(1) $1 - ab \neq 0$ ならば、2次正方行列 $\begin{bmatrix} 1 & a \\ b & 1 \end{bmatrix}$ が正則であることを示す。 (2) n次正方行列 A, B に対して $I - AB$ が正則行列であるならば、2n次正方行列 $\begin{bmatrix} I & A \\ B & I \end{bmatrix}$ が正則であることを示す。ここで $I$ は n 次の単位行列を表す。

1. 問題の内容

(1) $1 - ab \neq 0$ ならば、2次正方行列 $\begin{bmatrix} 1 & a \\ b & 1 \end{bmatrix}$ が正則であることを示す。

(2) n次正方行列 A, B に対して $I - AB$ が正則行列であるならば、2n次正方行列 $\begin{bmatrix} I & A \\ B & I \end{bmatrix}$ が正則であることを示す。ここで $I$ は n 次の単位行列を表す。

2. 解き方の手順

(1) 2次正方行列 $\begin{bmatrix} 1 & a \\ b & 1 \end{bmatrix}$ の行列式は、

$1 \cdot 1 - a \cdot b = 1 - ab$

である。行列が正則であるための必要十分条件は、その行列式が 0 でないことである。仮定より、$1 - ab \neq 0$ なので、与えられた行列は正則である。

(2) $2n$ 次の正方行列 $\begin{bmatrix} I & A \\ B & I \end{bmatrix}$ の行列式を計算することを考える。

$\begin{bmatrix} I & A \\ B & I \end{bmatrix}$ に左から $\begin{bmatrix} I & -A \\ 0 & I \end{bmatrix}$ を掛けると

$\begin{bmatrix} I & -A \\ 0 & I \end{bmatrix} \begin{bmatrix} I & A \\ B & I \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} I - AB & 0 \\ B & I \end{bmatrix}$

となる。行列式の性質より、

$\det \begin{bmatrix} I & -A \\ 0 & I \end{bmatrix} \cdot \det \begin{bmatrix} I & A \\ B & I \end{bmatrix} = \det \begin{bmatrix} I - AB & 0 \\ B & I \end{bmatrix}$

$\det \begin{bmatrix} I & -A \\ 0 & I \end{bmatrix} = \det (I) \cdot \det (I) = 1$ であり、

$\det \begin{bmatrix} I - AB & 0 \\ B & I \end{bmatrix} = \det (I - AB) \cdot \det (I) = \det (I - AB)$ である。

したがって、

$\det \begin{bmatrix} I & A \\ B & I \end{bmatrix} = \det (I - AB)$

$I - AB$ が正則行列であることから、$\det (I - AB) \neq 0$ である。したがって、$\det \begin{bmatrix} I & A \\ B & I \end{bmatrix} \neq 0$ となり、$\begin{bmatrix} I & A \\ B & I \end{bmatrix}$ は正則行列である。

3. 最終的な答え

(1) $1 - ab \neq 0$ のとき、行列 $\begin{bmatrix} 1 & a \\ b & 1 \end{bmatrix}$ は正則である。

(2) $I - AB$ が正則行列のとき、行列 $\begin{bmatrix} I & A \\ B & I \end{bmatrix}$ は正則である。