傾斜角30°の斜面上に質量 $m$ の物体Pがあり、滑車を通して質量 $M$ の物体Qと繋がれている。Pと斜面間の静止摩擦係数は $\frac{1}{3}$、動摩擦係数は $\frac{1}{2\sqrt{3}}$である。重力加速度を $g$ とする。 (1) PとQが静止するための $M$ の範囲を $m$ で表す。 (2) Qの初期の高さを $h$ とし、$M = \frac{3}{2}m$ として静かに放す。 (ア) Qの加速度 $a$ と、Qが床に達する時の速度 $v$ を求める。 (イ) Qが床に達した後、Pが最高点に達して止まるまでの距離 $l$ と時間 $t$ を求める。

応用数学力学運動方程式摩擦力斜面
2025/8/9

1. 問題の内容

傾斜角30°の斜面上に質量 mm の物体Pがあり、滑車を通して質量 MM の物体Qと繋がれている。Pと斜面間の静止摩擦係数は 13\frac{1}{3}、動摩擦係数は 123\frac{1}{2\sqrt{3}}である。重力加速度を gg とする。
(1) PとQが静止するための MM の範囲を mm で表す。
(2) Qの初期の高さを hh とし、M=32mM = \frac{3}{2}m として静かに放す。
(ア) Qの加速度 aa と、Qが床に達する時の速度 vv を求める。
(イ) Qが床に達した後、Pが最高点に達して止まるまでの距離 ll と時間 tt を求める。

2. 解き方の手順

(1) PとQが静止している条件
Pに働く力は、重力 mgmg、糸の張力 TT、垂直抗力 NN、静止摩擦力 ff である。
斜面に沿った方向の力の釣り合いを考えると、
Tmgsin30f=0T - mg\sin{30^\circ} - f = 0
垂直方向の力の釣り合いを考えると、
Nmgcos30=0N - mg\cos{30^\circ} = 0
N=mgcos30=32mgN = mg\cos{30^\circ} = \frac{\sqrt{3}}{2}mg
Qに働く力は、重力 MgMg、糸の張力 TT である。力の釣り合いより、
T=MgT = Mg
Pが静止しているためには、静止摩擦力 ff が最大静止摩擦力 μN\mu N を超えてはならない。
μNfμN-\mu N \le f \le \mu N
ここで、μ=13\mu = \frac{1}{3} なので、μN=1332mg=36mg\mu N = \frac{1}{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}mg = \frac{\sqrt{3}}{6}mg
Mgmgsin30=fMg - mg\sin{30^\circ} = f より
Mg12mg=fMg - \frac{1}{2}mg = f
36mgMg12mg36mg-\frac{\sqrt{3}}{6}mg \le Mg - \frac{1}{2}mg \le \frac{\sqrt{3}}{6}mg
36mg+12mgMg36mg+12mg-\frac{\sqrt{3}}{6}mg + \frac{1}{2}mg \le Mg \le \frac{\sqrt{3}}{6}mg + \frac{1}{2}mg
1236Mm12+36\frac{1}{2} - \frac{\sqrt{3}}{6} \le \frac{M}{m} \le \frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{6}
336Mm3+36\frac{3 - \sqrt{3}}{6} \le \frac{M}{m} \le \frac{3 + \sqrt{3}}{6}
336mM3+36m\frac{3 - \sqrt{3}}{6}m \le M \le \frac{3 + \sqrt{3}}{6}m
(2) M=32mM = \frac{3}{2}m のとき
(ア) PとQの運動方程式を立てる。Pが斜面を下る方向に xx 軸をとる。
ma=mgsin30+fTm a = mg\sin{30^\circ} + f - T
Ma=MgTMa = Mg - T
T=M(ga)T = M(g-a)
ma=mgsin30+μNM(ga)ma = mg\sin{30^\circ} + \mu' N - M(g-a)
ma=12mg+12332mgM(ga)ma = \frac{1}{2}mg + \frac{1}{2\sqrt{3}} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}mg - M(g-a)
M=32mM = \frac{3}{2}m を代入
ma=12mg+14mg32m(ga)ma = \frac{1}{2}mg + \frac{1}{4}mg - \frac{3}{2}m(g-a)
ma=34mg32mg+32mama = \frac{3}{4}mg - \frac{3}{2}mg + \frac{3}{2}ma
12ma=34mg-\frac{1}{2}ma = -\frac{3}{4}mg
a=32ga = \frac{3}{2}g
Qが床に達する時の速度 vv は、等加速度運動の公式より
v202=2ahv^2 - 0^2 = 2ah
v2=2(32g)h=3ghv^2 = 2(\frac{3}{2}g)h = 3gh
v=3ghv = \sqrt{3gh}
(イ) Qが床に達した後、Pは動摩擦力によって減速する。加速度を aa' とすると、
ma=mgsin30+f=mgsin30μNma' = mg\sin{30^\circ} + f = mg\sin{30^\circ} - \mu' N
ma=12mg12332mg=12mg14mg=14mgma' = \frac{1}{2}mg - \frac{1}{2\sqrt{3}} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}mg = \frac{1}{2}mg - \frac{1}{4}mg = \frac{1}{4}mg
a=14ga' = \frac{1}{4}g
Pが止まるまでの距離 ll は、
02v2=2al0^2 - v^2 = 2a'l
v2=2(14g)l-v^2 = 2(-\frac{1}{4}g)l
3gh=12gl-3gh = -\frac{1}{2}gl
l=6hl = 6h
Pが止まるまでの時間 tt' は、
0v=at0 - v = a't'
t=va=3gh14g=43ghgt' = \frac{v}{a'} = \frac{\sqrt{3gh}}{\frac{1}{4}g} = \frac{4\sqrt{3gh}}{g}
Qが動き始めてから床に達するまでの時間 t1t_1
h=12at12h = \frac{1}{2}at_1^2 より
t1=2ha=2h32g=4h3gt_1 = \sqrt{\frac{2h}{a}} = \sqrt{\frac{2h}{\frac{3}{2}g}} = \sqrt{\frac{4h}{3g}}
したがって、Pが動き始めてから止まるまでの時間 tt は、
t=t1+t=4h3g+43ghg=2h3g+43hg=23gh3g+123gh3g=143gh3gt = t_1 + t' = \sqrt{\frac{4h}{3g}} + \frac{4\sqrt{3gh}}{g} = 2\sqrt{\frac{h}{3g}} + 4\sqrt{\frac{3h}{g}} = \frac{2\sqrt{3gh}}{3g} + \frac{12\sqrt{3gh}}{3g} = \frac{14\sqrt{3gh}}{3g}

3. 最終的な答え

(1) 336mM3+36m\frac{3 - \sqrt{3}}{6}m \le M \le \frac{3 + \sqrt{3}}{6}m
(2) (ア) a=32ga = \frac{3}{2}g, v=3ghv = \sqrt{3gh}
(イ) l=6hl = 6h, t=143gh3gt = \frac{14\sqrt{3gh}}{3g}

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