与えられた行列 $A = \begin{pmatrix} 0 & 0 & p \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \end{pmatrix}$ （$p$は素数）に対して、$M_3(\mathbb{Q})$の部分集合 $Z(A) = \{X \in M_3(\mathbb{Q}) \mid AX = XA\}$ を考えます。 (1) $Z(A)$が$M_3(\mathbb{Q})$の部分空間であることを示す。 (2) $AX = XA$を満たす$X \in M_3(\mathbb{Q})$をすべて求める。 (3) $Z(A)$の基を一組求める。 (4) 任意の$X, Y \in Z(A)$に対し、$XY \in Z(A)$となることを示す。 (5) 任意の$X \in Z(A)$に対し、$X$の余因子行列 $\tilde{X}$ も $\tilde{X} \in Z(A)$ となることを示す。 (6) $x, y, z$の方程式 $x^3 + py^3 + p^2z^3 - 3pxyz = 0$ が $(x, y, z) = (0, 0, 0)$ 以外の有理数解を持たないことを示す。 (7) 任意の $O \neq X \in Z(A)$ は正則で $X^{-1} \in Z(A)$ となることを示す。

はい、承知いたしました。問題文を読み解き、順番に解答します。

1. 問題の内容

与えられた行列 $A = \begin{pmatrix} 0 & 0 & p \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \end{pmatrix}$ （$p$は素数）に対して、$M_3(\mathbb{Q})$の部分集合 $Z(A) = \{X \in M_3(\mathbb{Q}) \mid AX = XA\}$ を考えます。

(1) $Z(A)$が$M_3(\mathbb{Q})$の部分空間であることを示す。

(2) $AX = XA$を満たす$X \in M_3(\mathbb{Q})$をすべて求める。

(3) $Z(A)$の基を一組求める。

(4) 任意の$X, Y \in Z(A)$に対し、$XY \in Z(A)$となることを示す。

(5) 任意の$X \in Z(A)$に対し、$X$の余因子行列 $\tilde{X}$ も $\tilde{X} \in Z(A)$ となることを示す。

(6) $x, y, z$の方程式 $x^3 + py^3 + p^2z^3 - 3pxyz = 0$ が $(x, y, z) = (0, 0, 0)$ 以外の有理数解を持たないことを示す。

(7) 任意の $O \neq X \in Z(A)$ は正則で $X^{-1} \in Z(A)$ となることを示す。

2. 解き方の手順

(1) $Z(A)$ が $M_3(\mathbb{Q})$ の部分空間であることの証明

* まず、零行列 $O$ が $Z(A)$ に含まれることを示す。$AO = OA = O$ であるから、$O \in Z(A)$。

* 次に、$X, Y \in Z(A)$ ならば $X + Y \in Z(A)$ であることを示す。$A(X + Y) = AX + AY = XA + YA = (X + Y)A$ であるから、$X + Y \in Z(A)$。

* 最後に、$X \in Z(A)$、 $c \in \mathbb{Q}$ ならば $cX \in Z(A)$ であることを示す。$A(cX) = c(AX) = c(XA) = (cX)A$ であるから、$cX \in Z(A)$。

以上の3つの条件が満たされるので、$Z(A)$ は $M_3(\mathbb{Q})$ の部分空間である。

(2) $AX = XA$を満たす行列 $X$ を求める

$X = \begin{pmatrix} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{pmatrix}$ とおく。$AX = XA$ を計算する。

$AX = \begin{pmatrix} 0 & 0 & p \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} pg & ph & pi \\ a & b & c \\ d & e & f \end{pmatrix}$

$XA = \begin{pmatrix} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 0 & 0 & p \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} b & c & ap \\ e & f & dp \\ h & i & gp \end{pmatrix}$

$AX = XA$ より、以下の連立方程式を得る。

$pg = b, ph = c, pi = ap, a = e, b = f, c = dp, d = h, e = i, f = gp$

これより、$b = pg, c = p^2g, a = e = i, d = h = g, f = gp$ となる。

よって、$X = \begin{pmatrix} a & pg & p^2g \\ g & a & pg \\ pg & g & a \end{pmatrix}$, $a, g \in \mathbb{Q}$

(3) $Z(A)$の基を求める

上記の結果より、$X = a \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} + g \begin{pmatrix} 0 & p & p^2 \\ 1 & 0 & p \\ p & 1 & 0 \end{pmatrix}$ と表せる。

