$xy$平面上で、原点を通る偏角 $\alpha$ の直線 $l$ を考える。 点 $v$ から直線 $l$ に下ろした垂線の足を $p(v)$ とする写像 $p$ と、点 $v$ と直線 $l$ に関して線対称な点を $\rho(v)$ とする写像 $\rho$ について、以下の問いに答えよ。 (1) $e_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}$, $e_2 = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}$ について、点 $e_1$, $e_2$, $p(e_1)$, $\rho(e_2)$ の偏角をそれぞれ答えよ。 (2) 点 $e_1$, $e_2$, $p(e_1)$, $p(e_2)$, $\rho(e_1)$, $\rho(e_2)$ の座標をそれぞれ答えよ。ただし、 $2\alpha$ のみの三角比を用いて良いものとする（$\pi$ とかは残しちゃダメ）。 (3) 任意の点 $v = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$ に対して、これを点 $e_1$, $e_2$ の線形和で表せ。 (4) (2), (3) の結果から、任意の点 $v = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$ に対して点 $p(v)$, $\rho(v)$ の座標を、「○○は線形なので」という説明を必ず用いてそれぞれ求めよ。 (5) (4) の結果を行列と数ベクトルを用いて記せ。 (6) (5) の結果の2つの行列および単位行列について、それらの和とスカラー倍が満たす非自明な等式（$A - A = O$ などはダメ）を一つ挙げ、その図形的な意味を説明せよ。

1. 問題の内容

$xy$平面上で、原点を通る偏角 $\alpha$ の直線 $l$ を考える。

点 $v$ から直線 $l$ に下ろした垂線の足を $p(v)$ とする写像 $p$ と、点 $v$ と直線 $l$ に関して線対称な点を $\rho(v)$ とする写像 $\rho$ について、以下の問いに答えよ。

(1) $e_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}$, $e_2 = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}$ について、点 $e_1$, $e_2$, $p(e_1)$, $\rho(e_2)$ の偏角をそれぞれ答えよ。

(2) 点 $e_1$, $e_2$, $p(e_1)$, $p(e_2)$, $\rho(e_1)$, $\rho(e_2)$ の座標をそれぞれ答えよ。ただし、 $2\alpha$ のみの三角比を用いて良いものとする（$\pi$ とかは残しちゃダメ）。

(3) 任意の点 $v = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$ に対して、これを点 $e_1$, $e_2$ の線形和で表せ。

(4) (2), (3) の結果から、任意の点 $v = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$ に対して点 $p(v)$, $\rho(v)$ の座標を、「○○は線形なので」という説明を必ず用いてそれぞれ求めよ。

(5) (4) の結果を行列と数ベクトルを用いて記せ。

(6) (5) の結果の2つの行列および単位行列について、それらの和とスカラー倍が満たす非自明な等式（$A - A = O$ などはダメ）を一つ挙げ、その図形的な意味を説明せよ。

2. 解き方の手順

(1)

$e_1$ は $(1, 0)$ なので、偏角は $0$。

$e_2$ は $(0, 1)$ なので、偏角は $\frac{\pi}{2}$。

$p(e_1)$ は $e_1$ から $l$ に下ろした垂線の足なので、直線 $y = (\tan \alpha) x$ 上にある。$p(e_1)$ は $e_1 = (1, 0)$ から直線 $l$ に下ろした垂線の足なので、線分 $e_1 p(e_1)$ は直線 $l$ と直交する。したがって、$p(e_1)$ の偏角は $\alpha$ である。

$\rho(e_2)$ は $e_2$ の直線 $l$ に関する線対称な点である。$e_2$ の偏角は $\frac{\pi}{2}$ なので、$\rho(e_2)$ の偏角は $\frac{\pi}{2} - 2(\frac{\pi}{2} - \alpha) = 2\alpha - \frac{\pi}{2}$。

(2)

$e_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}$, $e_2 = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}$。

$p(e_1)$ は $(x, y)$ とおくと、直線 $l$ 上にあるので、$y = (\tan \alpha) x$。また、$e_1 p(e_1)$ は直線 $l$ と直交するので、傾きは $-\frac{1}{\tan \alpha}$。したがって、$\frac{y - 0}{x - 1} = -\frac{1}{\tan \alpha} = -\frac{\cos \alpha}{\sin \alpha}$。よって、$y = -\frac{\cos \alpha}{\sin \alpha}(x - 1)$。

