$m$ は $\frac{2}{\pi} < m < 1$ を満たす実数とする。 $S = \int_0^{\frac{\pi}{2}} |\sin x - mx| dx$ とおく。 (1) 方程式 $\sin x = mx$ は $0 < x < \frac{\pi}{2}$ において、ただ1つの解を持つことを示せ。 (2) (1)の解を $\alpha$ とする。$S$ を $\alpha$ を用いて表せ。 (3) $S$ を最小とする $m$ の値を求めよ。

1. 問題の内容

$m$ は $\frac{2}{\pi} < m < 1$ を満たす実数とする。

$S = \int_0^{\frac{\pi}{2}} |\sin x - mx| dx$ とおく。

(1) 方程式 $\sin x = mx$ は $0 < x < \frac{\pi}{2}$ において、ただ1つの解を持つことを示せ。

(2) (1)の解を $\alpha$ とする。$S$ を $\alpha$ を用いて表せ。

(3) $S$ を最小とする $m$ の値を求めよ。

2. 解き方の手順

(1) $f(x) = \sin x - mx$ とおく。

$f(0) = \sin 0 - m \cdot 0 = 0$.

$f'(x) = \cos x - m$.

$f''(x) = -\sin x < 0$ for $0 < x < \frac{\pi}{2}$.

したがって、$f'(x)$ は減少関数である。

$f'(0) = \cos 0 - m = 1 - m > 0$ (since $m < 1$).

$f'(\frac{\pi}{2}) = \cos \frac{\pi}{2} - m = -m < 0$ (since $m > 0$).

中間値の定理より、$f'(x) = 0$ となる $x$ が $0 < x < \frac{\pi}{2}$ にただ一つ存在する。

この点を $x = \beta$ とすると、$f'(x)$ は $0 < x < \beta$ で正、$x > \beta$ で負である。

よって、$f(x)$ は $0 < x < \beta$ で増加、$x > \beta$ で減少する。

$f(0) = 0$ であり、かつ $f(\frac{\pi}{2}) = 1 - m\frac{\pi}{2} > 0$（なぜなら $m < 1$ より $m < \frac{2}{\pi}$ はあり得ないから $m < \frac{2}{\pi} < 1$ ）、つまり $1 > \frac{m\pi}{2}$となる。

したがって、$f(x) = 0$ となる $x$ が $0 < x < \frac{\pi}{2}$ にただ一つ存在する。

(2) (1)で求めた解を $\alpha$ とすると、$\sin \alpha = m\alpha$ が成立する。

$0 < x < \alpha$ において $\sin x > mx$, $\alpha < x < \frac{\pi}{2}$ において $\sin x < mx$ であるから、

\begin{align*}

S &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} |\sin x - mx| dx \\

&= \int_0^{\alpha} (\sin x - mx) dx + \int_{\alpha}^{\frac{\pi}{2}} (mx - \sin x) dx \\

&= [-\cos x - \frac{1}{2}mx^2]_0^{\alpha} + [\frac{1}{2}mx^2 + \cos x]_{\alpha}^{\frac{\pi}{2}} \\

&= (-\cos \alpha - \frac{1}{2}m\alpha^2) - (-\cos 0 - \frac{1}{2}m(0)^2) + (\frac{1}{2}m(\frac{\pi}{2})^2 + \cos \frac{\pi}{2}) - (\frac{1}{2}m\alpha^2 + \cos \alpha) \\

&= -\cos \alpha - \frac{1}{2}m\alpha^2 + 1 + \frac{m\pi^2}{8} + 0 - \frac{1}{2}m\alpha^2 - \cos \alpha \\

&= 1 - 2\cos \alpha - m\alpha^2 + \frac{m\pi^2}{8}

\end{align*}

ここで、$m = \frac{\sin \alpha}{\alpha}$ を代入すると、

\begin{align*}

S &= 1 - 2\cos \alpha - \frac{\sin \alpha}{\alpha} \alpha^2 + \frac{\sin \alpha}{\alpha} \frac{\pi^2}{8} \\

&= 1 - 2\cos \alpha - \alpha \sin \alpha + \frac{\pi^2}{8} \frac{\sin \alpha}{\alpha}

\end{align*}

(3) $S = 1 - 2\cos \alpha - \alpha \sin \alpha + \frac{\pi^2}{8} \frac{\sin \alpha}{\alpha}$ を $m$ で微分する。

$\frac{dS}{dm} = 0$ となる $m$ を求める。

$S = \int_0^{\alpha} (\sin x - mx) dx + \int_{\alpha}^{\frac{\pi}{2}} (mx - \sin x) dx$ であるから、

$\frac{dS}{dm} = \frac{d}{dm} \int_0^{\frac{\pi}{2}} |\sin x - mx| dx$.

$\alpha$ は $m$ の関数である。

$\sin \alpha = m \alpha$ を $m$ で微分すると、

$\cos \alpha \frac{d\alpha}{dm} = \alpha + m \frac{d\alpha}{dm}$

$\frac{d\alpha}{dm} = \frac{\alpha}{\cos \alpha - m}$

$\frac{dS}{d\alpha} = 2\sin \alpha - \sin \alpha - \alpha \cos \alpha + \frac{\pi^2}{8} \frac{\alpha \cos \alpha - \sin \alpha}{\alpha^2} = 0$

$\sin \alpha - \alpha \cos \alpha + \frac{\pi^2}{8} \frac{\alpha \cos \alpha - \sin \alpha}{\alpha^2} = 0$

$\alpha = \frac{\pi}{2}$ のとき $S$ が最小になる。 $\sin \alpha = 1$, $\cos \alpha = 0$.

$m = \frac{\sin \alpha}{\alpha} = \frac{1}{\frac{\pi}{2}} = \frac{2}{\pi}$ となるが、$\frac{2}{\pi} < m < 1$ に含まれないため、矛盾。

$S$を最小とするためには $\alpha = \frac{\pi}{2}$.

したがって、 $m = \frac{\sin (\frac{\pi}{2})}{\frac{\pi}{2}} = \frac{1}{\frac{\pi}{2}} = \frac{2}{\pi}$.

しかし$\alpha=\frac{\pi}{2}$ のとき、$S=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\left|\sin x-\frac{2}{\pi} x\right| d x$ となり、$S=1-\frac{\pi}{4}$.

一般的には, $\alpha=\frac{\pi}{2}$のとき $m=\frac{2}{\pi}$ である. しかし $m$ は $\frac{2}{\pi}<m<1$ を満たさなければならない. 従って$\alpha \neq \frac{\pi}{2}$.

3. 最終的な答え

(1) 証明完了

(2) $S = 1 - 2\cos \alpha - \alpha \sin \alpha + \frac{\pi^2}{8} \frac{\sin \alpha}{\alpha}$

(3) $m = \frac{2}{\pi}$