濃度のわからない食塩水があり、その凝固点が-0.80℃である。水の凝固点降下定数は $K_f = 1.86 \text{ K kg mol}^{-1}$ である。以下の問いに答える。 (1) 溶液中のNaClの質量モル濃度を求めよ。 (2) 溶液中のNaClのモル分率を求めよ。 (3) 20℃における溶液の溶媒(水)の化学ポテンシャルが、純粋な水と比較してどれだけ変化しているか求めよ。 (4) 上記水溶液において、20℃の場合と、凝固点よりも低い温度の場合における、ギブズエネルギーの大小について、エンタルピーとエントロピーを用いて説明せよ。
2025/7/26
1. 問題の内容
濃度のわからない食塩水があり、その凝固点が-0.80℃である。水の凝固点降下定数は である。以下の問いに答える。
(1) 溶液中のNaClの質量モル濃度を求めよ。
(2) 溶液中のNaClのモル分率を求めよ。
(3) 20℃における溶液の溶媒(水)の化学ポテンシャルが、純粋な水と比較してどれだけ変化しているか求めよ。
(4) 上記水溶液において、20℃の場合と、凝固点よりも低い温度の場合における、ギブズエネルギーの大小について、エンタルピーとエントロピーを用いて説明せよ。
2. 解き方の手順
(1) 凝固点降下を利用して質量モル濃度を求める。
凝固点降下度 は、 で表される。ここで、は凝固点降下定数、は質量モル濃度、はファンとホッフ因子である。
NaClは水中で完全に電離すると仮定すると、となる。
(2) NaClのモル分率を求める。
質量モル濃度が であるとは、水 (つまり ) 中に の NaCl が溶けていることを意味する。
水の分子量は なので、 の水は である。
NaCl のモル分率は、
(3) 化学ポテンシャルの変化を求める。
溶媒の化学ポテンシャルの変化 は、希薄溶液の場合、 で近似できる。ここで、 は気体定数 ()、 は絶対温度、 は溶質のモル分率である。
(NaCl のモル分率)
(4) ギブズエネルギーの大小について説明する。
ギブズエネルギー は、 で表される。ここで、 はエンタルピー、 は絶対温度、 はエントロピーである。
20℃の場合:
食塩水が溶けているため、純水よりもエントロピーは大きくなる。エンタルピーは溶解熱によって変化するが、ここでは理想溶液と仮定して、エンタルピー変化は小さいと考える。
したがって、20℃では純水に比べてエントロピー項が大きくなり、 が大きくなるため、ギブズエネルギーは小さくなる。
凝固点より低い温度の場合:
凝固点以下では、溶液は凝固し、固体である氷と塩化ナトリウムの混合物として存在する。この状態は、20℃の溶液状態に比べてエントロピーが小さくなる。
エンタルピーは、凝固による発熱を考慮する必要がある。
温度が低いため、 自体が小さくなり、 の寄与が小さくなる。
凝固点以下では、エントロピーが大きく減少する影響で、ギブズエネルギーは一般的に高くなる。エンタルピーの変化(凝固熱)も寄与するが、温度が低いほど、エントロピーの影響が大きくなる。
3. 最終的な答え
(1) NaClの質量モル濃度:
(2) NaClのモル分率:
(3) 化学ポテンシャルの変化:
(4) ギブズエネルギーの大小:
20℃の場合:純水よりもギブズエネルギーは小さくなる。
凝固点より低い温度の場合:20℃の溶液に比べてギブズエネルギーは大きくなる。