これより、$(\tan \alpha) x = -\frac{\cos \alpha}{\sin \alpha}(x - 1)$ なので、$\frac{\sin \alpha}{\cos \alpha} x = -\frac{\cos \alpha}{\sin \alpha} x + \frac{\cos \alpha}{\sin \alpha}$。したがって、$(\frac{\sin \alpha}{\cos \alpha} + \frac{\cos \alpha}{\sin \alpha} ) x = \frac{\cos \alpha}{\sin \alpha}$。よって、$\frac{\sin^2 \alpha + \cos^2 \alpha}{\sin \alpha \cos \alpha} x = \frac{\cos \alpha}{\sin \alpha}$。つまり、$\frac{1}{\sin \alpha \cos \alpha} x = \frac{\cos \alpha}{\sin \alpha}$。したがって、$x = \cos^2 \alpha$。$y = (\tan \alpha) x = (\tan \alpha) \cos^2 \alpha = \frac{\sin \alpha}{\cos \alpha} \cos^2 \alpha = \sin \alpha \cos \alpha$。

よって、$p(e_1) = \begin{pmatrix} \cos^2 \alpha \\ \sin \alpha \cos \alpha \end{pmatrix}$。

$p(e_2)$ は $(x, y)$ とおくと、直線 $l$ 上にあるので、$y = (\tan \alpha) x$。また、$e_2 p(e_2)$ は直線 $l$ と直交するので、傾きは $-\frac{1}{\tan \alpha}$。したがって、$\frac{y - 1}{x - 0} = -\frac{1}{\tan \alpha} = -\frac{\cos \alpha}{\sin \alpha}$。よって、$y = -\frac{\cos \alpha}{\sin \alpha} x + 1$。これより、$(\tan \alpha) x = -\frac{\cos \alpha}{\sin \alpha} x + 1$ なので、$\frac{\sin \alpha}{\cos \alpha} x = -\frac{\cos \alpha}{\sin \alpha} x + 1$。したがって、$(\frac{\sin \alpha}{\cos \alpha} + \frac{\cos \alpha}{\sin \alpha} ) x = 1$。よって、$\frac{\sin^2 \alpha + \cos^2 \alpha}{\sin \alpha \cos \alpha} x = 1$。つまり、$\frac{1}{\sin \alpha \cos \alpha} x = 1$。したがって、$x = \sin \alpha \cos \alpha$。$y = (\tan \alpha) x = (\tan \alpha) \sin \alpha \cos \alpha = \frac{\sin \alpha}{\cos \alpha} \sin \alpha \cos \alpha = \sin^2 \alpha$。よって、$p(e_2) = \begin{pmatrix} \sin \alpha \cos \alpha \\ \sin^2 \alpha \end{pmatrix}$。

$\rho(e_1)$ は $e_1$ の直線 $l$ に関する線対称な点である。$p(e_1)$ は $e_1$ と $\rho(e_1)$ の中点なので、$p(e_1) = \frac{e_1 + \rho(e_1)}{2}$。したがって、$\rho(e_1) = 2 p(e_1) - e_1 = 2 \begin{pmatrix} \cos^2 \alpha \\ \sin \alpha \cos \alpha \end{pmatrix} - \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 \cos^2 \alpha - 1 \\ 2 \sin \alpha \cos \alpha \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos 2\alpha \\ \sin 2\alpha \end{pmatrix}$。

$\rho(e_2)$ は $e_2$ の直線 $l$ に関する線対称な点である。$p(e_2)$ は $e_2$ と $\rho(e_2)$ の中点なので、$p(e_2) = \frac{e_2 + \rho(e_2)}{2}$。したがって、$\rho(e_2) = 2 p(e_2) - e_2 = 2 \begin{pmatrix} \sin \alpha \cos \alpha \\ \sin^2 \alpha \end{pmatrix} - \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 \sin \alpha \cos \alpha \\ 2 \sin^2 \alpha - 1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \sin 2\alpha \\ -\cos 2\alpha \end{pmatrix}$。

(3)

