傾斜角 $\theta$ の斜面上に質量 $m$ の物体が静止している。時刻 $t=0$ で物体が滑り始めた。重力加速度の大きさを $g$, 動摩擦係数を $\mu$ とする。以下の問いに答えよ。 (1) 斜面の静止摩擦係数がある値より小さいことを示し、その値を求めよ。 (2) 左辺を $m\ddot{x}$ として運動方程式を示せ。 (3) 以下の各問に $g$, $m$, $\mu$, $t$ のうち必要なものを用いて答えよ。ただし、時刻 $t$ は物体が滑っている間の時間とする。 i. 速度 $v(t)$ を示せ。 ii. 位置 $x(t)$ を示せ。 iii. 時刻 $t$ のときの運動エネルギー $K$ を示せ。 iv. 時刻ゼロから時刻 $t$ までに動摩擦力のした仕事 $W_1$ と重力のした仕事 $W_2$ を示せ。 v. $K$, $W_1$, $W_2$ の間に成り立つ関係式を示せ。

応用数学力学運動方程式摩擦力エネルギー斜面
2025/7/28

1. 問題の内容

傾斜角 θ\theta の斜面上に質量 mm の物体が静止している。時刻 t=0t=0 で物体が滑り始めた。重力加速度の大きさを gg, 動摩擦係数を μ\mu とする。以下の問いに答えよ。
(1) 斜面の静止摩擦係数がある値より小さいことを示し、その値を求めよ。
(2) 左辺を mx¨m\ddot{x} として運動方程式を示せ。
(3) 以下の各問に gg, mm, μ\mu, tt のうち必要なものを用いて答えよ。ただし、時刻 tt は物体が滑っている間の時間とする。
i. 速度 v(t)v(t) を示せ。
ii. 位置 x(t)x(t) を示せ。
iii. 時刻 tt のときの運動エネルギー KK を示せ。
iv. 時刻ゼロから時刻 tt までに動摩擦力のした仕事 W1W_1 と重力のした仕事 W2W_2 を示せ。
v. KK, W1W_1, W2W_2 の間に成り立つ関係式を示せ。

2. 解き方の手順

(1) 物体が滑り出す条件は、重力の斜面方向成分が最大静止摩擦力よりも大きいことである。つまり、
mgsinθ>μsmgcosθmg\sin\theta > \mu_s mg\cos\theta
したがって、静止摩擦係数 μs\mu_stanθ\tan\theta より小さくなければならない。問題文より、μ\mu はある値より小さいとあるので、これは動摩擦係数 μ\mu のことである。したがって、
μ<tanθ\mu < \tan\theta
(2) 物体にはたらく力は、重力 mgmg, 垂直抗力 NN, 動摩擦力 ff である。斜面下向きを正とする xx 軸に沿った運動方程式は、
mx¨=mgsinθf=mgsinθμmgcosθm\ddot{x} = mg\sin\theta - f = mg\sin\theta - \mu mg\cos\theta
よって、
mx¨=mg(sinθμcosθ)m\ddot{x} = mg(\sin\theta - \mu\cos\theta)
(3)
i. 加速度 x¨\ddot{x} は一定なので、等加速度運動である。x¨=g(sinθμcosθ)\ddot{x} = g(\sin\theta - \mu\cos\theta) より、
v(t)=x¨dt=g(sinθμcosθ)dt=g(sinθμcosθ)t+Cv(t) = \int \ddot{x} dt = \int g(\sin\theta - \mu\cos\theta) dt = g(\sin\theta - \mu\cos\theta)t + C
初期条件 v(0)=0v(0) = 0 より、C=0C = 0。したがって、
v(t)=g(sinθμcosθ)tv(t) = g(\sin\theta - \mu\cos\theta)t
ii. 位置 x(t)x(t) は、
x(t)=v(t)dt=g(sinθμcosθ)tdt=12g(sinθμcosθ)t2+Cx(t) = \int v(t) dt = \int g(\sin\theta - \mu\cos\theta)t dt = \frac{1}{2}g(\sin\theta - \mu\cos\theta)t^2 + C'
初期条件 x(0)=0x(0) = 0 より、C=0C' = 0。したがって、
x(t)=12g(sinθμcosθ)t2x(t) = \frac{1}{2}g(\sin\theta - \mu\cos\theta)t^2
iii. 運動エネルギー KK は、
K=12mv(t)2=12m[g(sinθμcosθ)t]2=12mg2(sinθμcosθ)2t2K = \frac{1}{2}mv(t)^2 = \frac{1}{2}m [g(\sin\theta - \mu\cos\theta)t]^2 = \frac{1}{2}mg^2(\sin\theta - \mu\cos\theta)^2t^2
iv. 動摩擦力のした仕事 W1W_1 は、動摩擦力 f=μmgcosθf = \mu mg\cos\thetax(t)x(t) だけ移動したときにされる仕事なので、
W1=fx(t)=(μmgcosθ)12g(sinθμcosθ)t2=12μmg2cosθ(sinθμcosθ)t2W_1 = -fx(t) = -(\mu mg\cos\theta) \frac{1}{2}g(\sin\theta - \mu\cos\theta)t^2 = -\frac{1}{2}\mu m g^2\cos\theta(\sin\theta - \mu\cos\theta)t^2
重力のした仕事 W2W_2 は、重力の斜面方向成分 mgsinθmg\sin\thetax(t)x(t) だけ移動したときにされる仕事なので、
W2=(mgsinθ)x(t)=(mgsinθ)12g(sinθμcosθ)t2=12mg2sinθ(sinθμcosθ)t2W_2 = (mg\sin\theta)x(t) = (mg\sin\theta) \frac{1}{2}g(\sin\theta - \mu\cos\theta)t^2 = \frac{1}{2}m g^2\sin\theta(\sin\theta - \mu\cos\theta)t^2
v. エネルギー保存則より、K=W1+W2K = W_1 + W_2 が成り立つ。

3. 最終的な答え

(1) μ<tanθ\mu < \tan\theta
(2) mx¨=mg(sinθμcosθ)m\ddot{x} = mg(\sin\theta - \mu\cos\theta)
(3)
i. v(t)=g(sinθμcosθ)tv(t) = g(\sin\theta - \mu\cos\theta)t
ii. x(t)=12g(sinθμcosθ)t2x(t) = \frac{1}{2}g(\sin\theta - \mu\cos\theta)t^2
iii. K=12mg2(sinθμcosθ)2t2K = \frac{1}{2}mg^2(\sin\theta - \mu\cos\theta)^2t^2
iv. W1=12μmg2cosθ(sinθμcosθ)t2W_1 = -\frac{1}{2}\mu m g^2\cos\theta(\sin\theta - \mu\cos\theta)t^2, W2=12mg2sinθ(sinθμcosθ)t2W_2 = \frac{1}{2}m g^2\sin\theta(\sin\theta - \mu\cos\theta)t^2
v. K=W1+W2K = W_1 + W_2

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