$A$ を $n$ 次正方行列とする。$P^{-1}AP = I + A$ となるような $n$ 次正則行列 $P$ は存在しないことを示す。ここで、$I$ は $n$ 次の単位行列である。

代数学線形代数行列トレース正方行列正則行列対角成分の和矛盾
2025/5/8

1. 問題の内容

AAnn 次正方行列とする。P1AP=I+AP^{-1}AP = I + A となるような nn 次正則行列 PP は存在しないことを示す。ここで、IInn 次の単位行列である。

2. 解き方の手順

問題文のヒントにあるように、トレース(対角成分の和)を利用する。
まず、もし P1AP=I+AP^{-1}AP = I + A が成り立つような正則行列 PP が存在すると仮定する。
行列のトレースの性質として、任意の行列 X,YX, Y に対して、tr(XY)=tr(YX)\mathrm{tr}(XY) = \mathrm{tr}(YX) が成り立つ。
これを利用すると、tr(P1AP)=tr(APP1)=tr(A)\mathrm{tr}(P^{-1}AP) = \mathrm{tr}(APP^{-1}) = \mathrm{tr}(A) となる。
一方、P1AP=I+AP^{-1}AP = I + A の両辺のトレースを取ると、
tr(P1AP)=tr(I+A)\mathrm{tr}(P^{-1}AP) = \mathrm{tr}(I + A)
トレースの線形性より、tr(I+A)=tr(I)+tr(A)\mathrm{tr}(I + A) = \mathrm{tr}(I) + \mathrm{tr}(A) となる。
IInn 次の単位行列なので、tr(I)=n\mathrm{tr}(I) = n である。
したがって、
tr(P1AP)=n+tr(A)\mathrm{tr}(P^{-1}AP) = n + \mathrm{tr}(A)
tr(P1AP)=tr(A)\mathrm{tr}(P^{-1}AP) = \mathrm{tr}(A) であったから、
tr(A)=n+tr(A)\mathrm{tr}(A) = n + \mathrm{tr}(A)
両辺から tr(A)\mathrm{tr}(A) を引くと、
0=n0 = n
これは、nn が正の整数であることに矛盾する。したがって、P1AP=I+AP^{-1}AP = I + A となるような nn 次正則行列 PP は存在しない。

3. 最終的な答え

P1AP=I+AP^{-1}AP = I + A となるような nn 次正則行列 PP は存在しない。