$v = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = x \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} + y \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix} = x e_1 + y e_2$。

(4)

$p(v) = p(x e_1 + y e_2) = x p(e_1) + y p(e_2)$ (なぜなら $p$ は線形だから)。

$p(v) = x \begin{pmatrix} \cos^2 \alpha \\ \sin \alpha \cos \alpha \end{pmatrix} + y \begin{pmatrix} \sin \alpha \cos \alpha \\ \sin^2 \alpha \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x \cos^2 \alpha + y \sin \alpha \cos \alpha \\ x \sin \alpha \cos \alpha + y \sin^2 \alpha \end{pmatrix}$。

$\rho(v) = \rho(x e_1 + y e_2) = x \rho(e_1) + y \rho(e_2)$ (なぜなら $\rho$ は線形だから)。

$\rho(v) = x \begin{pmatrix} \cos 2\alpha \\ \sin 2\alpha \end{pmatrix} + y \begin{pmatrix} \sin 2\alpha \\ -\cos 2\alpha \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x \cos 2\alpha + y \sin 2\alpha \\ x \sin 2\alpha - y \cos 2\alpha \end{pmatrix}$。

(5)

$p(v) = \begin{pmatrix} \cos^2 \alpha & \sin \alpha \cos \alpha \\ \sin \alpha \cos \alpha & \sin^2 \alpha \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$。

$\rho(v) = \begin{pmatrix} \cos 2\alpha & \sin 2\alpha \\ \sin 2\alpha & -\cos 2\alpha \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$。

(6)

$P = \begin{pmatrix} \cos^2 \alpha & \sin \alpha \cos \alpha \\ \sin \alpha \cos \alpha & \sin^2 \alpha \end{pmatrix}$, $R = \begin{pmatrix} \cos 2\alpha & \sin 2\alpha \\ \sin 2\alpha & -\cos 2\alpha \end{pmatrix}$, $I = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$。

$2P - I = R$。

図形的な意味：

点 $v$ を直線 $l$ に正射影する変換を $P$、点 $v$ を直線 $l$ に関して線対称な点に移す変換を $R$ とすると、$2 P - I = R$ は、点 $v$ の $l$ に関する対称点は、$v$ から $l$ への正射影を $l$ の方向に射影ベクトルの大きさだけ伸ばした点であることを意味する。

3. 最終的な答え

(1)

$e_1$: $0$

$e_2$: $\frac{\pi}{2}$

$p(e_1)$: $\alpha$

$\rho(e_2)$: $2\alpha - \frac{\pi}{2}$

(2)

$e_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}$

$e_2 = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}$

$p(e_1) = \begin{pmatrix} \cos^2 \alpha \\ \sin \alpha \cos \alpha \end{pmatrix}$

$p(e_2) = \begin{pmatrix} \sin \alpha \cos \alpha \\ \sin^2 \alpha \end{pmatrix}$

$\rho(e_1) = \begin{pmatrix} \cos 2\alpha \\ \sin 2\alpha \end{pmatrix}$

$\rho(e_2) = \begin{pmatrix} \sin 2\alpha \\ -\cos 2\alpha \end{pmatrix}$

(3)

$v = x e_1 + y e_2$

(4)

$p(v) = \begin{pmatrix} x \cos^2 \alpha + y \sin \alpha \cos \alpha \\ x \sin \alpha \cos \alpha + y \sin^2 \alpha \end{pmatrix}$ ($p$ は線形なので)

$\rho(v) = \begin{pmatrix} x \cos 2\alpha + y \sin 2\alpha \\ x \sin 2\alpha - y \cos 2\alpha \end{pmatrix}$ ($\rho$ は線形なので)

(5)

$p(v) = \begin{pmatrix} \cos^2 \alpha & \sin \alpha \cos \alpha \\ \sin \alpha \cos \alpha & \sin^2 \alpha \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$

$\rho(v) = \begin{pmatrix} \cos 2\alpha & \sin 2\alpha \\ \sin 2\alpha & -\cos 2\alpha \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$

(6)

$2P - I = R$

図形的な意味：点 $v$ の $l$ に関する対称点は、$v$ から $l$ への正射影を $l$ の方向に射影ベクトルの大きさだけ伸ばした点である。