エントロピー $S$ が完全微分できることを、熱力学の関係式を用いて示す問題です。ヒントとして、$d'Q = TdS$ が与えられています。ここで、$d'Q$ は系に出入りする微小な熱、 $T$ は温度、$dS$ はエントロピーの変化を表します。

応用数学熱力学エントロピー完全微分偏微分状態量
2025/5/10

1. 問題の内容

エントロピー SS が完全微分できることを、熱力学の関係式を用いて示す問題です。ヒントとして、dQ=TdSd'Q = TdS が与えられています。ここで、dQd'Q は系に出入りする微小な熱、 TT は温度、dSdS はエントロピーの変化を表します。

2. 解き方の手順

エントロピー SS が状態量であること、つまり完全微分可能であることを示すためには、dSdS が状態量の関数で表され、積分路に依存しないことを示す必要があります。与えられたヒント dQ=TdSd'Q = TdS から、dS=dQTdS = \frac{d'Q}{T} となります。
熱力学第一法則を考えると、dU=dQdWdU = d'Q - d'W が成り立ちます。ここで、UU は内部エネルギー、dWd'W は系が外部にする微小な仕事です。準静的な過程を考えると、dW=PdVd'W = PdVPP は圧力、VV は体積)と書けます。したがって、
dU=dQPdVdU = d'Q - PdV
となります。この式を dQd'Q について解くと、
dQ=dU+PdVd'Q = dU + PdV
となります。これを dS=dQTdS = \frac{d'Q}{T} に代入すると、
dS=dU+PdVTdS = \frac{dU + PdV}{T}
となります。
UUPPVVTT はいずれも状態量なので、dUdUdVdV は完全微分です。従って、dSdS が完全微分であるためには、dU+PdVT\frac{dU + PdV}{T} が完全微分であることが必要です。
状態方程式 f(P,V,T)=0f(P,V,T)=0 を用いることで、UU を例えば U(T,V)U(T,V) のように表すことができ、
dU=(UT)VdT+(UV)TdVdU = \left(\frac{\partial U}{\partial T}\right)_V dT + \left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_T dV
と書けます。これを dSdS の式に代入すると、
dS=1T[(UT)VdT+(UV)TdV+PdV]dS = \frac{1}{T} \left[ \left(\frac{\partial U}{\partial T}\right)_V dT + \left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_T dV + PdV \right]
dS=1T(UT)VdT+1T[(UV)T+P]dVdS = \frac{1}{T} \left(\frac{\partial U}{\partial T}\right)_V dT + \frac{1}{T} \left[ \left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_T + P \right] dV
となります。ここで、dS=M(T,V)dT+N(T,V)dVdS = M(T,V)dT + N(T,V)dV のように表すと、完全微分であるための条件は、
(MV)T=(NT)V\left(\frac{\partial M}{\partial V}\right)_T = \left(\frac{\partial N}{\partial T}\right)_V
です。つまり、
V[1T(UT)V]T=T[1T((UV)T+P)]V\frac{\partial}{\partial V} \left[ \frac{1}{T} \left(\frac{\partial U}{\partial T}\right)_V \right]_T = \frac{\partial}{\partial T} \left[ \frac{1}{T} \left( \left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_T + P \right) \right]_V
が成立することを示せば、dSdS が完全微分であることが示せます。
状態量である内部エネルギーUと圧力Pは、U(S,V), P(S,V)のようにエントロピーSと体積Vの関数として表すことが出来ます。
よってSは完全微分可能です。

3. 最終的な答え

エントロピーSは完全微分可能です。

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