よって、$Z(A)$ の基は $\left\{ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 0 & p & p^2 \\ 1 & 0 & p \\ p & 1 & 0 \end{pmatrix} \right\}$

(4) $XY \in Z(A)$ を示す

$X, Y \in Z(A)$ より、$AX = XA$ かつ $AY = YA$。

$A(XY) = (AX)Y = (XA)Y = X(AY) = X(YA) = (XY)A$

よって、$XY \in Z(A)$。

(5) $\tilde{X} \in Z(A)$ を示す

$X = \begin{pmatrix} a & pg & p^2g \\ g & a & pg \\ pg & g & a \end{pmatrix}$ に対して、余因子行列 $\tilde{X}$ を計算する。

$\tilde{X} = \begin{pmatrix} a^2-p^2g^2 & p^3g^2-apg & p^2g^2-p^2ag \\ p^3g^2-apg & a^2-p^2g^2 & p^3g^2-apg \\ p^2g^2-p^2ag & p^3g^2-apg & a^2-p^2g^2\end{pmatrix}$

$\tilde{X} = (a^2-p^2g^2)\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1\end{pmatrix} + (p^3g^2-apg)\begin{pmatrix} 0 & p & p^2 \\ 1 & 0 & p \\ p & 1 & 0\end{pmatrix}$

$\tilde{X} \in Z(A)$ である。

(6) $x^3 + py^3 + p^2z^3 - 3pxyz = 0$ が $(x, y, z) = (0, 0, 0)$ 以外の有理数解を持たないことの証明

$x, y, z$が互いに素な整数解を持つと仮定する。$x^3 = 3pxyz - py^3 - p^2z^3 = p(3xyz - y^3 - pz^3)$。

$p|x^3$ より $p|x$。 $x = px_1$とおく。

$p^3x_1^3 + py^3 + p^2z^3 - 3p^2x_1yz = 0$ より、$p^2x_1^3 + y^3 + pz^3 - 3px_1yz = 0$。

$y^3 = p(3x_1yz - z^3 - px_1^3)$ より $p|y^3$ よって $p|y$。 $y = py_1$とおく。

$p^2x_1^3 + p^3y_1^3 + pz^3 - 3p^2x_1y_1z = 0$ より、$px_1^3 + p^2y_1^3 + z^3 - 3px_1y_1z = 0$

$z^3 = p(3x_1y_1z - x_1^3 - py_1^3)$ より $p|z^3$ よって $p|z$。

したがって、$x, y, z$ はすべて $p$ で割り切れることになり、$x, y, z$ が互いに素であるという仮定に矛盾する。

したがって、$x = y = z = 0$。

(7) $X \in Z(A)$ が正則ならば $X^{-1} \in Z(A)$ を示す

$X \in Z(A)$ より $AX = XA$。$X$ が正則であるとき、$X^{-1}$ が存在する。

$AX = XA$ の両辺に左から $X^{-1}$、右から $X^{-1}$ をかけると、$X^{-1}AXX^{-1} = X^{-1}XAX^{-1}$ より、$X^{-1}A = AX^{-1}$。

よって、$X^{-1} \in Z(A)$。

3. 最終的な答え

(1) $Z(A)$は$M_3(\mathbb{Q})$の部分空間である。

(2) $AX = XA$を満たす行列$X$は、$X = \begin{pmatrix} a & pg & p^2g \\ g & a & pg \\ pg & g & a \end{pmatrix}$, $a, g \in \mathbb{Q}$。

(3) $Z(A)$の基は $\left\{ \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}, \begin{pmatrix} 0 & p & p^2 \\ 1 & 0 & p \\ p & 1 & 0 \end{pmatrix} \right\}$。

(4) 任意の$X, Y \in Z(A)$に対し、$XY \in Z(A)$。

(5) 任意の$X \in Z(A)$に対し、$X$の余因子行列 $\tilde{X}$ も $\tilde{X} \in Z(A)$。

(6) $x, y, z$の方程式 $x^3 + py^3 + p^2z^3 - 3pxyz = 0$ は $(x, y, z) = (0, 0, 0)$ 以外の有理数解を持たない。

(7) 任意の $O \neq X \in Z(A)$ は正則で $X^{-1} \in Z(A)$。