコロ倍数
2025/7/23

以下の4つの組み合わせの問題を解きます。 (1) 男子4人、女子6人の中から、5人の委員を選ぶとき、男子2人、女子3人を選ぶ方法は何通りあるか。 (2) 男子9人、女子3人の中から、4人の代表を選ぶと...

組み合わせ場合の数順列
2025/7/23

2個のサイコロを同時に投げたとき、次の確率を求めます。 (1) 目の和が7になる確率 (2) 2個とも偶数の目が出る確率

確率サイコロ場合の数確率計算
2025/7/23