質量 $m$ の物体が、初期位置 $(x,y) = (0, h)$ から水平方向に初速度 $v_0$ で射出される。重力加速度を $g$ (鉛直上向きが正) とし、以下の問いに答える。 (1) 空気抵抗がない場合、任意の時刻 $t$ における $x$ 方向と $y$ 方向の速度を求める。運動方程式を微分方程式の形で書き、解くこと。 (2) (1) の場合、任意の時刻 $t$ における物体の位置を求める。 (3) 粘性抵抗 (比例係数 $\gamma$) が働く場合、任意の時刻 $t$ における $x$ 方向と $y$ 方向の速度を求める。 (4) (3) の場合、任意の時刻 $t$ における物体の位置を求める。 (5) 慣性抵抗 (比例係数 $\gamma$) が働く場合、任意の時刻 $t$ における $x$ 方向と $y$ 方向の速度を求める。

1. 問題の内容

質量 $m$ の物体が、初期位置 $(x,y) = (0, h)$ から水平方向に初速度 $v_0$ で射出される。重力加速度を $g$ (鉛直上向きが正) とし、以下の問いに答える。

(1) 空気抵抗がない場合、任意の時刻 $t$ における $x$ 方向と $y$ 方向の速度を求める。運動方程式を微分方程式の形で書き、解くこと。

(2) (1) の場合、任意の時刻 $t$ における物体の位置を求める。

(3) 粘性抵抗 (比例係数 $\gamma$) が働く場合、任意の時刻 $t$ における $x$ 方向と $y$ 方向の速度を求める。

(4) (3) の場合、任意の時刻 $t$ における物体の位置を求める。

(5) 慣性抵抗 (比例係数 $\gamma$) が働く場合、任意の時刻 $t$ における $x$ 方向と $y$ 方向の速度を求める。

2. 解き方の手順

(1) 空気抵抗がない場合：

* $x$ 方向の運動方程式: $m \frac{dv_x}{dt} = 0$。初期条件は $v_x(0) = v_0$。

解は $v_x(t) = v_0$。

* $y$ 方向の運動方程式: $m \frac{dv_y}{dt} = -mg$。初期条件は $v_y(0) = 0$。

解は $v_y(t) = -gt$。

(2) 空気抵抗がない場合の位置：

* $x$ 方向の速度 $v_x(t) = \frac{dx}{dt} = v_0$ を時間 $t$ で積分する。初期条件は $x(0) = 0$。

$x(t) = v_0 t$

* $y$ 方向の速度 $v_y(t) = \frac{dy}{dt} = -gt$ を時間 $t$ で積分する。初期条件は $y(0) = h$。

$y(t) = h - \frac{1}{2}gt^2$

(3) 粘性抵抗がある場合：

* $x$ 方向の運動方程式: $m \frac{dv_x}{dt} = -\gamma v_x$。初期条件は $v_x(0) = v_0$。

$\frac{dv_x}{v_x} = -\frac{\gamma}{m} dt$ より積分して $\ln v_x = -\frac{\gamma}{m} t + C$。初期条件より $C = \ln v_0$。

$v_x(t) = v_0 e^{-\frac{\gamma}{m}t}$

* $y$ 方向の運動方程式: $m \frac{dv_y}{dt} = -mg - \gamma v_y$。初期条件は $v_y(0) = 0$。

$\frac{dv_y}{dt} = -g - \frac{\gamma}{m} v_y$。これを解くと、

$v_y(t) = -\frac{mg}{\gamma} (1 - e^{-\frac{\gamma}{m}t})$

(4) 粘性抵抗がある場合の位置：

* $x$ 方向の位置 $x(t)$ は $v_x(t) = \frac{dx}{dt} = v_0 e^{-\frac{\gamma}{m}t}$ を時間 $t$ で積分する。初期条件は $x(0) = 0$。

$x(t) = \int_0^t v_0 e^{-\frac{\gamma}{m}t'} dt' = v_0 \left[ -\frac{m}{\gamma} e^{-\frac{\gamma}{m}t'} \right]_0^t = \frac{m v_0}{\gamma} (1 - e^{-\frac{\gamma}{m}t})$

* $y$ 方向の位置 $y(t)$ は $v_y(t) = \frac{dy}{dt} = -\frac{mg}{\gamma} (1 - e^{-\frac{\gamma}{m}t})$ を時間 $t$ で積分する。初期条件は $y(0) = h$。

$y(t) = \int_0^t -\frac{mg}{\gamma} (1 - e^{-\frac{\gamma}{m}t'}) dt' + h = -\frac{mg}{\gamma} \left[ t' + \frac{m}{\gamma} e^{-\frac{\gamma}{m}t'} \right]_0^t + h = -\frac{mg}{\gamma} (t + \frac{m}{\gamma} e^{-\frac{\gamma}{m}t} - \frac{m}{\gamma}) + h = h - \frac{mgt}{\gamma} - \frac{m^2g}{\gamma^2} (e^{-\frac{\gamma}{m}t} - 1)$

(5) 慣性抵抗がある場合：

* $x$ 方向の運動方程式: $m \frac{dv_x}{dt} = -\gamma v_x^2$。初期条件は $v_x(0) = v_0$。

$\frac{dv_x}{v_x^2} = -\frac{\gamma}{m} dt$ より積分して $-\frac{1}{v_x} = -\frac{\gamma}{m}t + C$。初期条件より $C = -\frac{1}{v_0}$。

$\frac{1}{v_x} = \frac{\gamma}{m}t + \frac{1}{v_0} = \frac{\gamma v_0 t + m}{mv_0}$

$v_x(t) = \frac{mv_0}{\gamma v_0 t + m} = \frac{v_0}{1 + \frac{\gamma v_0}{m} t}$

* $y$ 方向の運動方程式: $m \frac{dv_y}{dt} = -mg - \gamma v_y^2$。初期条件は $v_y(0) = 0$。

$\frac{dv_y}{dt} = -g - \frac{\gamma}{m} v_y^2$。$\int \frac{dv_y}{g + \frac{\gamma}{m} v_y^2} = -\int dt$ を解く。

$v_y(t) = -\sqrt{\frac{mg}{\gamma}} \tanh \left( \sqrt{\frac{\gamma g}{m}}t \right)$

3. 最終的な答え

(1) 空気抵抗がない場合：

$v_x(t) = v_0$

$v_y(t) = -gt$

(2) 空気抵抗がない場合の位置：

$x(t) = v_0 t$

$y(t) = h - \frac{1}{2}gt^2$

(3) 粘性抵抗がある場合：

$v_x(t) = v_0 e^{-\frac{\gamma}{m}t}$

$v_y(t) = -\frac{mg}{\gamma} (1 - e^{-\frac{\gamma}{m}t})$

(4) 粘性抵抗がある場合の位置：

$x(t) = \frac{m v_0}{\gamma} (1 - e^{-\frac{\gamma}{m}t})$

$y(t) = h - \frac{mgt}{\gamma} - \frac{m^2g}{\gamma^2} (e^{-\frac{\gamma}{m}t} - 1)$

(5) 慣性抵抗がある場合：

$v_x(t) = \frac{v_0}{1 + \frac{\gamma v_0}{m} t}$

$v_y(t) = -\sqrt{\frac{mg}{\gamma}} \tanh \left( \sqrt{\frac{\gamma g}{m}}t \right)$